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よりがみハッピー

作者: 波風

※この二次小説には多少の自己解釈や自己設定があります。

誤字や日本語がおかしいところもきっとあります。それでも言い方はどうぞ。



──世の中、金が全て。

と、までは言わないにしても、今の私には金しかなかった。...いや、金すら無かった。金なんてなかった。


 この"世の中"とやらに「貧乏神」として生まれた私──「依神(よりがみ) 紫苑(しおん)」は、他者を不運にするという貧乏神の能力を制御出来ず、自分すら不運にしている可哀想な奴。


 今日も1つ、村を不運にし貧乏にし寝所を失っていた。...ただ、私は数日生活するだけの寝床と食料が欲しかっただけなんだけど、能力のせいで7時間しか保たなかった。これでも2分記録を更新したほう。嬉しくないけど。


「はぁ...。また、姉さんのせいで移動しなくちゃならなくなったわ。ちっとも稼げてないじゃない。」

 私のことを姉と呼び悪態を吐く「疫病神」の妹──「依神(よりがみ) 女苑(じょおん)」と2人、もう人が住んでいない屋根の上にいた。

 女苑の疫病神としての能力は、他者に取り憑き財産を消費させる、というもの。私とは、私なんかとは違いそれを制御できる女苑は自由に取り憑き、富を巻き上げ稼ぐことが出来るのだが、私の制御出来ていない力のせいで貧乏とまでは言わないにしても、満足に稼ぐことが出来ていない。前述でも述べているが、今いる村は不運にも滅んでいるのだ...女苑が稼ぎきる前に。


「...ごめんねぇ...えへへ。」

 情けなく笑う私。何度目かわからない状況に、もはや笑いながら謝ることしか出来ない。

「...はぁ。慣れたわよ。もう良いから、日が暮れる前に次の寝所を探しましょう。姉さんの能力で、全財産失う前にね。」

 ...ああ、妹に食わしてもらうなんて情けない。それでも生きていくしかないんだ...貧乏神として、私として。と、劣等感と少しの罪悪感を抱き、女苑に続き立ち上がり屋根から飛び降りる。


「オメェらか...オレたちの村をこんな風にしたのは!!」

 私が降りたと同時くらいのタイミングで、どこに隠れていたかはわからないが、村人がぞろぞろと現れた。ぞろぞろと言っても15人くらい...半数以上は他の村へと移動してしまった、奥さんや子供を連れて。

「はぁ?何の根拠があって言ってるのよ...?」

 めんどくさそうな態度をあからさまに出し女苑は言う。女苑の能力は、普通では気づかない、気づかずに財産を消費する。故に、この怒りの理由は私だろう。しかし、能力とか言っても普通の人間が分かるわけもなく矛先は、私達姉妹2人に向けられている。


「根拠もクソもあるか!!お前らの格好みりゃ一目瞭然だろうが!お前は金を持ってそうだし、お前は貧乏を移しそうだ!!!それに、お前たちが来たあたりからムラは急激におかしくなったんだ!!」

 名探偵ばりのセリフを吐いているな、この人。ただ、残念ながら女苑が身につけている指輪や持っているバックには、財としての価値はない。衣服と同じ様なものなので、鐚一文にもならない。なので後ろで「それをよこせー」とか言われても...。

 ビクビクして縮こまっている私とは反対に、態度は変わらず深いため息を吐き女苑は言う。

「言い掛かりやめてよね。最初っからこうなる村だったのよ。」

 なんともまあ堂々とした妹である...私なんかと違って。

 女苑は私のことを見ずに「無視して行くわよ、姉さん」と言う...村人達にも聞こえるくらいの声で。これは多分「私達はもう関わらないから構わないでくれ」という意味なのだろうが、気が立っている村人達は、その意味がわかるワケもなく騒ぐ。


「そんなわけあるか!!」

「昨日まであれだけ元気に育っていた野菜や稲たちが、急に枯れたり腐るわけねぇだろ!!」

「わしの家にあった家宝もちゃんと手入れさしてたのに割れてしまった!!」

などなど、多数のクレームが飛び交う。終いには「お前たちは悪魔だ!」だの「お前たちは最悪の姉妹だ!!」と言った言葉が私達に石や壺の破片などが投げられた。


「──...女苑、ごめんね...ごめんね...。」

 汚れ貧相な身なりをした私にぶつけられるのなら良いのだが...いや、そもそも私が悪いのに女苑にぶつけらるのは嫌だ...せめて壁に...盾になるしか役に立たないだろうと私は、女苑を抱き石や破片から守る。ああ...痛いぁ...。石は背中や頭に当たり、破片は刺さる刺さる。...それでも、それでも...女苑が痛くないならそれで──「お前らなぁ!!自分の不幸を人のせいにしてるんじゃないわよ!!死ね!!」──...!?


