22: ニアバス子爵の愚行(1)※
開拓を始めてから3週間。防壁とボーガン制作を続けていたが、セロの街に送っていた騎士から連絡が入る
「報告します。セロの街でおこなっていた職人と移住者の募集ですが、芳しくありません」
「何かあったのか?」
「はい、ニアバス子爵が好条件で募集を掛けているためです」
同時期に開拓を始めれば、そうなるだろうな。
「それでその好条件とはどんな物だ?」
「はっ!税の5年間免除に、土地の取得自由と職の斡旋です」
「………馬鹿だな」
「は?馬鹿ですか?」
「ああ」
「どういうことでしょうか?」
俺に負けたく無いから、こんな無茶な条件にしたんだろうな
「いいか?まずは税の5年間免除だが、確かに王国から5年間免除はされているが住民の税ではなく領主、この場合は俺とニアバス子爵だな、に対しての物で、この期間に住民を集めて税収を安定する為の期間だ。開拓には金が掛かる、まずは開拓地の安全確保の為、柵や防壁を築く為に大量の人員が必要だ」
「確かに普通は数年単位での工事期間が必要になりますね。ハルト殿のスキルで簡単に作ってしまわれたので、失念しておりました」
「普通は職人を大量に入れて、住居の作成をしながら防壁を作らねばならない。材料の運搬もあるが、森の開拓だから周りの木を使える分資金に余裕があるな。ただ、職人や移住者の安全確保のため、区間を整理して防衛の為に、兵の巡回や周囲のモンスターを討伐しなければならない」
「そうですね」
「では土地の取得自由とはなんだ?」
「えっと……。移住者に土地を与える事で、移住を促すのでは無いのですか?」
ああ、そう思うのか
「では、ヘリオスがニアバス子爵の開拓を手伝ったとして…条件が良く見えるから我先に移住希望者が現れるだろう」
「そうですね」
「では、早い者勝ちの土地で、次々現れる移住者が自分の土地だと主張し始めて、収集が着くと思うか?」
「それは…つかないですね」
「それに、誰が土地の保証をしてくれるんだ?」
「それはニアバス子爵ではないですか?」
「あの平民嫌いで、貴族主義のニアバス子爵が、自ら開拓地に赴いて指揮を取っていると?」
「無いですね」
「だろ?そうなったら開拓地に拠点を作りたい商人が、袖の下を領主代行に渡せば認められるだろうな」
「確かに金の無い平民は不利になりますね」
「あとは武力を持つものだな。裏の仕事をする犯罪集団が、武力で占拠すればいいからな。しかも合法で行えるんだからタチが悪いだろうよ」
「それは…」
「何も知らない移住者は増えるが、土地なんて手に入らず金も無いからどうにもならない。土地を占拠してる奴から借りるしかないだろうな。そうなると開拓地で職の斡旋なんて書いてあるが税が無いんだ、安い賃金で使い潰さるだろうよ」
「だから馬鹿なのですね」
「勝手に増える土地のせいで、防壁の場所を決めるのも難しいだろうな。何せ移住者は増えるんだ、幾らでも土地は必要になる。警備もザルになるから禁制品だろうが自由に移動させられる。犯罪集団にとっては天国だからな、暗黒街の出来上がりだ」
「……どうにかならないのですか?」
「無理だな、ニアバス子爵が気づいた時には完全に占拠されてるから、開拓地ごと討伐隊で始末するしかない」
「住民が犠牲になります」
「やれる事は……傭兵ギルドに頼むしか無いな。傭兵ギルドなら犯罪集団だろうが手を出しずらいはずだ、開拓地に拠点を作って傭兵を常駐させれば、犯罪集団も無理は通せんだろ」
「分かりました、ハルト殿の意見を傭兵ギルドに伝えます」
「まて、俺が書状を書こう。傭兵ギルドと辺境伯から、王宮に連絡を取って貰う」
「お願いします」
1ヶ月後
職人と移住者を受け入れて、開拓地を発展させていると、ニアバス子爵の開拓地の情報が入って来た
「ここから、畑を作って貰いたい」
「わかりました」
「よし、次は家畜小屋の予定地だな」
「既に職人が建設を始めています」
「そうか、それなら住居の進捗状況を確認しに行くか…」
「ご主人様!大変です!」
「どうしたサイカ?」
「ニアバス子爵の開拓地で、暴動が発生してかなりの死傷者が、出たようです」
「そちらになったか」
「辺境伯から使者が来ています」
「分かった会おう」
「お待たせした」
「いえ、お久しぶりです」
「ええ、お久しぶりです。それで辺境伯様から何か連絡事項でもあるのですか?」
「はい、ニアバス子爵の開拓地で暴動が起きまして、住民が逃げ出したそうなのですが、どうやらこちら側に来ているようでして、ハルト殿には捜索と保護をお願いしたいのです」
「住民が森を抜けてこちらに向かっているのですか……ソフィア!すぐに捜索隊を組織して住民を保護しろ」
「はっ!」
「迅速な対応ありがとう御座います」
「いえ、予想はしていましたので、ニアバス側の木は伐採を始めてますから、早い段階で見つける事が出来るでしょう」
「流石の慧眼、恐れ入ります」
「それで、暴動の詳しい情報はあるのですか?」
「これは確定した情報では無いのですが、どうやら赤衣衆が開拓地で犯罪集団とやり合ったらしいのです」
「赤衣衆ですか」
確かとんでもなく強い一族がいると聞いた事がある
「ギルドが介入する前に、どなたかが、赤衣衆を使ったようなのです」
ニアバス子爵しか居ないだろうな
「住民の暴動として処理されていますが、実際は虐殺事件ですので調査は入ると思います」
「はあ……。それで生き残りの住民は大事な証言者だから、護ってくれと言う訳ですか」
「ご理解が早くて助かります」
「分かりました、防衛の準備はしておきます」
「では、私は辺境伯様にお伝えしますので、これで失礼します」
「お気を付けてお帰り下さい」
「ヘリオス!」
「はっ!何でしょうか?」
「襲撃があるかもしれないから、防衛の準備をしろ」
「襲撃ですか?」
「ああ、ニアバス開拓地の住民を狙って、赤衣衆が襲ってくる可能性がある」
「あ、赤衣衆ですか」
ヘリオスの顔色が悪い
「簡単には侵入出来ないだろうが、見回りは人数を増やすぞ。発見したら防御を優先して俺に伝えるんだ」
「わかりました伝達しておきます」




