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再会

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!


前回のあらすじ。

ケンジの体質が明らかになった。

 


 ウェンティートは森の中を迷いなく歩き、ベルムートたちは周囲を警戒しつつそれに付いて行く。

 しばらくすると視界が開け、ベルムートたちは湖へと出た。


 青空を映し日の光が煌めく水面と、生命力に溢れる木や草の瑞々しい様が安らぎを与えてくれる。


 そんな湖の前には2人の冒険者らしき女性がおり、ベルムートたちに気づいたようで振り返った。


「ん?」


 その内の1人にベルムートは見覚えがあった。


「あっ……!」


 アンリも気づいたようだ。

 顔見知りの人物だったことで、ベルムートとアンリはその2人の女性冒険者の元へと自然と足が向かった。

 それに連られて他の4人も付いて行く。


「こんにちは!」


 真っ先にアンリが2人の女性冒険者に向かって挨拶した。


「こんにちは。おや? あなた方は……」


 女性冒険者の内の1人が挨拶し、アンリとベルムートに気がついた。


「先日はお世話になりました」


 そしてその女性冒険者はアンリとベルムートに対してお辞儀した。

 隣にいるもう1人の女性冒険者はよくわかっていなさそうでぼーっとしている。


「知り合い?」


 エミリアが小声でベルムートに尋ねた。


「ああ。今挨拶した女性冒険者については都市サルドでオークに囚われていた所を助けたんだ。もう1人の方は知らないがな」


「ふーん……」


 エミリアはそれだけ言うと静観する姿勢を取った。

 接点のないニムリ、ウェンティート、ケンジもおとなしく様子を見ている。


「誰ー?」


 ぼーっとしている方の女性冒険者が首を傾げながらも、挨拶をした方の女性冒険者に尋ねた。


「そうね。まずは自己紹介からしましょうか」


 それを受けてベルムートとアンリに面識のある女性冒険者が言葉を発した。


「私はネアといいます」


 ネアと名乗った女性冒険者は、ストレートな黒髪に赤い目の20歳前半くらいの見た目で、長袖、長ズボン、革のブーツ、魔物の革鎧を身に着けている一般的な冒険者の装いをしており、持ち手まで金属で出来ている短剣くらいの大きさの鎌を腰に装備している。


「どーもービビですー」


 ビビと名乗った女性冒険者は、背筋は曲がっていないが、だらっと体の力を抜いて気怠そうにしている。

 ツインテールを更に2つに分けて4本にした金髪に眠そうな黒い目の20歳前半くらいの見た目で、長袖、長ズボン、革のブーツ、魔物の革鎧を身に着けている一般的な冒険者の装いをしており、投げるのにも使えそうな先端が鏃に似ている剣と同じ位の長さの持ち手まで金属の短槍を腰に装備している。