 私を退かし、叫んだ。しかも、ストレートに「死ね」とは...。その声に、その叫びに驚いたことにより手が止まったスキをついて、女苑は村人ひとりひとりを容赦なく殴った。自分の惨めさにすっかり忘れていたが、女苑はインファイトが得意な疫病神なのだ...女の子がインファイト得意って...。得意だからと言ってすぐに手が出るわけではない。そもそも、私が居なければ女苑はこんなことにはならないのだから。


 村人達は足や手を引きずりながら、隣村に逃げていった。鬼神とかの方が似合っているんじゃないか、女苑は...。

「無駄な体力使ったわ...。追加収入も得たし、さっさと行くわよ姉さん。」

「...えへへ...私も無駄にシリアスしちゃった...。」

「...なにそれ。バカなこと言ってないで早く立ってよ。」

「せなかいたいー」

「姉さんが勝手に壁になったんでしょ...破片抜くから...。」

痛い痛い、心も体も、痛い痛い。





 そんな私達の日常から数日数ヶ月たったある日、またもや私が村1つを貧しくしてしまっていた昼、私は誰とも知らない家で座っていた、だがそばには女苑は居なかった。誤解がないように言うと、呆れ飽きられたわけではなく、ただ単に外出しているだけなのだが、かれこれ1時間は帰ってきてない。用事の内容も聞いてない...もしかして本当に...?

「なに湿気た面してるのよ姉さん。」

「女苑ー寂しかったよーどこ言ってたのよー」

「くっつくなひっつくな、貧乏が伝染る感染る。」

「で、どこ言ってたの?」

私のそんな質問を待ってましたと、にやり笑い女苑は言う。

「『幻想郷』に行く。今度こそ私も姉さんも富を手に入れるわよ!」




















『幻想郷』

──...そこは人間、妖怪、霊、そして神が住まう世界。

──...そこは今『都市伝説異変』によって噂が具現化する。


















『完全憑依』

 他者が相手の身体を乗っ取ることが出来る『都市伝説』

そう...私と女苑が『都市伝説異変』を利用して具現化させたもの。

『幻想郷』で行われるライブを観ている無防備な客たちに、強制的に『完全憑依』をして巻き上げる。そして、邪魔するやつには私が取り憑いて勝運を含む全ての運を不運に変換し、敗北にへ導く完璧な作戦。富を巻き上げ、人々を不運にする「最凶最悪の姉妹」に敵はない──!!


と、思っていた。私も女苑も...それなのに...取り憑くはずの私が...今、私達の邪魔をしにきた『幻想郷』の妖怪賢者──八雲 紫(やくも ゆかり)に取り憑かれている。私がマスターで...紫がスレイブになっている!?そして、目の前にはこの幻想郷で幾度となく異変を解決してきた、巫女──博麗 霊夢(はくれい れいむ)がマスターとして居る...!?


「と、言うことは!?」

「え──?私が、スレイブに...?」

「はいはい、勝手に入れ替わらない。力が制御できない雑魚貧乏神をサクッと倒して異変解決させましょう。」

 八雲 紫には「境界を操る能力」がある。それにより本体側(マスター)取り憑く側(スレイブ)

境界を逆にした、とのこと。そんな...そんなことを...

