第8話 正体、そして疑問の解決
「凪が向き合ってくれる以上。あたしはすべてを貴女に話すわ」
『うん・・・』
沙希は真剣な顔で凪を見つめる。
凪はそんな沙希におされてか、力のない返事を返した・・・
「あの施設のことはもう知ったわね」
『うん・・・』
「じゃあ、あの男の子のことを話すから」
『うん・・・』
沙希の言葉に、凪は相槌を打つしかなかった。
凪は口出しの出来ない何かと、知りたい。
という気持ちがでてきた。
「よく聞いてね。あの少年はフェランツって言ってね、イタリア出身なの。
神出鬼没な少年らしくてね・・・
だからあたし達もあの時が始めてだった。
でも、あの少年はあたし達の前にはよく姿を現した。
しかも、あたし達がピンチな時に必ず・・・・」
沙希はその時のことを思い出しているのか、暗い顔をしながら、一度窓を見つめ、何かを思いつめる顔をする。
凪はそんな沙希に、その少年はどうしたのか?
という疑問が出てきた。
そして、それと同時に
『どうして裏切ったのか』と、さっき口から勝手に出た言葉が頭に浮かぶ。
それを沙希に尋ねようか、尋ねまいか・・・
凪が考えているうちに、沙希は口を開き始めていた。
「その少年はあたし達を何度も救ってくれた。あの施設には光がなかった。
元々あたし達には光がなかった。だけど、あの施設には光があると、信じて疑わなかった。
でも、光がないことを身をもって知らされた。
だけど、あの子が、フェランツだけが、あたし達にとってのかけがえのない光だったの・・・
なのに・・・
なのに・・・」
沙希は涙を押し殺しながら、俯いていた。
いやな思い出を、思い出すだけでも嫌だろうに、それを伝えなくてはならない。
言葉にすることは、彼女にとって、とても残酷なことに思えた。
『裏切った・・・の?』
「えっ・・・!」
凪の言葉に、沙希は驚いて顔をあげた。
そんなことまでは知らないはずなのに・・・
きっと彼女はそう思っているのだろう。
『さっき僕は、何故か知らないけど、あの出来事を見た後で、どうして裏切ったの?て・・・
勝手に口が開いたんだ。最初は言ったようにあの男達のことだと思った。
でも、今沙希を見て思ったんだ』
「そう・・・でも、どう裏切られたかは知らないでしょ?」
『うん・・・』
それから沙希は落ち着くために、ため息のような息を吐き、話始めた。
「ある日あたし達は見てしまったの。男達とフェランツが話しているのを・・・
そして知ってしまったの。
とんでもない真実を・・・
この施設がやっていること、それは全て・・・
フェランツの仕業だったって・・・
それを聞いた時、あたしは信じられない気持ちでいた。
いつも助けてくれた人。そんな人が望むわけないって・・・・
そして考えたわ。きっとこれはフェランツが望んだことではなく、フェランツも誰かに頼まれているんだって・・・」
『それが・・・裏切り?』
「まあ、そうね・・・それで続きがね・・・
あたし達は信じられなくて、それを直接フェランツに確かめに行くことにしたの・・・
フェランツは優しい人で、あたし達の話は、何でも笑顔で聞いてくれた。
でも・・・その話をフェランツに言ったとき、急に目の色変えて・・・
たぶん腹を殴られたんだろうけど、一瞬の衝撃の後
目が覚めた時にはベットの上。初めて凪と隣のベットで・・・
そこにはフェランツがいた。
【知らなければ良かったのに、君達には実験代になってもらう。
かつてない大きなことを体験してもらうから。
凪、君には輪廻を体験してもらう。そして沙希、君には何年後かわからないけど、立会い人として、このことを凪に伝えてもらう。
だから凪、君の記憶は消させてもらうよ。僕の実験が成功するのは何年後なのか・・・
それは沙希。君によってわかるさ。
凪に与える能力は、僕を殺せば解除される。
何年後かに、君は凪に伝え、僕を殺しにくればいいさ】
フェランツはそう言って、あたし達を・・・」
『だから僕は記憶がなくて・・・』
凪は沙希の言葉を整理しながら、理解した。
そして、沙希のしてほしいこと。
それがようやく理解でき、今までの疑問も全て解決した。
後はフェランツの言うように、彼を殺しに行き、僕の能力を消す。
・・・・
凪の心の中にもやもやとした気持ちが現れる。
本当にそれでいいのか?
短い期間ではあったが、僕は確実にこの能力を体験した。
不思議に思ったのは今回が始めて、だからこの能力が嫌だなんて、考えたこともなかった。
もし彼を殺しに行けば、もう体験することはない。
それは嬉しいことなのか・・・
考えれば考えるほど、凪は頭を悩ますだけだった。