「ベルムートだ」


「わたしはアンリ!」


「エミリアよ」


「あたしはニムリだ」


「ウェンティートです」


「ぼ、僕はケンジです」


 ベルムートたちも名前を告げた。


「なんか知り合いっぽいけどー、どこでお知り合いになったわけー?」


 ビビがネアに尋ねた。


「ベルムートさんとアンリ以外は初対面だけど、ベルムートさんとアンリにはブライゾル王国の都市サルドでオークが壊滅した時にお世話になったのよ」


「あーあのドジ踏んだやつねー」


「……あれはどうしようもなかったのよ」


 ビビの歯に衣着せぬ物言いにネアは苦笑した。


「あの、2人はどうしてここに?」


 アンリが何か期待するような眼差しでネアとビビに尋ねた。


「私たちは……この辺りで取れる薬草を探していたんです」


「わざわざこんなところまで?」


 ネアの答えにエミリアが不思議そうに尋ねた。


「この湖は魔力が豊富だから、近くに効能が強い薬草が生えるんですよ」


 それに対してウェンティートが答えた。


「ええ、そうなんですよ」


 ネアが頷いた。


「確かに魔力が豊富なようだな」


 魔力眼で湖を確認したベルムートも頷いた。


「なんだーわたしたちと一緒じゃないのかー」


 密かに目的が同じじゃないかと思っていたアンリがちょっと気落ちした。


「えーと……あなた方はどうしてここに?」


 ネアはアンリの様子に首を傾げながらもベルムートに尋ねた。


「私たちはエルフの里に向かうところだ」


「にゃむ?」


「え? そうなんですか?」


 ベルムートの返答を聞いて、半分寝かけていたビビは変な声を上げて目を擦り、ネアは一瞬驚いた後問い返した。


「ああ。そこでこいつらを鍛えるつもりだ」


「……なるほど。それは大変ですね」


 ベルムートの話を聞いてネアは大きく頷いた。


「ねーもう疲れたー、はやく帰って寝たいよー」


 すると、することがなく暇を持て余しているビビがネアに訴え出した。


「はあー……ビビは大したことしてないでしょ?」


「ここまで来ただけでも大したことだよー」


「あんまり労力かけてないじゃない……」


 ネアは頭が痛そうにした。


「まあ、用は済んだし、これ以上ビビが駄々を捏ねると面倒くさいから一先ず帰りましょうか」


「やったー」


 ネアがさらりと毒を吐きながら苦笑しつつ告げると、ビビはそんなことはまったく気にせず、間延びした様子で帰れることに対して諸手を挙げて喜んだ。


「そういうわけで、私たちはこれで失礼します」


「しまーす」


「ああ」


「またね!」


 ベルムートとアンリに続いて他の面々も軽く挨拶を交わした。

 そして、ネアとビビは帰って行った。


「私たちも行きましょう。ここまでくれば里まであと少しですし」


「ああ」


 ウェンティートの言葉にベルムートたちは頷いた。


 ネアとビビと別れてからベルムートたちは湖から続いている川沿いを歩いてエルフの里を目指した。


「さすがにここまでくれば道はわかるな」


 見覚えのある景色に差し掛かりベルムートは呟いた。


 エルフの里が近いからか特に魔物と出会うこともなくベルムートたちは順調に進む。


「もうすぐ見えますよ」


 ウェンティートがベルムートたちに告げた。


 すると、突然木から何かが降りてきた。


「待て。ここから先はエルフの里だ。何か用か?」


 現れたのはエルフの男だった。

 警戒するエルフの男はいつでも抜けるよう剣の柄に手をかけ油断なくベルムートたちを見つめている。

 皆が驚き警戒している中、ベルムートとウェンティートは落ち着き払っていた。


「お久しぶりです。叔父上」


 ウェンティートが口を開いた。


「ウェンティートか?」


 エルフの男はそう呟くと警戒を半分解いた。


「知り合いか?」


 ベルムートがウェンティートに尋ねた。


「そうです。私の母の兄です」


「なるほど」


 ベルムートは納得した。


「私はエルフの兵士エルディアという」


 エルフの男エルディアは自らの名を告げた。


「ベルムートだ」


「わたしはアンリ!」


「エミリアよ」


「あたしはニムリだ」


「け、ケンジです」


 ベルムートたちも名乗った。


「おまえは帝国で暮らしているのだろう? なぜエルフの里に来た?」


 エルディアがウェンティートに尋ねた。


「私はこの男を里で鍛えてもらうために来たんですよ」


 そう言ってウェンティートがケンジを指し示すと、ケンジはおずおずと頭を下げた。