「そんなことを出来るやつが居たなんて!」

「人を負かすしか能のない貧乏神、ささっと倒してね。霊夢。」

「あー...お終いだ。姉さん一人で勝てるはずがない。戦闘でも役立たずだし、根暗で貧乏くさくてしみったれで自分では何もしようとしないし、文句ばっかり言ってて何一つ良いところのない姉さん一人なんてー。大体ねぇ。一度も勝利の経験がない貧乏神が、よりによって異変解決の巫女と一騎打ちなんて...。もう絶望的だー。完全敗北だー!」


 ああ...そうかい。そうだよ、私だって好きで勝てないんじゃない。好きで稼げないんじゃない。好きで暗いんじゃない。好きで貧しいんじゃない。好きでなにもしないんじゃない。お前達が、女苑が何かをやれって言うならやってやるよ。


「──もう、許さないからな!!」


 私の貯めに貯め込んだ唯一の「貯金」である厄が爆発する!!

「な...なによ、この凄い負のオーラ...!」

「私は本気だ──!!本気でお前も!客も!幻想郷のやつらも!そして、女苑!!全員負けさせてやる、不運にしてやる、貧しさに怯えて死ね!!」

 幸せな人、不幸せな人、富がある人、貧しい人、優れている人、劣っている人、みんな平等に姉妹平等に──不幸(シアワセ)になりましょう。



















 後日談。

 私が負けた。私達姉妹だけが平等に負けてしまった。ただ、またあっちへこっちへ行ったりすることはなくなった。女苑は能力を制御できるから、更生出来るだろうと命蓮寺とやらへ。嫌われ者の私は、既に貧乏な博麗神社に、霊夢のもとに置かれることになった。


 「おまえはなにもできないなー」と妹以外にあまり言われたくないので、とりあえずと神社の掃除をしている。

「休憩入れていいわよ。お茶も淹れたし、今日は煎餅もあるから食べなさい。」

「わーい。あー...幸せ。」

「小さい幸せね...。」

 あー...女苑だけではなく、霊夢にまでしてもらってばかりもらってばかりなんて、私はやっぱり情けないなー、それでも良いやって思えてきたけど、けど

「ねぇ、霊夢。してもらってやってもらってばかりの迷惑かけっぱなしの私だけど、女苑にやれることって、本当にないのかな...。」

「...本当にってなによ。姉妹なんだから幾らでもあるでしょ。」

「How much?」

「違う。はっきり言ってしまうけど、他人から金を巻き上げて心の1つも傷まないアイツは、貴女と一緒で嫌われ者よ。今は更生中だけど。」

 でも、それはバレればの話。女苑の能力は気づかないわからないバレない...。

「バレないのはその過程でしょ?結果として周りが散財したのに、近くに富を得た人が居たらソイツがなんかしたってことになるじゃない。」

「...?」

「あー...良いわ。頁食うし。兎に角、妹がどんな悪いことをしても、汚いことをしても貴女は一度でも離れてやろうと思った?」

 ...それは今回を除いてない。私が原因で居ないほうがいいと考えたことはあるが、女苑が原因でなんてことはない。幾ら罵声を浴びても、こんな私と一緒に居てくれていたのだから。

「それよ。妹も一緒。『こんな金に汚い私と一緒に居てくれるのは姉だけだ』と。だから、貴女が出来るの能力を制御するなりして、また一緒にいてやることじゃない?...知らないけど」


 そうか...そんなことだったのか、私も女苑も金を得ることが幸せだと思っていたけれど、金が全てだと思っていたけれど、誰かがそばに居てくれることが幸せになるとは...お茶を飲むことの次に知らなかった。姉妹でしかできないこと、姉妹にしかできないことを私は女苑にしてやることが、お金を稼げない、勝負に負ける私が出来ることなんだ。



「はぁ...お金がほしい。」






ここまで読んでくれた方が居るかはわかりませんが、もし居るならばありがとうございます。

例大祭が終わり、新譜を聴き漁っていたところとあるサークル様の「今宵は飄逸なエゴイスト」のVocalアレンジを聞いていたところ書きたくなった内容です。

正直、誰でも思いつきそうだなとは思ったんですが、欲に負け下手な文章を書いてしまいました。


でも、楽しくかけたので、OKです。


依神姉妹は久々に気に入ったので、ほかもなんか書ければなと思います。

この姉妹の新刊待ってる!(例大祭全裸待機)


感想はここでもTwitterでも

悪評好評どちらも喜び糧にしますのでぜひ。


では、改めてありがとうございました。



@tohoproject0816

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