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放課後の驚き

 その後、昼食をみんなで食べほっと一息をついた。

 午後からは各々自分の極めたい科目へ出席することになっている。

 ディルバルド様達は騎士を目指しているので、騎士科へ、お友達は商売の手伝いが将来の夢なので経済科、わたくしとおなじくらい高位令嬢ですが、洋服へのあこがれが過ぎて洋服をデザインしたいお友達は被服デザイン科へ、わたくしと、もう一人伯爵家のご令嬢は政治経済科へ、将来の夫を支える意味でも周りの情勢を知っておくことは大切だ。


 この学園は、やりたい夢に向かって勉学ができるところが素晴らしいと常々思っている。

 数代前の国王様が、王妃様の進言により男子だけでなく女子教育にも力をいれることを進言なさってくれたとか。

 貴族ともなれば、娘さんは家同士の繋がりにその身を捧げることもあるが、この教育のおかげかこの国ではほぼその犠牲はなく、子供の夢を応援するという土壌が貴族にも平民にも浸透しているのだった。

 これが、この国の平和の礎になっているのだと思う。

 血なまぐさい権力の争いがないことが、本当に嬉しいと思っている。

 それでも、まだ貴族という身分に優越感をもち、権力をかざすものももちろんいるのだが。

 じいさんいわく、それもまた必要悪でもあるのだとか。


 そして午後の科目のために、一度みんなと別れてわたくしたちは別の教室へ向かった。

 途中で、アオイさんが学年問わず集まってきた男子の群れのなかでニコニコと愛想を振りまいているのを見かけた。

 可愛らしい聖女様を一目見ようと、学園中の人(男の子)が、それはそれは大賑わい。

 もうすぐ午後の授業がはじまるというのにこの騒ぎ。先生たちはもちろん、ここでお祭り騒ぎをしている彼らも授業が受けられず勉学が遅れて迷惑になるだろう。

 仕方がないので、ここはわたくしが一言注意をすべきだろう。


 「皆さまー、もうすぐ午後の授業が始まってしまいますわ?アオイさんも午後の授業が受けられず困りますわよ、また午後の終わりにいらしてはいかが?」


 そう、声を大きめに注意をすると、皆わたくしを見て驚き、礼をして去るものや赤面して逃げるように走り去るもの、つまらなさそうに歩き出すもの色々だ。

 その人垣を割ってアオイさんがフルフルを震えだした。そして目に涙を浮かべるではないか。


 「み、みなさんにご迷惑をおかけしていましたのね、ぐすん。仲良くなりたかっただけですのに、私怖い・・・!」


 彼女がフルフルと子犬のように涙すると、彼女の近くにいた同級生の男の子が数人駆け寄り慰め、そしてわたくしをにらむではないか。


 「ルル様、そのように大きな声をお出しになっては、、、聖女様が怯えてしまうではいですか。」

 「そうですよ。淑女としてそのように大声、、、考え直してみては?」


 などと、文句を言われる始末。いえね?授業に遅れるから、注意喚起してあげただけなのよ?

 何故わたくしがこのように悪者扱いなのか・・・と少々苛立ったがそこは精神年齢80越えのわたくしが折れる。


 「・・・わかりましたわ、大声をだして申し訳ありません、聖女アオイ様。しかし皆さまこれから授業がありますの。あなたも何か選択授業をお受けしますわよね?遅刻は先生方にとっても、クラスメイトにも迷惑になってしまいます、なにより授業の遅れは自身のためにもなりませんわ、さ、早く移動をなさってください。」


 わたくしたちも午後の授業にギリギリ間に合うかの時間だ。

 彼女とそれを守るように立つ男の子たちに、礼をして去ることにした。


 後ろでは慰める声が聞こえ、午後授業を始めるための予鈴が鳴り響いた。

 わたくしの見えないところで、彼女がいじわるく笑みを浮かべていることなど知らず。



 「ルルちゃん、、、私は今の悪くないとおもうよ。この学園で全員に注意を言い渡せる生徒なんてルルちゃんしかいないのだし。ね、そんな悲しそうな顔しないで~」


 伯爵家令嬢のお友達が、授業の前にわたくしを抱きしめて慰めてくれた。

 悲しそうな顔してたかしら。ごめんね、ちょっとだけ胸が痛んだの。彼女の暖かい腕のなかでそっと悲しみをいやすのだった。

 そういえば、午後授業のあとにこの学園の案内を先生に頼まれていたっけ。・・・気が進まなくなってきましたわ。


 そうも言ってられず、午後授業が終わるとクラスの先生とアオイさんがやってきた。


 「ルルさんになら安心して任せられるわ。アオイさんは一年間しかいませんが、この短い間にたくさんの思い出を作ってもらいたいね。あなたも各地を巡る旅で大変でしょうが、15歳なのだし年相応にもっと人生楽しむべきだよ。」


 クラス担当の先生は、わたくしとアオイさんを交互に見つめて頭を撫でてくださった。

 そうしてわたくしとアオイさんは、校舎の各部屋を紹介しつつ周って先ほどの噴水広場へとやってきた。

 そこから見える広い校庭では、まだ騎士科の人が授業後の訓練に励んでいた。

 ふと、アオイさんを見ると、彼女は遠目にみえるディルバルド様を切なそうに見つめていた。


 ・・・もしかして?


 「ねえ・・・?あなたもしか、、、


 問いただしたい言葉を待たずに、広場の奥から聖女様を探しに来た男子たちがわああっと、小走りでやってくるのが見えた。何人もいる。これはまた大騒ぎになりそうだ。

 

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