プロローグ1
「交渉と言うのは相手がしたくなった状態でするのが一番いい」と言うのをどこかで見たことがあったな、とこれを書いてて思い出しました。
『あなたに、他世界に行ってほしいのです』
ある日突然、光に包まれ不思議な空間に立っていた。
『その報酬として3つあなたたちの言うところの特典を与えましょう』
混乱の最中首をかしげながら思わず俺はつぶやいた。
「つまり、どういうこと?」
目の前にはなにも存在せず、声だけで相手の困惑が伝わってきた。
『・・・私の調べたところ、あなたはこういった作品を知っているのでは?』
俺の知っている作品で考えると今の状況はつまり、
「異世界転生・転移物?」
『あ、はいそうです。転移物になります』
ほっとしたような声は、そのまま俺に説明をつづけた。
『私は他世界において女神と言われるもので、願いを聞きそれを叶えるために私は召喚術を指示しました。私が適性を調べた結果あなたの世界においてあなたが最も適性が高く、わかりやすく言うと中世ファンタジー世界にに転移してほしいのです。そしてあなたに3つの特典を与えるべくこの空間に止めているのです』
自称女神の声はそう言い、俺に何を特典にするか聞いてきた。
「なるほど、特典ね。では 1この場での記憶を全て消す・2元の世界に返す・3今後一切俺とはかかわらない。で」
そう、願いを言った。
『解りました。では、願いをかなえましょう』
そして、俺は光に包まれた。
(異世界に行くチャンスを得たが、即断って帰ってきた)
END~
『って、困ります!その願いは聞けません』
光が収まり俺の願いは叶えられず、まだ不思議空間に立っていた。
「あ?何でも願いを叶えるって言ったのはそっちじゃねえか。とっとと叶えろ」
思わず苛立った俺は何も悪くない。
『ええ、何故ですか!?憧れの異世界ファンタジー転移物ですよ!?』
何故か勝手に【憧れ】等と変な価値観を押し付けて来る、自称女神に俺は説明を始める。
「中世と言っても色々あるがまず言えるのは、現代人が中世に行くのは自殺行為である。この一点だけだ。何故ならまず中世時代は基本人権が無く、貴族の気まぐれで平民は殺されることが多く変な政治利用のための宗教法によってその時代・地域の住民には問題ないのだろうが不潔だったり平民の生活に歯止めがかかっていたり等、様々な関係で生き難くなっているのが基本だ。日本では問題ない生水を飲むと言う行為が他の国において海外旅行者に止められているのは、その地域に住む人々には耐性があるが当然よそ者である海外からの旅行者には耐性が無い。それは異世界にも当てはまって当然と考えられ、行った初日にして重大な病原菌・寄生虫に感染してもおかしくは無く、ただそこに行くと言うだけで生命にかかわる。現に地球中世時代においては、下水道は無く糞尿を窓から地面へ垂れ流しネズミは繁殖しペスト等の疫病が流行している地域がある事を考えればそこに近い環境に行くことは、免疫力が低下している現代日本人に置いて死を意味する。これはどこの国どの時代にも当てはまり例えば日本、江戸時代では現代人において食用として適さない物を食べていたり、肥溜めから作られ整腸用と思われる糞酒と言う現代からすればあり得ない物が存在することから衛生環境の悪さが考察することもできる。現代ですら他国において価値観・常識・法律が違く、トラブルなどが起きるのに中世などはそれを上回ると思われる。それらの事を考えたならば【憧れ】などと言う言葉は当然なく、わざわざ現代と違いネット・テレビ下手すれば新聞すらなく生活に不自由するような場所へ行くなどと言う愚かな行為を考えることなく拒否するのは当然だろ?」
説明を終えた俺は「さあ、わかったらとっとと帰せ」と言うように腕を組み返答を待つ。
『え?あ、その、そ、そんな事はありません!以前もそちらの世界から何名か召喚されていますし生活に不自由することなく暮らせる筈です』
困惑する声に俺は当然ともいえる質問をする。
「それの証明はどうやってするんだ?」
『え?』
「だから、それらをどうやって今の俺に証明するんだ?」
『そ、それは』
話にならない。言えることは唯その一言。
「一応言っておくが、もし強制的に転移させようものならそちら側の得にすらならない事をやってやるし、利用される前に自殺してやる」
開き直り急に転移させらる前にくぎを刺しておく。
『そ、そんな事は当然しません。あ、あの行って見るだけでもいいからお願いします。気に入らなければ即帰還してもいいですから』
即帰還。その一言に俺は心が揺らぐ。当然魔法に憧れもあるしまだ見ぬ世界と言うのが面白いと言う事も知ってはいるが、デメリットがただただ高すぎる。
「そもそも、何故俺がやらなければいけないんだ?自分でやればいいだろう」
一般的に神とは全知全能であり、あらゆる願いを叶えることが出来あらゆる生命の頂点に立つ者。
それが何故一個人に頼るんだ。
『わ、私はそこまで力のある神ではないのです。知恵と祝福を司る者なのです』
はっきり言って全く納得できないが、これ以上話をしても無駄に時間がかかる可能性が高いと言う事だけは理解できた。
「特典は 1ありとあらゆる毒・中毒とされる症状の緩和が出来る・する能力 2口に入る程度の体積の生物を受け付けない・死亡させる能力 3ありとあらゆる才能の取得 4俺が死に瀕した時完全に回復し俺の世界に帰還させる事 この4つの特典をくれると言うのなら行ってもいい」
と言うよりも、これ以外取りようがないな。