「なるほど。見るからに貧弱そうだ」


 エルディアはケンジを見ると眉を顰めた。


「そちらは付き添いか?」


「いや、私たちも鍛えてもらうために来たんだ」


 エルディアの質問にベルムートが答えると、アンリたち3人は頷いた。


「そうか。まあ、お前たちの方がそこの男よりは数段マシだな」


 エルディアはベルムートたちを見渡してケンジと比較しつつそう言った。


「とりあえず、目的は分かった。後のことは里で話をしよう」


「ああ」


 ベルムートたちが了承すると、エルディアは木の上で待機していた別のエルフを呼び出して、里に報告に行かせた。


「里までは私が案内しよう」


 ベルムートたちがエルディアについて行くと、大きな木が並んでいる場所が見えた。


 そして、だんだんと近づくにつれてその木の大きさが尋常じゃないことにアンリとエミリアとニムリとケンジが気づいた。


 今までの森の木とは一線を画する巨木だった。


 巨木の幹の太さは家一軒分はあり、高さは100mを超えていた。


 それがまるで巨大な柵のように何十本も並んでいた。


「すごい……!」


「でけぇ……」


「こんなに巨大な木があるなんて……」


「これがファンタジー……」


 エルフの里を見たことがない4人は圧倒されていた。


 そうしてベルムートたちはエルディアの案内でエルフの里に着いた。


 そこでは長い白いヒゲを生やした猫背のエルフの老人が待っていた。


「ウェンティートと他5名、連れて参りました」


「うむご苦労だった」


「はっ!」


 エルフの老人はエルディアに労いの言葉をかけた。


「久しぶりだなウェンティート。そしてようこそお客人方」


「ただいま帰りました長老」


 ウェンティートがエルフの老人に挨拶をする。


「久しぶりだなエルゴン爺」


 ベルムートは気さくにエルフの老人に声をかけた。


「ん? お主……誰じゃったかの?」


「ボケたのか? 私はベルムートだ」


「ベルムート? 言われてみれば似ておるが、見た目がまるで違うぞ?」


 (本来の姿から変えているのは色だけなんだが……)


 ベルムートは若干肩を落とした。


「本物か?」


「そうだ。リリィに会いにきた」


「……本物のようじゃな」


 ベルムートの発言を聞いたエルゴンは一瞬目を見開き納得した。


「知っているんですか?」


「ああ。この方は今のエルフの里をつくった恩人じゃよ」


 エルディアが質問すると、エルゴンが答えた。


「「「「「「ええ!?」」」」」」


 その内容にその場にいた全員が驚きの表情でベルムートを見た。


「えっ? それって200年以上前のことですよね?」


 ウェンティートが尋ねた。


「そうじゃ」


 エルゴンは頷いた。


「その時から生きているなら、あなたは長命種ってことですか?」


「ああそうだ。種族は秘密だがな」


 ウェンティートの質問にベルムートはあっさりと頷いた。


「そうだったんだ! 師匠すごい!」


 アンリは興奮した様子で目を輝かせた。


「まさか人間じゃなかったなんてね」


「どうりで強いわけだぜ」


 エミリアとニムリは疑問が解消されて納得の表情を浮かべた。


「何がなにやら……」


 ベルムートのこともエルフの里のこともよく知らないケンジは困惑した。


「そうだ、エルゴン爺、土産があるぞ」


 そう言ってベルムートは3体の蜂型の魔物の死骸を『空間倉庫(アイテムボックス)』から取り出した。


「おお!」


 声を上げたエルゴンはしげしげと魔物の死骸を眺めた。


「この辺では見かけない魔物だな」


「そうなのか? ここへ来る途中にいたんだが」


「ほう? 少し調べてみるかの」


 そう言ってエルゴンはエルディアに視線を向けた。


「エルディア、頼むぞ」


「はっ!」


 エルディアはエルフの兵士を連れて里を出た。


 エルゴンは蜂型の魔物の死骸を他のエルフに運ばせた。


「さて、お主らはここへ鍛えに来たのじゃったな」


「ああ」


「ちょうどよかったな。今この里には指南役が滞在しておるからの」


「指南役?」


「あそこにおるのがそうじゃ」


 エルゴンが指し示した先には、エルフの里では珍しい真っ赤な髪と瞳で褐色の肌をしたダークエルフの女がいた。


 その女の姿を目にしたアンリが大きく目を見開き思わず声を上げた。


「お母さん!?」


「え……アンリ!?」



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