ハルトの過去
天界と呼ばれる場所で、ハルトを送り込んだ2人は話していた
『ねえ、これ不味くない?』
『オークロードですか…』
『助けられないよね?』
『地上への干渉は禁止されています』
『だよね』
『ですが、遥斗さんは…』
これは遥斗が日本に居た頃の話
「ふ〜、今日も疲れたな」
神谷 遥斗は仕事から帰り、部屋でテレビを見ていた
遥斗は学生時代の成績は普通
運動神経は良かったが、部活には入っていなかった
人付き合いは苦手で。両親との仲はあまり良くなく、2つ下の妹、春菜だけは慕ってくれていた
高校生時代に、妹に言い寄る不良と喧嘩した事で停学になり。大学の推薦が駄目になって、派遣社員として働いていた
親は専門学校でもいいから学校に行けと言ったが。遥斗は断り、親元を離れ会社の寮に入っていた
妹は気にしていたが、派遣社員は給料が良かったので遥斗は満足していた
人付き合いは苦手なので、工場のライン作業で稼いだお金を、妹の大学入学の費用や好きなことをさせるため、ほとんどの給料を貯金していたぐらいだ
だが、しばらく連絡を取っていなかった父親から電話が入る
『遥斗』
「なんだよ?」
『春菜が…春菜が倒れた』
「は?」
『どうやら昨日。飛び出した子供を助けた時に、自転車と接触したらしい…』
「そ、それで!?」
『帰ってきてから頭痛がすると言ってたんだが…病院で検査したら、脳内出血をしていたらしい』
「助かるのかよ!?」
『難しいようだ。命は助かったが、今のところ目覚める様子はない』
「そんな…」
『帰ってこい遥斗』
「わ、分かった」
電話を切った後、呆然としていたが、急いで会社に連絡を取ろうする
その時、見たこともない番号から電話がかかってきた
もしかしたら病院からかもしれないと思い電話をとるが、突然見知らぬ場所へと移動させられる
「貴方を呼んだのは…」
「なんだあんた?ここは何処だ?」
「ここは天界の…」
「どうでもいい!妹が大変なんだ!」
「知っています」
「なんだと?」
なぜ見も知らないやつが、妹のことを知っている
それに、なぜ場所が変わっているんだ?
「わたくしが貴方を呼んだのは、ある世界を救ってほしいからです」
「ふざけるな!今は冗談を聞いている余裕はない!」
「妹さんが助かると言ってもですか?」
「どういうことだ?」
「わたくしは女神クローディア。貴方の妹さんを助けることができます」
「だから、どういうことだ!」
「貴方が異世界に行ってくれたら、妹さんを助けましょう」
「…それは世界を救えということか?」
「もちろん救って欲しいですが、貴方が了承してくれるなら妹さんは助けます」
「行くだけでいいのか?」
「はい、結果に関わらずです」
「…間違いはないんだな?」
「はい」
遥斗は考える
本当のことなのか?
騙されているんじゃないのか?
いきなり女神だと、言われても信じられるはずがない
だが、遥斗には選択肢はない
この場所に来た時点で、帰る方法はないのだ
クローディアに騙す気は無いが、遥斗は知らずに追い詰められていた
「…ひとつ頼みがある」
「何でしょう?」
「もし本当に助かるというのなら、両親と妹の記憶を消せないか?」
「何故です?」
「妹を助けられるというのなら、異世界でも何でも行こう」
「ありがとうございます」
「だが、残された両親と妹は、少なからず心配するだろう。だから記憶を消してくれ、俺も含めてな」
「貴方もですか?」
「異世界なんだろう?心残りがあって、世界を救うなんてできるのか」
「確かにその通りですね」
遥斗にとっては、妹の命は一番大事だ
小さい頃から可愛いがり、人付き合いの苦手な遥斗によく懐いてくれた
妹を守るために不良と喧嘩をした時も、大学の推薦が取り消されるかもしれないと分かっていたが、譲れなかった
両親は酷く落胆していたが、そんなことはどうでもいいのだ
「分かりました」
「感謝します」
落ち着いた遥斗は。妹を、春菜を助けてくれるという女神に敬意を払う
「これから行ってもらう世界ですが…」
女神より異世界の話を聞き、大変そうだと思ったが、たとえ自分が死んだとしても妹は助かるのだ
「分かりました」
「お願いします。あなたの力が必要なのです」
「分かりました。頑張ります」
「それでは、転送します」
ここから遥斗の旅は始まったが。まさか、何かの影響で異世界へと渡った使命も力も失うとは思っていなかった
『遥斗さんは覚悟が違いますから』
『だよね。でも、記憶が無いんでしょ?』
『…そうでしたね』
『どうするの?』
『遥斗さんに任せましょう』
女神と…の監視は続く…
女神のくだけた口調は素です
ハルトと話している時は、威厳を出すため、硬い口調になってます