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カカシ  作者: 反重力枕
7/17

護衛

 瞼をこじ開けようとする眩しい朝日。


「毎回ドンピシャすぎるだろう・・・」


 朝日に文句を言っても仕方ないのでベッドから起きる。今日は商隊護衛の出発日だ。空は雲一つ無く気持ちよく晴れているが、また胸パーティーと絡むのかと思うと気が重い。

「なるだけ離れてよ」などとブツブツ言いながら支度をする。


 食堂へ下りるといつものテーブルに朝食が既に置かれていた。

「レン君、おはよう。もう食べられるわよ」と、女将のリタが挨拶がわりにレンの頭を軽く抱くように撫でる。シルからは『お母さんの癖だから諦めて』と言われた。悪い気はしないし、むしろ心地いい。

「おはようございます。頂きます」

 レンがテーブルに着くとシルがその向かい側に座る。


「おはようレン。今日から長期依頼に出るのよね?」

「おはよう。1ヶ月半ぐらいかな、とりあえず今朝で宿は引き上げるよ」

「そっか、淋しいな・・・」

「え?」

 シルは顔を赤くしアワアワしながら

「いや、べ、べ、別にレンが居ないと淋しいとかじゃなくて、人が減ると淋しいなって事よ!勘違いしないでよね?もう!」

 レンはケラケラ笑った。

「なにが可笑しいのよ!」

「怒るなよ。シルは可愛いんだなって思ったんだよ」

 さらに赤くなるシル

「か、か、か、か、か、可愛いって・・・」

 慌てて立ち上がり下を向いて厨房に走って行った。

「あれ?怒らせたかな?」

 今日も別人のようなレンである。


 近くのテーブルから声が掛かる。

「おいレン、女の子を困らせちゃいかんだろ?」

 ギルマスのマクウェルだ。

「気持ちわりークソジジイだな。人の事をコソコソ覗き見しやがって、エラそうに意見すんじゃねぇーよ!それにコーヒーなんか飲むな!豚の小便でも飲んでろ!」

 今日もブレのないレンである。

「・・・・・・」

 マクウェルも学習すればいいのに・・・

「ま、まあ、なんだ。今日から商隊護衛だろ?気を付けて行ってきてくれ」

「・・・ふん!」

 女将さん達の方に向き直り

「ごちそうさまでした。暫く空けますが戻ってきたらまたお願いすると思うので。とりあえず行ってきます」

「いいのよ、気を付けてね。行ってらっしゃい」

 シルも女将さんの後ろから手を振ってる。

「マクウェルさんも淋しくなるわね?」

「なわけねーだろ。静かなモーニングコーヒーが楽しみだ」

「無理だな」

「なんでだ?」

「明日からはシルが代わりをやってくれる」

「覚悟しときなさい!クソジジイさん」

 お母さんがシルの頭に手を置く。

「こら!ふふふっ」

ここの居心地の良さは何だろう?こうゆうのを知らずに育った自分には麻薬のように感じた。


 そんな事を思いながら集合場所の広場へ向かう。既に商人達と荷馬車4台、数名のハンターの姿もある。今回の護衛の内訳はベテランハンターの7名パーティーが2組、気取った5名パーティー、胸パーティーの4名、そしてソロのオレで計24名。


 商隊の代表から挨拶と移動経路の説明があると言うので各パーティーのリーダーだけ集められた。


「おはようございます、私はデュラセル商会ノクチュア支店を任せられておりますヤップと申します。皆様、今回の護衛を受けて下さり感謝しております。ウチの会長から挨拶がありますので。どうぞ」

 見覚えのあるオッサンが出て来た。

「おはようございます。デュラセル商会のデュラセルです。今回の商隊はウチの商会関係になっております、もしかしたら良からぬ者達に情報が流れているやも知れません。危険が伴う商隊移動であります、どうか皆様の力添えをお願い致します。それでは詳しい打ち合わせはヤップの方からしますので後はよろしく」


 やっぱりデュラセルのクソジジイだよ。


 それから細かい打ち合わせをしてそろそろ出発となった。そこへデュラセルのクソジジイがやって来た。

「おい、レンのクソガキ」

「なんだよ、デュラセルのクソジジイ」

「相変わらずだな」

「うっせーよ。そーいやこの服ありがとな」

 デュラセルは目を見開いて驚く

「お前?頭でも打ったか?熱あるだろ?」

「はぁ?いいか?オレでも礼ぐらい言うぞ?つか、ヘンリーの爺さんに聞いたんだよ」

「なるほどな、その刀もヘンリー工房だな、別にいいさ。それより護衛にお前が居るなら安心だ。頼むぜ」

「おい何で刀って知ってんだ?」

「ヘンリー爺さんに聞いたんだよ。喜んでだぞ?はっはっは〜」

 お喋り爺さんだな

「まあ、死ぬなよ」

「あたりまえだクソジジイ」


 そんな事はどうでもいいんだ。

 商人の中にどうも違和感のある奴が2人居る。とりあえず要注意だな。


 出発の号令が掛かった。護衛の配置は先頭と後方に7名ベテランパーティーがそれぞれ騎馬で2名と馬車で5名と言う形で付く。残りの10名は2人は騎馬、残りは小さな機動性のいい馬車に4人づつ乗るのだ、最悪である。

