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エルフの里へ

お久しぶりです。

天の聖杯のドライバーに選ばれたので遅くなりました。


前回のあらすじ。

勇者について手掛かりを得た。

 


「バルトルトさん強かったね」


「そうね」


「ほんとな」


「ああ。なかなかいい腕をしていたな」


 宿に戻ったベルムートたちは食事をしながらバルトルトとの模擬戦について話していた。


「わたしあっという間に負けちゃった」


「アンリは攻撃が素直過ぎたな。これからは戦いにおける駆け引きも学ばないとな」


「わかった!」


 ベルムートの言葉にアンリは素直に頷いた。


「私も負けたままではいられないわ。アンリ一緒にがんばりましょう」


「うん!」


 エミリアに声を掛けられたアンリは元気に返事をした。


「エミリアはよく戦えていたと思うが」


「決着は武器のせいとはいえ、攻めきれなかったのは事実だし、私もまだまだよ」


 エミリアは自分の実力不足を実感しながらも強くなることへのやる気を漲らせてベルムートに笑みを浮かべた。


「ニムリは小柄なのにバルトルトさんと力で拮抗しててすごかったよ」


「そうね。驚いたわ」


「ドワーフだからな。昔から親父の手伝いで鉄やら木材やら運んでたし、力は強いぜ」


 アンリとエミリアに褒められたニムリは力こぶを作った。


「まあ、でもリーチの短さがどうにもなー」


 ニムリは口を尖らせた。


「何か対策が必要だな」


「そうだな」


 ベルムートの言葉にニムリは頷いた。


「3人ともそれぞれ課題がみえたな」


「うん」


「そうね」


「そうだな」


「課題を克服すれば、お前たちはさらに強くなれるだろう。そこで、ちょうどいいところがある」


「ちょうどいいところって?」


 アンリが尋ねた。


「エルフの里だ」


「それって、勇者が向かったって場所だよね?」


「ああ」


 アンリの言葉にベルムートは頷いた。


「なるほど勇者が向かった場所……そこに何かあるのね?」


「そうだ。エルフの里はエルフを鍛えるために特別な造りをしている。勇者は自らを鍛えるためにそこへ向かったのだろう。そこでお前たちも鍛えれば今よりも強くなれるはずだ」


「なるほどね」


「それはいいな」


「わたしも鍛えたい!」


 エミリアは納得し、ニムリは笑みを浮かべ、アンリは目を輝かせた。


「でも、私たちまで押し掛けて鍛えてくれるかしら」


「エルフの里には知り合いもいるし、なんとかなるだろう」


「曖昧なところが気になるけれど……行く価値は高いわね」


 ベルムートの答えを聞いて、エミリアは少し不安を抱きつつも大きく頷いた。


「エルフの里に行くことに問題はないな?」


 ベルムートが確認を取ると、アンリたちは皆頷いた。


「ねえ師匠、エルフの里へはいつ向かうの?」


「お前たちの準備が整っているなら、明日には行けるだろう」


「それなら問題ないけど、場所はわかるの?」


「そういえば、ここからエルフの里までどうやって行くのかは知らないな……行ったことはあるんだが……」


 ベルムートはアゴに手を当てた。


「どうすんだよ?」


「バルトルトさんに聞いておけばよかったね。また聞きに戻る?」


「さすがにそれは恥ずかしいから遠慮したいわね」


 アンリの発言にエミリアは苦笑した。

 その時、ベルムートが何かに思い当たった。


「そういえば、こういうときに頼りになりそうなやつがいたな」


「誰?」


「それは――」



 ◇ ◇ ◇



 次の日。

 朝食を済ませたベルムートたちは帝都を出入りする門へと向かった。


「いたな」


 門の近くでベルムートは探し人を見つけた。


「少しいいか?」


「おやおやどうされましたかな?」


 ベルムートに声を掛けられたマイケルは笑顔で応対した。


「ああ、実は教えてもらいたいことがあってな」


「私にわかることでしたらお答えいたしますよ」


「ここからエルフの里へはどうすれば行けるかわかるか?」


「エルフの里ですか。それでしたらわかります」


「「「おおー!」」」


 アンリたちは感心した。


(やはり知っていたか)


 ベルムートは自分の予想が当たったことに満足した。


「私が知っているルートは2つあります。1つは、少し時間はかかりますが比較的安全なルート。もう1つは森をつっきるルートがございますが、こちらは少々危険が伴います。どちらがよろしいですか?」


「森をつっきるルートで頼む」


「わかりました」


 マイケルは帝都周辺の地図を取り出した。


「では、帝都を出ましたらまずはこの森を北東へと進んでください。歩いて3日ほどすると湖があるので、そこから東にある川を下るとエルフの里へと辿り着きます」


「そうか。詳しいな」


「エルフのお客様もいらっしゃいますので、いろいろと知る機会に恵まれました」


「なるほどな。礼を言う」


「いえいえ」


 マイケルは地図を仕舞い、ベルムートはマイケルに情報料を支払った。


「ではな」


「ありがとうマイケルさん!」


「助かったわ」


「ありがとな!」


「またのお越しをお待ちしております」


 マイケルに別れを告げたベルムートたちは帝都を出ると、北東の森の中へと入っていった。


 ◇◇◇


 ベルムートたちが森に入って2日が経った。

 魔物との戦闘が度々あったが、今のアンリたちでも問題なく戦えるレベルで、ベルムートたちの進行は至って順調だった。


 繁殖期で気が立っている魔物が襲ってくるが、そういう魔物は不利だと悟るとすぐさま撤退していくことが多かった。

 それがスタンピードが起こる中で生き残ってきた魔物たちの処世術なのだろう。


 今回ベルムートたちは、できるだけ早くエルフの里に行こうとしていたので、撤退する魔物を追いかけたりはしなかった。


 撤退すると見せかけて群れで襲うという罠の可能性もゼロではないだろうという判断を下したというのもある。


 まだ湖は見えないが、アンリたちの疲労はそれほどなく、余裕を持って進んでいる。


「ん?」


 先行していた眷族の灰色の鳥が何かを見つけたようで、ベルムートの元へと戻ってきた。


「どうやら、この先で誰かが魔物と戦っているようだが……迂回するか? 行ってみるか?」


「首を突っ込まない方がいいんじゃないかしら?」


「だが、こんなところにいるんだ。エルフかもしれない。エルフなら、今進んでいる方向が本当にエルフの里へと通じているのか確認できるだろう」


「そっか! ついでに、エルフの里へ案内してくれるかもしれないね!」


「マイケルの情報が正確かどうか、あたしたちじゃ判断できないしな」


「確かにそうね。まあ、エルフに嘘をつかれる可能性もあるけれど、それはもう考えても仕方がないわね」


 アンリたちは迂回せずにその人物のところへと行く方向に傾いてきた。


「でも、すぐに接触するのではなくて、少し様子を窺いましょう」


「そうだな」


 エミリアの提案で、ベルムートたちはひとまず様子を見てからどうするか決めることになった。


 灰色の鳥の先導にベルムートたちが付いていくと、何かがぶつかる音が聞こえた。

 音の方へと進み、やがてたどり着いたベルムートたちはそっと木の陰から様子を窺った。


「これは……?」


 そして、ベルムートは困惑した。


「あれ?」


「え?」


「ん?」


 アンリたちも戸惑いの表情を浮かべた。


 ベルムートたちが見た光景は、尻餅をついてガクガクと震える男とその男を背に庇い盾を構えた女騎士が魔物の攻撃を防いでいるところだった。



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