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心霊弁護士 上尾誠司  作者: ニナコ
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湯沢 資産家別邸②

また怪談とは関係なくなっちゃいました笑

 湯沢の街中へ戻り2人は最初に見つけた洋食屋で早めの昼食を取る事にした。

 店の中に入り席へつくとメニューを手に取る。さっさと注文を決めた上尾はお冷を一口飲むと顎に手を当てて悩んでいる宮子を見た。

「みやちゃん悩んでいるね。」

「先生は決まりましたか。」

「僕はオムライスにしようかなって思ってる。」

「すいません、直ぐに決めますから。」

「気にしないでゆっくり選んでよ。どうせなら食べたいもの全部頼んじゃえばいいよ。みやちゃん大食いだし食べられるでしょ。」

上尾はメニューから顔を離し上尾を見る宮子に言った。

「それはちょっと、きついですよ。」

「お金なら僕が払うから大丈夫だよ。」

「いや、そうじゃなくて」

「もしかして、太るの嫌とか考えてたりしているのかな。」

上尾は「分かった」と言わんばかりに宮子に言った。宮子は図星をつかれて熱くなる顔を隠すようにメニューを顔の位置に上げる。

「僕はみやちゃんが太っても気にしないよ。それに痩せてるより線が太い方が健康的でいいと思うし可愛いよ。」

「私は気にするんです。」

「確かに買ったばかりのスカートきつくて履けなくなったらショックだね。」

「え、」

宮子は誰にも話したことの無い筈の事を上尾が何もなしに言い当てた事に驚く。

「先生、どうして私がスカート履けなかった事知ってるんですか。」

宮子は上尾に尋ねた。

「もしかして、当たってたかい。」

上尾は真顔になっていたが、直ぐに「みやちゃんは可愛いなぁ」と笑った。

「女の子が体型気にする要因って、恋愛とおしゃれって相場が決まっているからね。」

「かまかけたんですか、」

「反応が面白そうだったからね。着れなくなったスカートは残念だけど大丈夫だよ。僕がそんなセール品よりもいいスカート買ってあげるからね。」

上尾が満足そうに宮子に言うと、宮子はニコリと微笑むとお返しと言わんばかりに上尾のスネを蹴った。

 そして何事もなかったのように宮子はちょうど注文を聞きに来た女将さんにハンバーグと痛さに悶える上尾の代わりにオムライスを頼んでお冷を一気に飲み干した。

 昼食を終えると宮子はカーナビを頼りに山田の手配したホテルへと向かった。

 ホテルはスキー場の傍にあるリゾートホテルで、宮子はロビーに入り近くにあった館内案内を手に取る。

 適当に見ていると温泉施設のページを見つける。「いいな」と考えているとチェックインを済ませた上尾が戻って来た。

「行こうか。」

「はい。」

宮子は荷物を持つと奥のエレベーターに乗った。

 最上階に着くと上尾はフロントで受け取ったカードキーをドアにかざして鍵を開けて中に入る。広いリビングルームには上等なテーブルと椅子が置かれ、テレビの前にはソファがドカリとあった。窓からは緑の芝生のスキー場が一望出来た。

「ここスィートルームってやつですか。」

「どうなんだろうね、山田が年間通して借りてる部屋だから安い部屋じゃ無い事は確かだよ。」

宮子は荷物を置くと風呂場に寝室、トイレまで隅々まで見て回る。小説のネタになりそうなものはスマホで写真を撮り、思いついた事はメモに残した。

「そんなに珍しいかい。」

「こんないい部屋一生に泊まれるか泊まれないかじゃないですか。」

「倹約家のみやちゃんからしたら、ホテルにお金をかけるなんて考えないだろうからね。」

上尾はテレビの前のソファに腰掛けるとペットボトルのキャップを開ける。

「先生、私これから温泉行ってきてもいいですか。」

「構わないよ、行ってらっしゃい。僕は部屋のシャワー浴びて時間まで寝てるつもりだから、鍵持って行って。」

「分かりました、行ってきますね。」

宮子はバスルームからタオルを持つと部屋を出た。

 久しぶりの温泉と言う事で休憩を摂りながら宮子は日頃の疲れを出す様に温泉に浸かったりサウナに入ったりする。

 1時間半、十分満喫した宮子が部屋に戻ると上尾はリビングルーム奥の寝室で睡眠を取っていた。時刻は夕方4時になった所であり、宮子は仮眠を取る前に書きかけの小説を書く事にした。荷物の中からパソコンを取り出し、テーブルに置くとインスタントコーヒーを淹れる。執筆の準備が整うと宮子は深呼吸をしてキーボードに自分の思い描く言葉を打ち込み始めた。

 深夜0時になり、宮子は上尾を助手席に乗せて別荘へ向かっていた。街を抜けると辺りは一層暗くハイビームを使ってもまったく先が見えない。暗闇の道はこれから起こる事を暗示させるようで無意識に宮子の肩には力が入る。

「みやちゃん今どんな小説書いてるの。」

張り詰めた宮子とは逆にリラックスした上尾が何気なしに尋ねる。

「小説ですか?」

「ホテルにいる時書いてたじゃない、」

「見てたんですか。」

宮子は上尾に見られていた事を知ると体中が熱くなるのを感じた。

「恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。仕事が終わったら見せてよ。」

「未完成で人様に見せられる様なものじゃないんで無理です。」

「じゃあ、ジャンルは何?」

「ジャンルですか?」

「ジャンルだったらネタバレにはならないからいいでしょ。」

「まぁ、ジャンルで言ったらホラーですね。」

宮子は渋々答える。

「それってゾンビに喰われたり、幽霊に襲われたりするやつかい。」

「そういうのじゃないですけど、遠からずって所ですね。」

「みやちゃんがネットに上げている小説も高校を舞台にしたホラーものだったよね。」

上尾は思い出したように宮子に言った。

「読んだんですか。」

宮子は思わず声を上げた。

「すごく面白かったよ。特に最後の朝焼けの中で先生と主人公の女子高生がくっつくところ僕、大好きだな。」

「あんな駄作読まれるなんて。」

「みやちゃん、小説出来上がったら真っ先に僕に読ませてね。」

「考えておきます。」

宮子は後で投稿サイトの小説を消す事を心に決めて見えてきた雑木林の道に入る為、ウィンカーを右に出した。


次回本当に怪談になっていきます。

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