戦士ハールの初めての仲間
ギルド協会はそこそこの広さを有している建物である。一階は主に冒険者たちが、待ち合わせとして使えるように、イスとテーブルが並べられ酒や料理の提供もしている。もちろん、クエストを受けない時でも利用できるので、普通に食事をするだけの者もいる。
対して二階は総合受付となっており、クエストの受注や発注、ギルドメンバーの登録申請やメンバー募集の求人が見れたりと、事務的な作業を依頼したい場合はここにお世話になる。3階は限られた人しか利用できないVIPルームとなっているようだが、もちろん関係者以外立ち入り禁止のロープの向こうには行ったことがない。
そして今日おれは、待望のギルドメンバーを迎えるべく待ち合わせの一階で一人、一時間前からスタンバっていた。定刻まであと10分……どうしよう、ドキドキしてきた。魔王を討伐した戦士だというのに、女の子一人を待つ時間は最終決戦とは全く違う緊張だ。まぁ、旅の道中で出会う女の子は皆レリットに注目がいっていたので、おれが女の子と話すことなんてほとんどなかったから無理もないか。それでも、今はギルドの長だ。醜態を晒すまいと自分を奮い立たせる。
そしてついに運命の時が来た。
「ハールさんですよね?お待たせしました」
うしろから声をかけられたので振り向くとそこには……美少女がいた。短い銀髪で肌は透き通るように白く、目はパッチリしており、どちらかと言えばきれい系な感じだ。装備は一般的な女性剣士の標準装備。動きやすさ重視の軽量防具と、取り回しのしやすい剣で軽快に動いてかく乱させ、隙を見つけて攻撃するタイプだろう。
「あれ?聞こえてますかー?」
「あ、ごめん、ごめん。応募してくれた子だよね?」
やばい。やばい。かわいすぎて見とれてしまった。これは気合を入れて会話しないとな。
「はい!初めまして!私、ピルマっていいます。」
「ピルマちゃんだね!おれはハール。ささ、そっちに座ってよ。」
「はい。ありがとうございます」
ピルマちゃんかー。声もかわいいし、礼儀正しいし、もうこの時点でかなりポイント高いんだけど!あぁ、神様、この巡り合わせに感謝します。よし!かっこいいところを見せてかないとな!
「応募してくれてありがとう。せっかくだから何か注文しようか。何がいい?奢るからさ」
「いいんですか?ありがとうございます!じゃあ、これにします」
「じゃあ、おれはこれと……ヴィノーグを二つください」
おれたちは、メインとなる料理とヴィノーグを頼んだ。ヴィノーグとは潰したぶどうに少量のハーブと炭酸を加えたもので、食事のときに飲むと口の中がさっぱりするので一緒に頼むのが定番である。
「二つ?ハールさん、二つも飲むんですか?」
「一個はピルマちゃんのだよ」
「そうだったんですね!ありがとうございます。ハールさん優しいですね」
「そんなことないよ。普通だよ普通」
よし!ちょっとはいいところを見せられたかな。それにしてもピルマちゃん、ほんとに礼儀正しくて、優しくていい子なんですけど!
それから、料理が運ばれてきて二人で食事をしながら雑談を交わしていく。もうこの時点で、一緒にパーティーとしてやっていく事は、ほとんど確定していた。戦闘経験は浅いとの事だったが、そこはおれのスキルで底上げすればある程度はカバー出来るし、後ろから指示を出せば素直な性格の彼女のことだ、的確に動いてくれるだろう。受けるクエストも彼女に合わせて無理のない範囲でやっていこう。
あ、そういえば一つ聞き忘れたことがあった。
「ちなみにピルマちゃんは、どうしておれのギルドに入ろうと思ったの?」
「え?えーと……なんとなく?ハールさんがいいかなーって思って……」
しまった、質問をミスったか!?めちゃくちゃ困ってらっしゃる。すぐにリカバリーしないと!
「答えにくい質問しちゃってごめんね。とりあえずピルマちゃんなら全然ウェルカムだから、これからよろしくね!」
「はい!ハールさん。私、頑張ります!」
返答に多少の心残りはあるものの、せっかく声をかけてくれたんだ。これからは仲間として一緒に冒険して、おれに好意をもってもらえる様にがんばらないとな!さぁ、次はクエストをこなすぞ!
ハールはこれから始まる美少女剣士ピルマとの冒険に胸を躍らせていた。
こんにちは。ぱたたです。
ようやく一人目のヒロインを登場させる事が出来ました。
新しい登場人物が出ると、ストーリーが進んだ気がしますね。
次は初めてクエストの話を書きますので、次回もお付き合いしていただければ幸いです。