 馬には乗れるのだが、気取ったパーティーで馬一騎と馬車。残った馬には獣人マリが相性がいいと言うので取られた。最悪である。

 馬車の御者はリエラがやっている。これも得意だと言われ取られた。最悪である。

 残す所荷台は胸リリーとエリカ、そしてオレ。最悪である。


 極力離れて座る、そして寝ようとしたがが寝かしてはくれない胸リリー。

「レン、一緒になれて良かったわ」

 オレは全く良くない。

「あそう」

「何か話でもしない?」

 マジかよ!なんて思ってると気取ったパーティーの騎馬野郎が近ずいて来て話しかける。

「ねー君たち、あまり見ない顔だけど最近パーティー組んだの?」

 神の助けだと思った。

「そうよ、私はリリー。そしてエリカとリエラ。騎馬の子はマリ」

「そうなんだ、オレはサイモン、シルバーランクだ、よろしく。そこの子は?」

 オレに関わるなよ

「彼はレン。ソロなの」

「まぁいいや。休憩になったらまた話そうね」

「いいわよ」

「じゃ」

 もう行くのかよ、早いな・・・


 この後1度軽く馬に水休憩、そして昼になる頃に水場のある開けた場所で昼食を取る事になった。


 オレは少し離れた場所で干し肉やらパンをかじって木陰で横になる。

「チッ!誰かが近づいて来る。1人にしてくれよー」


「レン、一緒に食べない?」

 胸子だ、しつこい。

「もう食べたから。いい」

「うーっ!1人じゃ淋しいでしょ?」

「全然。最高!」

「もーっ、あの事は怒ってないから」

「いいから、シッシッ」

 そこへ気取ったパーティーのサイモンがやって来た。

「あら?リリーちゃん。もう食事は済んだのかな?」

「まだよこれからなの。レンを誘おうと思ってたの」

「これは羨ましい。オレもまだなんだ一緒にしてもいいかな?」

「どうぞどうぞ、オレは食ったから向こうへどうぞ」

「ちょっと!」

「みんな待ってるんだろ?早く行った方がいいぞ」

「彼もこう言っているからお邪魔させてもらおうかな」


 リリーはサイモンと離れて行く。何か言ってたが知ったこっちゃない。



 午後からも何事もなく商隊は進んだ。上手く宿を取るような村や町にたどり着く事は難しい。よって野営となる。初日となるため皆緊張気味だ。


 荷馬車や商人達を囲むようにハンターがテントやら寝床を作る。当然交代て何人かが見張りをする事になる。


 大きく焚き火をしてそれを囲んで夕食となった。商隊代表のヤップから美味い焼肉が振る舞われた。マジ美味い!

