19: 王都へ※
オークの大氾濫後は、荒れ果てた戦場の整備や、オーク肉の解体と出荷作業に追われ軍は大忙しだった
傭兵ギルドのメンバーはオークが減った事で仕事が減り、他の街への護衛依頼を受けて旅立っていった
貴族達も自分の領地へと帰還するため、挨拶へと向かった
「子爵殿、お世話になりました」
「これはハルト殿、私たちは領地へと帰還致します」
「お気を付けてお帰りください」
「ありがとうございます。是非我が領地へお越しください」
「ええ、いずれまた」
「では失礼します」
別れの挨拶が終わると騎士が近寄ってきた
「ハルト殿、実は王宮へ出頭命令が来ています」
「王宮からですか?」
「はい…、アーゼンハルト卿の件についてです」
「ああ…アーゼンハルト卿ですか」
完全に忘れてたよ
「私も一緒に行くから安心してくれたまえ。今回参加した貴族も連名にて陳情書を書いてくれているから問題は無いはずだ」
領主様も一緒に来てくれるらしい
「今領地を離れても大丈夫なのですか?」
「心配ない、いい機会だから息子に任せるさ」
忙しい時に任されるとは大変そうだ
「出発は明日の朝になる」
「準備しておきます」
領主の館からギルドへ戻って来ると、ギルドマスターに呼び出された
「おおハルト、王宮から呼び出しだって?」
「ええ、アーゼンハルト卿についてらしいですが、処罰を受けるんでしょうか?」
「それは無いだろう、オークロード討伐の英雄で、貴族や傭兵ギルドがバックに着いてるだぞ。処罰なんてしてみろ王宮が非難されるわ」
「そうでしょうか?」
「ああ、アーゼンハルト卿の事はハルトを呼び出す口実だろうよ。大氾濫なんて国難が被害をほとんど出さずに終結したんだ英雄として祭り上げたいんだろうよ」
「勘弁して欲しいんですが…」
「無理だな」
「叙勲は間違いないだろ、それどころか男爵ぐらいは貰えるんじゃないか?」
「貴族なんて柄じゃないですよ」
「ギルドとしては傭兵を続けて貰った方が良いがな」
「続けますよ」
「そうか、だったら安心だな」
ギルドマスターの部屋を後にして宿泊施設へと戻る
「「おかえりなさい」」
「ただいま、明日から王都に向かう事になった」
「王都ですか?」
「ああ、呼び出しを受けてな」
「王都で美味しい物が食べられますね〜」
「お肉…」
「大丈夫なんでしょうか?」
「心配はないだろ。準備をしておいてくれ」
翌朝門へ向かうと馬車の前に、領主と銀翼の鷲が集まっていた
「やあ、ハルト君。王都までの護衛を引き受けからよろしくね」
「ベスターさんが護衛をしてくれるなら安心ですね」
「出発するから馬車に乗ってくれたまえ」
ハルトは領主と一緒の馬車に乗る
「この辺は安全になりましたね」
「そうだね、オークの大氾濫はどうなる事かと思ったけど結果としては安全になったよ」
「傭兵ギルドは仕事が減りましたけどね」
「それは済まないとは思うが公国への護衛依頼は増えるだろうね」
「今回森を伐採した事で公国への道を開拓すると聞きました」
「うむ、いい機会だからね。元々セロの街は王国の中でも南西に位置して公国と帝国領に近いんだよ。今まではゴブリンの森を開拓せずに残して置いたがオークに荒らされたからね、この際公国への道を作ってしまうよ」
「ゴブリンは肥料になってましたが大丈夫なんですか?」
「ゴブリンなんて大陸にいくらでも居るからね、公国との流通が開始されれば中継地点としてセロの街は潤うよ」
「儲かりそうですね」
「正直かなり儲かるだろうね。セロを拠点にする商人も増えるだろうし、オークの領域を開拓して村を作るなんて案もあるそうだよ?」
「開拓村ですか」
