15: オーク大氾濫(1)※
あれから半月、遂にオークの集団が街の近くまで現れたと報告があった
「団長、遂にきましたね」
「ああ、準備は万端とは言い難いが何とか防衛しなくてはな」
城壁に皆が集まっている
「全員傾聴!!」
「既に聞いていると思うがオークの集団が街に向かっている。数はおよそ4000だ。先遣隊として対処する」
思ったほどではないので、皆冷静だ
「ボーガンと弓の部隊は各指揮官の指示に従うように! 他の物は城壁に取り付いたオークを始末する! 落ち着いて掛かれば問題ない! こちらの方が数は多い!」
皆まだまだ余裕がある
「オークが来るまでは各自休憩を取るように!」
「おう坊主、お前らも気をつけろよ」
「ヴェルナーさんも気をつけて下さい」
「まあ、坊主の作ったボーガンで粗方倒せるだろ」
「4000匹くらいなら問題はないですね。本隊がいつ来るかですが、充分な量の矢は用意してありす」
「そういや、決死隊には入るんか?」
「いえ、矢が足りなくなった時の為に後方に控えているように指示されてます」
「そうか、まあ妥当なところだな」
「イザとなったら出ますけどね」
「そんじゃ行くわ」
オーク戦の前にスキルの確認をしておこう
決して忘れていた訳では無い
ホントだよ?
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ハルト22才
スキル
剣術LV4
盾術LV4
身体強化LV3
部隊指揮LV3
ユニークスキル
造形
物の形を自由に変える事が出来る
重さを司る物 New
全ての物質の重さを自由に変える事が出来る
自身に触れている物の重さを感じなくなる
厄災を退けし者
厄災と対峙した時全てのスキル効果が2倍になる
ソフィア 24才
スキル
剣術LV4
槍術LV1
盾術LV4
弓術LV3
馬術LV2
身体能力LV3
部隊指揮LV2
ユニークスキル
ヴァルキリー New
戦乙女の名を冠する
仕える主に敵対する者に対して能力低下を与える
ミルク 19才
スキル
斧槍術LV4
怪力LV4
身体能力LV3
料理LV4
サーニャ 17才
スキル
短剣術LV4
剣術LV3
探索術LV4
身体能力LV4
隠密LV4
隠しスキル
人狼の祖
人型でありながら狼の素早さと嗅覚を持つ
サイカ 20才
スキル
爪術LV3
身体能力LV3
隠密LV4
隠しスキル
愛を知るもの New
愛を知り自らも愛する事を知った
仲間と認めた者は成長速度が著しく上がる
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「来たぞ!」
「総員準備!」
オークの襲来により、
慌ただしく準備が始まる
「団長、行きましょう」
「よし、監視塔に移動するぞ」
東から現れたオークの軍団を迎え撃つ
「偵察の結果通り4000匹程だな」
「敵までの距離1000」
「よし!射撃準備!」
「敵までの距離300!」
「総員構え!」
「距離200」
「距離150!」
「放てー!」
一斉に放たれた矢は、雨の如く降り注ぐ
「「ブモォォォ?!」」
「効いてるぞ!」
「第2射、構え!」
「放てー!」
矢によって数を減らすオーク達
「このまま撃ち続けろ!」
「城壁に取り付かれた!」
「問題ない」
「市民はそのままで軍は登ってくるやつに対処しろ」
開始から1時間オークの数も減りつつある
「どうにか守れているな」
「団長、北門から軍が出陣するようです」
「なに?随分とは早いな」
「予想よりボーガンでの掃討が、上手くいってるようです」
「そうか」
「バリスタで、上位種を狙い撃ちにしているのも効果的ですね。オーク達の統率が取れなくなってます」
監視塔から確認するが、確かに統率が取れていない
バラバラに動くオークをボーガンが狙い撃ちにしているため、浮き足立っている
「あ、軍が接敵しました」
北からオークに迫った軍は包囲しつつ殲滅している
「東門からも出て挟み込むつもりですね」
傭兵部隊が出撃準備を始めている
「ここまで来たら、時間の問題だな」
「そうですね、理想的な展開です」
「お、傭兵部隊が出るぞ」
「「ウォォォ!!」」
「「ブヒーーー?!」」
「掛かれーーー!」
「殲滅しろ!」
出撃から約40分でオークは殲滅された
「終わりましたね」
「少し時間が掛かっていたな」
「まあ、無理をすることもないですからね。怪我人を出さないように時間を掛けてたようです」
「そうみたいだな」
「では戻りましょう」
監視塔を降りると、皆今回の勝利を喜んでいた
「ハルト殿!会議室に来るようにと指示が出ています!」
伝令兵から指示を受ける
「わかりました向かいます」
「お願いします」
「ソフィアは一緒に来てくれ。他の皆は手伝いに向かってくれ」
「「了解」」
「おお!ハルト殿!」
「素晴らしい戦果でしたぞ!」
「しかり、しかり」
「これならオークの本隊も、恐るるに足りませんな」
皆余裕の表情だ
「ありがとうございます。しかし、未だ敵の全容は見えていません。今回の勝利は皆さんの素晴らしい采配によるものですが、今一度兵や市民の気を引き締める必要があります」
「そ、そうですな」
「浮かれていては足元をすくわれかねません」
「しかり、我らが浮かれていてはいかけませんな」
褒めながらも引き締める
「それでは会議を始めたいと思います。ハルト殿のお陰で被害なくオークを殲滅出来ました。オーク本隊はセロの街から約250キロの地点にいます」
「ふむおよそ7日ほどか」
「随分と離れているな」
