お互い転生者?!
とうとう、大祭前の祈りの日が来てしまった。
王族としてこの式に出ないわけにもいかず。
あれから学園には行っていないし、アオイさんの体調が優れないのをディルバルド様に伺っただけ。
どのような顔でアオイさんと対峙したらいいのやら、あの夕暮れの彼女はなぜあんなにも恐ろしく感じたのだろうか・・・と、身支度をしながらずっと考えていた。
そこへ、ジルバルド様がやってきて今日もおめかしが可愛らしいとか褒めまくられ、彼の従僕にたしなめられるという日常にどこかほっと力が抜けた
ジルバルド様にエスコートされ、祈りを行う祭壇のもうけられた神殿に入り、国王様、王妃様、神殿長、貴族・諸侯の方への挨拶をして席へ座ってまつ。
しばらくすると、ジルバルド様の隣に隣国イスカルの王子、エリク殿下が腰を下ろした。
二人は隣同士何かを話しているが、神殿内なので小声でよく聞き取れない。
なぜかディルバルド様がおらず、そのことを不審に思い、ジルバルド様の袖をちょいちょいと引っ張って顔を見上げてみた。
ジルバルド様はこちらをみて破顔し、何故か嬉しそうだが、今はいちゃついてるときじゃない。
彼の耳を引っ張って、頭一つしたのわたくしの口元まで引き寄せてそっとうかがう。
「ねえ?ディルバルド様がいらっしゃらないようですが・・・」
「ああ、ディルは・・・。」
ジルバルド様が何かを言うより早く、すっと神殿付きの神官が私宛に小さなメモ書きを持ってきた。
はあ、はあっ、と息を切らせて、そのメモにあった場所へわたくしは走った。
「ディルバルド様!!!?」
アオイ様の控えの部屋に、彼はいた。
そしてそこにはとんでもない姿のアオイ様がいた。
わたくしを見るなり、彼女はその可愛らしい顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。
アオイ様の姿は、とても未成年の乙女に着せるようなモノではなかった。
胸側も背中側も大きくV字に開いて、その白い素肌が目を引き、肩から手くびにかけてシフォンの透けたパフ袖、細い腰のくびれや、少女とも女性とも言えないあどけなさの体のラインがよくわかるような細身のドレス。
何より異様なのが、すべて黒曜石であしらったアクセサリーだ。
何連にもならぶネックレスは、彼女の細い首に巻き付き、白い脚には鎖のようにながいアンクレット、黒に囚われている錯覚を起こす。
仮にも聖女と呼ぶにふさわしい恰好ではない。
「アオイ様、そのお姿はどうされたのです?ディルバルド様?これはこの国が用意したのですか?!」
「いや、これはイスカルの王子からの贈り物だそうだ。」
「?!どういうことですの?」
この衣装はイスカルの王子がどうしてもと、ジルバルド様にお願いして届けられたという。
・・・じいさん、中身は確認しなかったのか!!!
そもそも、隣国の王子がなぜこの国にやってきたのか、そこから疑問に思えてきた。
しくしくと泣いていたアオイ様が、すっと立ちあがり私に向かって頭を下げてきた。
ジャラリといやな音を立ててアクセサリーがきらめく。
「ごめんなさい、ルル様。先日は意味のわからないことをいって怖がらせてしまいました。あれはすべて私の思い違いでした。」
「いえ、いいえ、、、わたくしも話を聞かずに逃げてしまって、、、あなたに何が起きているのか話してくれませんか?」
いやな予感がする。
すすり泣くアオイ様をそっとソファに座るよう、ディルバルド様がその肩を抱いて促す。
「ルル様、私は転生者です。あなたは、、、あなた、も?」
アオイ様は、すがるような目で悲しげに私を見つめた。
メモには あなたに謝りたい、すべてお話しします、と書かれていた。