「うん、あそこを開拓出来れば王都までの日数が10日は短縮出来るからね」
「あんな森の中に作れるんですか?」
「どうだろう?オークの進撃でセロの街までは木がなぎ倒されてるようだし出来なくは無いだろうけど時間はかかるだろうね」
そんな話をしながら王都へ向かう
セロを出てから6日後、城塞都市バルムへ到着した
「ようやくベットで寝れるね」
「そうですね、野営が続いてましたから宿に泊まれるのは嬉しいです」
「ははっ、私はこの地の領主と話があるから休め無いけどね…」
「ご苦労さまです」
「ハルト殿は宿に泊まって疲れを癒すといい」
「ありがとうございます。お言葉に甘えます」
「では出発は3日後だからバルムを楽しむといいよ」
そう言って疲れた顔で領主は去っていった
「団長、宿に荷物を置きに行きましょう」
「ああ、そうしよう」
宿に入り部屋で寛いでいると、サーニャが腹を鳴らす
「お腹すいた…」
「もうそんな時間か、宿の食堂で食べるか?」
「オーク肉は嫌…」
確かに食い飽きたな
「ご主人様、街の食堂で牛肉が食べられる所があるらしいですよ」
「牛肉!」
「値段は高いようですが米と言う穀物に、牛肉を煮たものをかけて食べるらしいです」
「な、なんだって!」
「きゃ?!」
「行くぞ!!」
米があるとは!しかも牛丼だろそれ
食堂に向かうと、確かに牛丼のような食べ物が出できた
「牛肉…美味い…」
「美味しいですね」
「美味です〜」
「どうしました団長?」
違う、これは牛丼じゃない
「いや、なかなかだな」
米と言ってもタイ米のような細長い米に、牛肉を塩と野菜のエキスかな?で味付けした牛丼もどきだ
醤油がないから出来ないんだろうが別物だ
「どうだいウチの牛丼は?」
店員が聞いてくるが、名前は牛丼なんだな…
「美味しいです」
「美味…」
「これは誰が考えたんですか?」
「これは昔に勇者が考えたんだよ」
勇者だって?!
「勇者なんていたんですか?」
「ああ、勇者は料理の天才でね。かなりの数の料理を生み出したんだよ」
チートだ、知識チートしたんだな
「それでその勇者は何か功績を残したんですか?」
「ああ、帝国の料理番として皇帝に仕えたそうだよ」
ん?料理番?勇者なのに?
「強かったんじゃないんですか?」
「いや、戦闘はからっきしだったみたいだよ」
「え?勇者なんですよね?」
「ああ、勇者って名前だね」
名前なの?呼び出されて俺TUEEEEじゃなくて?
「俺は勇者だ!って色んな所で名乗ってたらしいよ、それで有名になって皇帝の耳にまで届いたらしいからね」
それって痛い奴ですやん。俺みたく異世界に来たから自分が勇者だと勘違いしてた奴ですやん
この世界では、勇者召喚とか無いからね
俺も最初は気になって調べたけど、魔王とか居ないからね
厄災はいるけど…
「レシピは公開していたんだけど、勇者が亡くなったあとに、育ててた素材がモンスターの襲撃で、幾つか失われたんだよ」
だから醤油が無いのかな?
「そうだったんですね、詳しくありがとうございました」
「あいよ、お代わりはいるかい?」
「食べる…」
「私もいいですか?」
こっちを見なくてもいいんだよ?
自由に食べればいいのさ
「好きなだけ食べなさい」
報酬で大量にお金を貰ったから、いくらでもどうぞ?
「美味しかったですね」
「久しぶりにオーク肉から解放された…」
うん、オーク肉が余りすぎて、セロの街では何処に行ってもオークだらけだったね
「小遣いを渡すから、出発まで好きに過ごすといい」
「「ありがとうございます!」」
3日を過ごし王都へと進んだが、道中は問題もなく到着することが出来た




