バスケットの中
カカシと言うのを知っているだろうか。
田んぼや畑で作物を獣害から守る為に、人やより強力な獣に模して作られた言わば脅しの人形だ。
ただ何もしないでそこに有ることが仕事なのだが、はたして何もしていないのだろうか?
彼らは何もしていない様に見えるだけで・・・
カカシに見えているだけでカカシではない何か・・・
人知れず何かをしている
鏡のような水面より顔が持ち上がる感覚、徐々に意識を司る器官が動き始める感覚、それぞれが同時にゆっくりと進行する
奇妙な空間にいた
水中なのか、そうでは無いのか
身体が動かない
暗いのか明るいのか
わからない
鏑木蒼弥(16)
死んだようだ
どれだけ時間が経ったかわからない
そもそも時間の感覚も掴めない
すると急に意識が途切れた
彼はとある世界の貧民の集まるエリアに生を受ける。それは祝福など縁のない誕生であった。
産着などは無くそのまま床の上に寝かされる。
母親は抱くこともせず、いや出来ずこの世を去った。
近くに居た女達は心無い相談をする。
「どうするの!?」
「そんなの私が知るわけないじゃない」
「引き取る人・・・いないよね?」
「とりあえず今夜・・・教会の所へ・・・ね」
秋口の夜は肌寒いを通り越し乳飲み子にはかなりキツイ夜だ。その子は泣く声も出ない程に衰弱していた。
ガタイのいい男がフードを深く被り暗闇から現れる。
傾いた大きなドアの前に置かれたバスケットをそっと持ち上げ抱えた。
「お前はツイてるが、不運でもあるな。でも、飯は腹いっぱい食わせてやる」
バスケットを抱えた男は光の粒を残し溶けるように消えた。
初めての小説です。
書き出してしまった以上投稿してみたくなりました。最後まで書ききれると嬉しいのですが、気長にお付き合い下さい。
転生とありますが物語のきっかけ程度ですのであしからず。