「現在確認中でありますが今回の襲撃には上位種が少ないようです」
「どういう事だ?」
「はい、あくまで予想ですが、増えすぎた数を減らすためにこちらに当てたのではと思われます」
「数減らしだと?」
「本隊の規模からして上位種だけで数千はいるはずです。今回確認された上位種は数十匹程度でした」
「オークの首魁としては減っても問題なかったと言う訳か…」
「とは言え今回の戦いでボーガンの有用性が分かりましたから防衛は難しく無いと思います」
「うむ、上位種に対してはバリスタで数を減らせば大丈夫だろう」
「そうですな、バリスタの射程なら後ろに隠れていても関係ありませんからな」
「7日後であれば援軍も間に合いましょう」
「では新たな情報があるまで解散としましょう」
会議室が終わり、部屋を出ると領主とギルドマスターが待っていた
「ハルト少しいいか?」
「わかりました」
執務室へと案内される
「前置きは無しにするが、オークの本隊をどう思う?」
「そうですね…、動きが遅いのが気になります」
「ふむ、それで?」
「余裕があるのかと思いましたがそれにしては変です。4000ものオークを捨て駒に出来るということは、統率が取れているというより恐怖で支配しているのかと」
「どういう事ですかな?」
「オークの最上位種…、つまりオークロードが居ると?」
「わかりません、ですがロードに近い存在は居るのではないかと考えられます」
「まさか?!」
「いや、ハルトの言う通りだろう」
「そんな馬鹿な、なりかけはハルト殿達が討伐したはず」
「はい、確かに討伐しましたが、あの1匹だけがロードに成れるとは決まっていないはずです」
「それはそうですが…」
「うむ、ロードが居ると思って対策を立てるべきだろうな」
「それがいいと思います」
「しかし、ロード相手となると、下手な戦力では無駄死にさせる事になるな」
重い空気がこの場を支配する
「あの、団長はなりかけを倒されたのですよね?」
「ああ」
「対策は立てられないのですか?」
「う〜ん、なりかけでも恐ろしく硬かった。通常の武器では傷がつかないだろう」
「どうにかならないのかね?」
領主が縋るように見てくるが、無理なものは無理だ
「硬いか……」
ギルドマスターが何やら考えている
「あれは使えないか?」
「あれとは?」
「クズ石だ」
「??」
「しかし、クズ石は使えんでしょう」
「いや、ハルトなら使えるはずだ」
「すみません、クズ石とは?」
「知らんのか?」
「はい…」
「クズ石とは鉱山で採掘中に出る真っ黒な石でな、異常に硬いうえ重いんだよ」
「そんな石があるのですか?」
「ああ、暗い鉱山で真っ黒だから見ずらく、躓いて怪我はするは例え運び出しても硬すぎて加工すら出来ん。結局鉱山の中に放置するしかない、使い物にならない鉱石。そのためクズ石と呼ばれとる」
「つまり俺ならそのクズ石でも、加工して使えるかもしれないと言う訳ですか」
「ああ、硬度はミスリル以上だしオークロードの皮膚でも切り裂ける可能性がある」
「分かりました試して見ましょう」
「だったらギルドに行こう。何かに使えるかもしれんと少量だが持ち込んである」
ギルドに移動してクズ石とやらを見てみる
「ほんとに真っ黒ですね」
「ああ、持ってみろ」
持ち上げてみるがスキルが発動して空気のように軽い
「ほう…、流石だなそれを持てるとは」
「量が少ないので剣にコーティングするくらいしかできませんね。どうします?」
「お前しか使えんのだから好きにしたらいい」
「わかりましたやってみます」
『造形』
クズ石を、手持ちのバスターソードにコーティングする
合わせて重量も最大にしてみるが、やはり重さは感じない
「出来ました」
「ほう、それがスキルの効果か。よし、そこのインゴットを切ってみろ」
「お待ち下さい。まずは自分が切ってみます」
「そうだな比較は必要だ」
ソフィアが剣を振り下ろす
「はあっ!」
キレイな太刀筋で切ろうとするが、傷をつけただけに終わる
「やはり無理ですね」
「よしハルト試してみろ」
「分かりました。最初は軽くいってみます」
軽く振り下ろしてみる
『サクッ』
「「はあ?」」
軽く振り下しただけで、豆腐を切るかのごとく、ほとんど抵抗なく切れてしまった
「おいおい、なんて切れ味だよ」
「凄いです!」
確かに凄まじい
「こりゃ切り札になるな」
「俺にしか使えませんけどね」
「やはりそうか」
「軽くしても無理か?」
「うーん、ミスリルコーティングと同じくらいだと思いますよ」
「それでも充分だと思うがな。使えなかったクズ石が利用出来るんだからよ」
「すみませんが信用出来る人にしか使わせる訳にはいきません」
「仕方ないか…、だが、ロードが出たら頼みたい」
「分かりました」
「すまんな危険な役目を任せて」
「いえ自分にしか出来ないことですから」
「報酬は弾む」
はいようやくのクズ石の登場です
この設定を思いついて小説を書き始めました
※以下はネタバレの可能性があります
この異世界では鉄が主流です
ミスリルは超希少価値がついており埋蔵量は極めて少ない設定です
加工も非常に難しく世界でも技術のある鍛冶師は10人も居ません
ミスリル製の武具は各国の国宝に指定されており、国家の危機が訪れた場合に騎士団長又はそれに準ずる実力者対して国家元首の許可により使用が認められる
クズ石の設定はいちおうアダマンタイトです
加工が出来ず放置されていた鉱石で加工出来るのはハルトのみ
重量軽減が無いと武器にしろ防具にしろ使用出来ません




