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勇者パーティーの戦士だってハーレムギルドを築きたい!  作者: ぱたた
別れと出会いと別れ
4/16

戦士ハールの勘違い

 王都に戻ってから魔王討伐報告を済ませるとすぐに、勇者一行凱旋パレードが行わることになった。数々の偉業を成し遂げた勇者たちを盛大に祝おうと、人々は集まりあっという間にお祭り騒ぎになる。偉業を酒の肴に昼間から酔いつぶれる者、勇者ごっこと称して魔物退治の真似をする子供たち、フェアとウィダにお近づきになろうとする中流冒険者など、皆思い思いに祝い事を楽しんでいた。

 


 その中でもケタ違いに人気を集めているのはレリットである。登場するやいなや人だかりが出来、あっという間に回りからは見えなくなる。そしてその大半はやはりと言うか女性たちであった。年端のいかぬ少女からお年を召したマダムまで、多種多様な女性たちから声をかけられている。

 


 しかし当の本人はそれに慌てることもなく、笑顔で手を振り対応している。あぁ、あたり前すぎてあいつからすればいつもの光景なのだろう。旅路の中で訪れた村や町でも同じ様な光景を目の当たりしてきたから、おれも特段驚くことはない。いつもの何十倍の人数に取り囲まれていても、レリットからすれば些細な問題だ。



 かたやおれといえば、

「よう、ハール!お前も頑張ったじゃないか!」

と飲み屋のおっさんに肩を軽くポンと叩かれたり、


「ハール!お前強かったんだな!ちょっと見直してやるよ!」

と小生意気な小僧に少々煽りテイストが強めの言葉をかけられたり、


「ハールさん!勇者様が活躍された様子をお話ください!私、勇者様のファンなんです!」

と目をキラキラさせた、ちょっとおれ好みの女の子から話しかけられて心がチクりとしたりと、なんかやけにフランクな対応をされていた。……まぁ、一応祝ってくれていることだし!はなからレリットみたいな扱いを求めているわけでもないし!全然、虚しさなんか感じてないもんね!




……嘘です、ほんとはちょっとだけあいつが羨ましい。あいつみたいに目立った活躍はないし、抜群のビジュアルも持ってない。それでも、勇者パーティーの一員として貢献してきたことは事実だし、もう少しもてはやされるかなと思っていたけど現実は世知辛かったようだ。


 

 そんなことを考えていると不意に服の袖を引っ張られる感じがした。なんだ?と思い振り向くとそこには、かわいらしい少女がちょこんとたたずんで、手紙を持ちながらもじもじとしていた。

 ふふふ、勝った!例え小さな女の子だとしても、精一杯頑張って気持ちを伝えようとしてくれている事には違いない。不平不満を言わずに全てを受け入れるのが最も紳士的な行動だろう。

 おれはにやけそうになる口元を必死にこらえながら、ファン第1号へなるだろう女の子へと声をかけた。



「どうしたのかな?お嬢さん。おれに何か用かい?」

普段、お嬢さんなんて言葉恥ずかしすぎるから使わないが、勝ち確しているのだ。多少、キザに接しても問題ないだろう。



「あ、あの……これ……」

小さな口からぽしょぽしょっと紡がれた言葉は、おれでなければ聞き漏らしていただろう。かわいらしい少女よ、みなまで言う必要はない。そこまででも十分気持ちは伝わっているよ。



「ありがとう!凄く嬉しいよ。今、読んじゃっても大丈夫かな?」

おれはそう言うと、封を切ろうと手紙のふちに手をかけたその時、





「だ、だめ……!あ、あの、その手紙を……勇者様に渡してもらえますか……?」




 時が止まる。あれだけ騒がしかった祝いの喧騒が聞こえない。冷汗が出る。おのれの浅はかさと今まで少女に抱いていた妄想や、とった行動の全てが羞恥心として体中を満たしている。



「……も、もちろん!おれが責任をもって勇者に渡しておくよ。」

なけなしの理性を総動員して、爽やか戦士スマイルで対応出来た自分を褒めてやりたい。

 女の子は満足そうに笑ったあと、小走りでその場を離れて行った。



……抜けてよかった。おれの考えは間違っていなかった。あのまま残り続けていたらきっと、おれの心は悲鳴をあげていただろう。今一度ここに誓おう。



絶対!絶っ------対に!自分だけのギルドを作り上げてやる!!!



自分の心に深くこの言葉を刻みつけている最中、王宮近衛兵がこちらにかけ寄ってくる。


「ハール様、王がお呼びです!至急、謁見の間にお集まりください」

どうやら他のメンバーにも声がかかっていたようだ。おれたちはお互い目を見て頷き、謁見の間に急いだ。



「レリット、これを」

移動の最中、先ほど女の子からもらった事を話し手紙を渡すと、彼はありがとうと特に感慨もなく受け取った。さすが!貰い慣れている奴は違いますね!おれなんて一人で舞い上がってたのに、チクショウ!



渡した手紙はハールの羞恥心から握りしめられ、少しクシャクシャになっていた。 





第4話執筆完了しました!自分的にはいいペースで仕上げられていると思っています。

それにしても勇者の人気ぶりは凄まじいですね。ハールは再度、理想のギルドを築くことを誓いましたが、果たしてどうなるのでしょうか。次話以降も頑張って書いていきますので、読んで面白いと思って頂けましたら、感想、レビューのほど宜しくお願い致します。

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