『あ、あの特典は3つなのですが』
当たり前のようで当たり前ではない事を言って来る自称女神に対し、俺は当たり前のことを言う。
「そちらは俺に依頼をする側、俺はそちらの依頼を聞く側。それ以外に言いようがあるのか?」
『い、いやでも』
それでも抵抗をしてくる自称女神に俺は言う。
「じゃあ、それは取り消しでその前に行った願いで」
最低限叶えてもらわねば困る願いを聞けないなら、断るのは当然。
『そ、そんな』
何か情けない声が聞こえるが俺の答えは唯一つ。
「どっちでも俺は構わないんだけど?」
『うう、わかりましたけど、1と2と3の特典があまりにも、その』
先ほどの説明を聞いていなかったのか、理解できなかったのかわからないがもう一度説明する。
「1・2は当然何か物を食べるとき等にその地域の住民が平気だからと言って俺が平気ではない場合必要なもので3は1・2という向こうで生活するにあたって必要不可欠なもので潰れるから広義で取ったものだが、何か文句があるのか?中には当然言語を取得する才能・文字を理解する才能・魔法の才能・剣の才能等々様々な向こうで過ごすにあたって必要な物を含ませるんだが・・・もう一度聞くが何か文句があるのか?」
俺の真摯な説得にようやく納得したのか、
『うう、解りました』
と言ったので俺は満足し説明を続ける。
「そうか。ようやくわかってくれた所で神を名乗るのだから当然約束はたがえないな?3の才能は先ほど言った言語を取得する才能・文字を理解する才能・魔法の才能・剣の才能の他に、各種魔法・魔術・属性の取得の才能つまり、火・水・風・土・溶・氷・木・灼・雷・光・闇・時・幻・気・召喚・精霊・霊気・陰陽術・祝・呪・歌・無詠唱・詠唱短縮・武術・合気・古武術・忍術・スポーツ等少しでも存在する物作成可能と可能性がある物派生した物から、物の加工・工作・錬金・交渉・計算・逃走・地図などのマッピング3次元空間把握能力・覚える・忘れる・IQ・医療・構造の発想・発想の転換・才能を自覚する才能・才能を有効活用する才能・才能を封印・解放する才能・才能を創造し増やす等のものまでありとあらゆるものを含んでもらうぞ?」
『そ・そんな・・・』
何か行ってくる声に対し俺はにっこりと笑い、
「先ほど確かに俺は【解りました】と聞いたが?」
『いや、でも』
「そちらの事情は俺には関係が無い。嫌なら俺を返して他の人に頼めば?」
そもそも地球には70億人いるんだからまさか俺が1/70億の選ばれたものだとか信じられないし。
『無理なんです』
「は?」
『ですから無理なんです。日本を含め一部のアジア周辺からは貴方しか召喚出来ないみたいで』
「いや、地球全土で探せばいいだろ?」
効率の問題なのかは知らないが、何故アジア周辺だけ?と尋ねると予想外の答えが返ってきた。
『他の国の場合私が神だと名乗るだけで反発してくる者や、異世界にある宗教と対立したりするので神を信じていなかったり宗教に熱心ではない人の方がいいのです。そしてその筆頭が』
「日本か」俺が自称女神の言葉を引き継ぐと『その通りです』と帰って来る。
まあ、確かに俺は完全に無宗教だし、神・仏と言う人間に都合がいい設定よりも悪魔の方が信じられる派だ。
まあ、だからこそ先ほどから自称女神の事を全くと言うほど信じていないが、納得の話ではある。
「と言うか、俺の心でも読んだらどうなんだ?先ほどから俺が帰れるように無茶な願いを言っているのは分かっているだろ?」
『異世界人であるあなたに、与えることは出来るのですが奪うことは出来ないのです』
思考を読むと言う行為は奪う事ねぇ。
じゃあ思考誘導や洗脳などは問題なく出来るのではと思うしやられてる可能性もなくはないと思うのだが、今の段階で俺に有利過ぎる状態であり言った瞬間『あ、それいいですね』なんて言って実行されたら困る。
『願いは叶えますがその、3つめの才能ですがあなた自身に才能が全くない場合はその・・・』
「俺の可能性を引き上げるだけで、無から有を与えることは出来ないと?」
『はい』
先ほどの交渉は間違いなく脅しだったし交渉の才能が無いと言われれば納得ではあることから、妥協することにした、まあ異世界とやらに行ったとき不具合があれば暴れる気満々ではあるが、やはりこの場に呼ばれた時点で俺に権限が無い者も同然なのが痛い。
俺に有利に事が運ぶようやったつもりだが果たしてうまくいったのかどうか、交渉する気が無い者にとって、交渉の場に引きずり出された時点ですでに不利なのだから。
「ああ、向こうに行ったときにお前と話ができるよう場を整える等の事はしておけよ?」
『え?それは特典』
「に入るわけないだろう。なんで誰かと話すだけの行為を特別扱いしなければならないんだ?」
『あの、私女神』
「信じている訳がないだろう?お前自身が先ほど言った通りに」
その一言で切って捨てる。
弱気になり向こうが有利な立場だと思われるとまずいので最後まで強気に出たが、成果はあったかもしれない。
自称女神の恩恵?を好きなように使える可能性を作って置き、特典と思われる何かを受け取る。
そうして、俺は最初断った物の嫌々行くと言う代わりに良心的にもたった4つの願いだけで行くと言う善人にも程があるほど譲歩し、異世界に旅立ったのだった。
中世の状態を知れば知るほど、現代人が行くには厳しすぎると思うんですよね。
今回の神との会合に置いて主人公の勝利条件は当然帰還すること。
異世界に行った時点でどんな特典・報酬があろうと敗北。