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勇者パーティーの戦士だってハーレムギルドを築きたい!  作者: ぱたた
別れと出会いと別れ
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戦士ハールの独白

 勇者レリットは神に愛された男だった。

なにをやらせても人より上手く出来て、それでいて容姿端麗。これで性格が悪ければまだ救いはあったかも知れないが、誰にでも分け隔てなく接する優しを持ち合わせた完璧超人だった。



 そんなあいつと一緒に、魔王討伐のパーティーに選ばれたのはとても誇らしい事だと最初は思った。だってそうじゃないか。完璧超人と一緒に選ばれるなんて、自分も大活躍してみんなから褒められ喝采されてもてはやされるんだって、思ってしまうではないか。



 可愛くて愛嬌がありちょっと生意気な魔法使いのフェアと、凛としていて気品があり、でもちょっと茶目っ気がある僧侶のウィダと一緒にパーティーを組んで、魔王討伐の旅路の過程でお互いが意識しあい、恋仲になるかも知れないと夢想してしまっても仕方ないじゃないか。



 だけどどうだろう、旅路の中でそんなことが一度でも起きただろうか。


 おれの能力は残念ながら、前戦で魔物をバッタバッタと倒していくような派手なスキルではない。味方にバフを与え、敵にはデバフをかける、後方で戦況分析をしながら最善の戦い方を導き出す。派手なスキルといえば、味方の潜在能力を底上げして必殺技を発動できる状態にする事だろうか。ただし、それも24時間に一回きりであって連発できるようなものではない。

 もちろんこのスキルは珍しいものであり、だからこそ勇者パーティーの一員に選ばれたのだが、

レリットにこのスキルが必要だったかと言われれば微妙と答えざるを得ない。


 

 魔物と相対する中で、一進一退の攻防を繰り広げて何とか倒すおれの前で、レリットが聖剣を振るえば

数体の魔物が同時に吹き飛んでいく様を見ると存在価値があるのかどうか疑わしくなってくる。その強さと、容姿と、優しい態度を目の当たりにしたフェアとウィダは瞬く間に彼の虜となった。そりゃそうだろう。強くて、かっこよくて、優しい男がいたら誰だってそっちを好きになる。

 おれはいつもレリットを取り合って言い争いをする彼女たちをなだめる役だった。どうすれば彼に興味を持ってもらえるか相談に乗り、愚痴があれば聞き、自信を失っているときは励ますことを己の使命とした。そうしなければパーティーが崩壊していただろう。



 そして魔王討伐を果たしたことで、やっとこの責任から解放されると思った矢先、ギルドとして一緒に活動していこうとなったのだ。もちろん誘い自体が嬉しくなかったと言えば嘘になる。ずっと苦楽をともにしてきた仲間だし、なんだかんだで気心知れている部分もあるから。

 それでもレリットといる限り、いつまでも自分と比較し続けてしまうだろう。勇者パーティーとは言ってもやっぱり目立つのはいつもあいつで、おれはお仲間その一でしかないのだから。



 そんな様々な思いが混ざり合った状態で、仲間たちに告げなくてはいけないのは、正直気が重い。それでも言わなければずっとこの気持ちのまま過ごすことになる。それだけは嫌だった。だから決意を込めておれは重い口を開いてこういった。



「おれは……パーティーを抜けようと思う」




「なんで!どうして?今まで楽しくやってきたじゃん。これからも一緒じゃないの?」

フェアが心底驚いた表情で問いかけてくる。楽しくやってきたかも知れないがそういう問題じゃないんだ。



「ハール!?どうしたのですか?何か不満があるのですか?あれば言ってください、仲間でしょう?」

あの凛としたウィダがオロオロしながら言っている。こんな表情するなんて珍しいな。でも、この不満だけは絶対に言えない。言えば今まで築いてきた信頼にひびが入ってしまうかもしれない。それだけは嫌だ。



「ハール……お前……」

レリットも言葉が続かないようだ。そうだ、お前には一生分からないだろう。全てを持ってるお前に、おれの悩みは絶対に……



日は完全に沈み、辺りが夜の闇に包まれる中で抜け出す口実を考えるハールが居た。






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