僕の愛した彼女
今でも僕は後悔している。
あの時の君を救ってあげることが出来なかったから。
そんなに悩んてたなんて思いもしなかった。
ほんの些細な出来事。
君は一体何を考えていたのだろうか?
そう君の事を想うと胸が苦しく締め付けられておかしくなりそうだ。
「なぜ、救ってあげられなかったんだろう?」
僕はそうつぶやいて、頭を抱えながら悩みこむ。
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桜の咲き乱れる季節。
私はある人から告白を受けた。
私も想いを寄せていた人からだった。
今思い出しても、胸が高まる。
私はあまりの出来事に声が出なくなり、泣き崩れてしまった。
あなたは心配そうに私から距離をとる。
ゴメンね……あの時は……。
「ねぇ、あの告白から1年が過ぎたけど、今でも思い出せる?」
「……うん、思い出すよ?」
「じゃあ、あの時と同じように告白して?」
「え?」
「だ・か・ら、告白!」
「え? 今?」
「今じゃなければいつなのさ?」
「わかったよ……」
「ありがとう! じゃああの時と同じ言葉で!」
「……ずっと好きでした……よろしければ僕と付き合ってください」
今聞いても、胸がきゅんとする。
そして、私はあの時と同じように……いや、ウソ泣きだけどそんな仕草をする。
「え? ちょっ!」
「……ふふふ……」
「あ! ウソ泣きだ!」
「えへへ! バレた?」
「このぉ!!」
あなたは私の頭を軽くポンとする。
「じゃあ、散歩ね! 手をつないで行きましょ!」
「……わかった」
ちょっと汗ばんで暖かい手に触れる。
私は幸せだ。
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幸せだったはず……。
でも、僕は彼女の異変に気付いてあげることが出来なかった。
鈍感な僕を恨む。
あの時……本当に声をかけてあげれれば……。
本当の気持ちを汲んであげれれば……。
きっと僕はこんなに後悔しなかっただろう。
いや……これは彼女が僕に対してやった罰なのだろうか?
「きっと……そうだよね……」
僕はこの後悔を背負いながら生きていく……それが彼女の望んだことなのだろうから。
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「え?」
私は病院の診断を受けていた。
どうもお腹の辺りが数日痛さを感じて、やっと異変に気が付いたところだった。
「えっと……ご家族の方は?」
「私、家族と呼べる人が居ないので……」
「そう……ですか……では、結果をここでお伝えしますね」
「はい……」
「残念ながら……末期ですね……」
「そう……ですか……」
言葉にならなかった。
せっかくあなたとの幸せな時が暮らせたのに……。
私の命はもうすぐ尽きる。
ならば……あなただけでも……。
「急に呼び出してゴメンね?」
「うん、どうしたの?」
「えっと……」
私は言葉に詰まる。
本当はこんな言葉を口にするのは嫌だ。
でも……あなたのためなら……。
「別れましょ」
「え?」
「別れて、私の事は忘れて?」
「……どうして? 僕が悪いことでもした?」
「ううん……私の勝手。だから早く良い人見つけてね?」
「いや! ちょっとまって! もう少し説明してくれよ!?」
彼は詰め寄ってくる。
当然の事だろう。
でも私はもう決めたこと。
あなたを私の人生……短い人生に付き合わせたくないから……。
せめて……せめて……最後は笑顔で……。
私は涙をこらえて最後の言葉を言う。
「ありがとう……サヨウナラ」
思わず最後の言葉で涙が出る。
笑顔……最後の最後で作れなかった……。
あなたには絶対見せたくなかった。
言葉を切るように。そして逃げるように私はあなたから去った。
連絡も取れないように……あなたから私は消えた。
私……あなたに弱ってる姿見られたくなかった……。
そして……あなたの人生を壊したくなかった……。
あなたにはあなたの人生……私のいない人生を過ごしてほしい……。
そして……今までの私の事を忘れてほしい……私と過ごした時を……全てを……。
サヨウナラ。私の愛する人……。
刻々と時間は過ぎて行く。
もうあなたは私の事を忘れてくれでしょうか?
お願いだから忘れてほしい……私のすべてを……。
もうすぐ私は旅立ちます。
私は……あなたの想い出を大切にして旅立つから……。
でもあなたはは私の事忘れて?
これが最後の我儘だから……。
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そう、僕は彼女が病床で亡くなったのを聞かされた。
1か月前だったそうだ。
彼女は……どうして僕をそばにおいてくれなかったのだろうか?
そばに居させてもらえないほどに、僕は頼りなかったのだろうか?
僕は彼女に置き去りにされた。
そんな……そんな彼女に気が付いてあげられなかった僕が許せない。