 そこへ

「レン、食べてる?」

 胸子が来た

「見りゃーわかるだろ?」

「そーだね。あ、飲み物貰ってきたの、飲むでしょ?」

「あ、あー悪いな」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「用事無いなら向こう行けよ」

「いや・・・あのー少し話をしよかなーって・・・」

「お取り込み中悪いけどいいかな?」

 サイモン・・・いい所に来た!コイツ神

「リリーちゃん、こんなヤツほっといて俺たちと食わない?」

 なんかムカつくな。

「るせぇな、とっとと連れて行けばいいだろ」

「なんだとコラー!ろくすぽ防具も無しでよく護衛受けたもんだよ」

「ちょっとやめてよ」

「リリーちゃんはいいからね。おいお前、聞いた所素手の女の子にぶっ飛ばされたらしいじゃねーか?どんだけ弱いんだ?はっはっ!」

「・・・・・・」

「なんとか言えよ!」

「何を言えばいいんだ?オレは弱い・・・とか?」

「ぷっ・・・」

 胸リリー、受けてんじゃねぇ。お前だろぶっ飛ばした本人。

「てめぇなめてんのか?」

 詰め寄るサイモン

 そこへ新たな声が掛かる

「何してるの!リリー大丈夫?」

 エリカだ。

「依頼中のハンター同士の喧嘩は罰金よ?知ってる?」

「そ、そんな事する訳無いよ、悪ふざけしてただけだ」

 サイモンよく言うよ

「そうなの?」

「う、うん。エリカ」

「じゃーリリー向こう行くわよ」

 サイモンも一緒に離れて行くのでやっと一息つける。


 それにしても商人のあの2人は何なんだ?何か引っかかるんだか、分からない。

 普通に商人なんだ・・・普通なんだよ・・・

 まぁいい、そのうち分かるさ。



「おい勘のいいガキが居るぞ」

「暫くは控えるか」

「その方がいいな」



 夜中の見張りにレンは立っていた。見張りは4人、レンの他はベテランパーティーからだ。1人のハンターが話しかけてくる。


「君は探知系の魔法は出来るかい?」

「はい、出来ます」

「そうか、優秀だね。でも使ってもいいが言わない方がいいよ」

「何でですか?」

「それに頼ってしまって護衛達の緊張感が落ちてしまうんだ」

「へー、なるほどですね」

「大いに使って貰って良いのだが密かに上手くやってくれ。昔の仲間が大変だったんだよ」

「分かりました」

「じゃーね」


「あの」

 レンが呼び止める

「どうしたんだい?」

「今担当されてるエリアに小さな反応があります」

「分かった、オオカミかな?対処しとくよ。ありがとね」


 その後は特に何も無く見張りを交代して朝を迎えた。軽く朝食をとり馬車に揺られる。やはり寝不足気味だったせいで10分もしない内に寝てしまった。


 1度目の水休憩に目が覚めると

「おはよ。よく寝てたわね」

「はいはい、ごめんな・・・・・・!!」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 索敵に引っかかった、しかも数が多い。

 エリカも様子が変だ。探知か索敵が使えるのか?でもおかしい。オレ達が使う索敵や探知は一般的な探知系魔法とは全く違って探索範囲が倍以上だ。しかもバスドム以外の4人しか習得していない。

 まあ、気分でも悪いのかもな。


 オレは馬車を下りて昨夜のベテランハンターの所へ行き、こっそり伝えた。そしたらこの辺りは魔獣の警戒地区なので偵察を出すと上手くやってくれた。

 四方に向けて4人が偵察に出ることになり、オレも加わった。オレは街道右側の後方で、前方はベテランハンターの人、リュークと言う名前らしい。左側は前方はもう1組のベテランハンター、後方はサイモンだ。


 各自短距離通信の魔道具を持ち見つけ次第商隊代表のヤップさんに連絡をとる手筈だ。


 オレの探知では全体に囲まれる形で分布してるのだが、オレの担当エリアが大量だ、まぁいいか。


 暫く歩くと居ましたクマ系やら蛇系やら虎系が。そして全てデカい。大小合わせて総数30かな。

 一応連絡はしたが、応援を向かわせるから無理をするなという事だ。左側は少なく直ぐに対処出来るらしいが、右側の前方にも20ほど居ると言う。


「さて、久しぶりの運動だ、そして刀の初陣!楽しみだぜ」


 刀を抜き放つと、甲高い金属音が響き渡る。すると魔獣はオレを敵と見たか餌とみたか向きを変える。

 オレのスタイルは逆手持ちだ。刀は両腿に付けているためにちょうど腰の低い位置から鞘ごと前方に倒し上手く抜ける。後方へ倒して抜けば順手になる。

 オレが魔力を圧縮しだし少しづつ刀に流すと刃文が赤紫に光る。更に魔力圧縮を続けると辺りに低周波の耳や頭の中を圧迫する脈動音が発生した。

 そして高圧縮された魔力を一気に体内に巡らすとドン!と低い衝撃波共にレンが消えた。

 レンは一瞬で魔獣の目の前まで移動し軽く刀を横一文字に振り抜いた。

 半分程の数が胴体を切り離される。

 込められた魔力は斬撃となり刀から抜け次々と魔獣の後方に位置する立ち木から岩まで切り刻む。

「ヤバっ!魔力抜け凄い。微量でいいなこれ」

 今度は残りの魔獣を一体づつ迎え撃つ。全て倒すのに5分だった。


「よし、上々だな。爺さんの言う通り『切れ過ぎ注意』だ」

 まだ前方のリュークさん側に魔獣の気配が多いので応援に向かった。


 着いてみればあと8体なんだがその内の一体が6メートル越えのゴリラの様な魔獣。それに手こずっていた。

(ここで派手に動くのはまずいな)

 とりあえず雑魚の7体を順次始末する。

「助かる!これでじっくり対峙できるぜ」

「フォローします」

 オレは初級のファイアボールをデカゴリラの顔に放つ。着弾と同時に乾いた破裂音がして下顎が吹き飛んだ。

 リュークさんは一瞬驚きはしたが動きに隙の出来たデカゴリラに切り込み足の腱を絶った。体を支えられなくなって崩れるデカゴリラ。そこにトドメを刺して状況終了である。


遅れて途中まで応援に来ていたハンターと共に商隊まで戻ってきた。


 代表のヤップさんが

「皆さん、ご苦労さまでした。怪我などはございませんか?」

「ええ、問題ありません」

 リュークさんが答えた。

「それでは移動しても直ぐにお昼ですし、このまま昼食と長めの休憩を取りましょう」



 オレは少し離れた木陰で寝っ転がった。

「日陰は心地いい」

 遠くでハンター達が商人と魔獣の話で盛り上がってる。


 木陰に柔らかく風が吹く


 キラキラと太陽の光が葉っぱの間から抜け瞼の上からくすぐる。


 眩しいのはいい時もあるが


 今は邪魔くさい。







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