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帝都

Vtuberおもしろいよなぁ




 3頭の馬で帝都への道を駆ける。


 地図を持つエミリアを先頭にして、その後にベルムートとアンリがついている。

 ベルムートの後ろに乗っているニムリは、アンリとこれまでの旅について楽しそうに話している。


「へー、だから一緒に行動してるんだ」


「そうなの。師匠は命の恩人ってだけじゃなくて、わたしにいろいろ教えてくれるの!」


 だいぶ道幅が広くなってきた。

 そろそろ人の住む領域が近づいているのだろう。

 ちらほらと人を見かけるようになってきた。

 都市ドルディグではあまり見かけなかった冒険者の姿が多く見られる。


「見えたわね」


 エミリアが呟いた。

 ベルムートは冒険者たちから視線を移した。


「あれが帝都か」


 人の集まる向こうに、自然に抗うかのように聳え立つ高い壁が見える。

 当然壁に阻まれて壁の内側にあるであろう街並みは見えない。

 壁の周辺の木の高さからすると、メイガルド魔導帝国の帝都の城壁は、ブライゾル王国の王都の城壁と比べて高いようだ。

 おそらく空を飛ぶ魔物を警戒しているのだろう。

 城壁の上にはバリスタがいくつも設置してある。


「おっきい壁だね」


「久しぶりに見たけど、やっぱでかいな」


 アンリとニムリはそれぞれ驚きを含んだ声を漏らした。


 ベルムートたちが近づくと、帝都の入口では入場する人の列が出来ていた。

 馬から下りたベルムートたちは、その列に並んだ。

 周囲を見渡すと、商人やその他の人の姿も見えるが、やはり冒険者が圧倒的に多い。

 これだけの冒険者が必要なほど帝都近辺では魔物の数が多いのだろう。


 それと、遠目ではわからなかったが城壁はかなり分厚いようだ。

 建物ひとつ分くらいの分厚さがある。

 それだけでなく、城壁には魔法陣がふんだんに使われていて、強度の底上げと魔法耐性がついており、かなり頑丈な造りになっている。

 おまけに人ひとり貫けるほどの大きな棘も生えている。

 壁に体当たりしてくるような魔物はひとたまりもないだろう。

 かなりの徹底ぶりだ。


 門は普通の扉のように開くのではなく、吊り下げられた分厚い壁を上下に動かして開閉する仕様になっている。

 今扉は上げられたままだが、魔物が来たらすぐに門が塞がるようになっているようだ。


 そうして城壁を観察している内にベルムートの順番が来た。


「あんた冒険者か?」


「ああ」


「冒険者プレートを見せてくれ」


 ベルムートは冒険者プレートを門番に見せた。


「Cランクか、なかなかだな。通行料はいらない、入っていいぞ」


 冒険者プレートを門番から返してもらい、ベルムートは問題なく帝都に入ることが出来た。

 後に続いてアンリたちも無事に帝都に入れた。


「着いたわね」


 エミリアはそっと一息ついた。


「ここが帝都かー」


 アンリは物珍しそうにキョロキョロと周囲を見回している。


 街は人が多く活気がある。

 冒険者の数が多いからか、冒険者をターゲットにしているとわかる商品が多数あり、冒険者に積極的に話しかけて売り込みをしている商売人が大半だ。


「半分くらいうちの都市に冒険者よこしてくんねぇかな」


 ニムリが唇を尖らせながらぼやいた。


「そうだね」


 アンリも頷いた。

 この様子だと、都市ドルディグに冒険者を集めるのは難しいかもしれない。

 注目を集めるような大きな出来事でもない限りは。


「さて、これからどうするんだ?」


 帝都に来たのはいいが、何をするのかベルムートはエミリアから聞かされていなかった。


「ひとまず宿を探しましょう」


「わかった」


 エミリアの返答によって、とりあえずの方針は決まった。


「だが、宿の場所がわからないな……その辺りの人に道を聞いてみるか」


「おやおや? 何かお困りですか?」


 ベルムートが行動に移そうとしたその時、1人の男が話しかけてきた。


「誰だ?」


「私はこの帝都のガイドをしておりますマイケルと言います」


 ベルムートが訝しみながら尋ねると、男は何気ない感じでさらりと答えた。


 マイケルと名乗った男は、きっちりとした服装で、清潔に身なりを整えていた。

 髪型も寝ぐせひとつなく、かっちりとしている。

 いかにもできる商人といった佇まいだ。


「ガイド?」


「はい。この帝都では再開発が盛んに行われていて、道も建物もすぐに変わります。そのため、この都市の地理を把握している私どものような案内人が、帝都に訪れる人々や帝都に住む人々のサポートを行っております。もちろん、見返りに金銭を頂いてはいますが」


「なるほど」


 街並みが変わるのであれば、こういう職業の者は必要だろうとベルムートは納得した。


「つまり、お前は自分を売り込みに来たというわけか」


「左様です」


 ベルムートの言葉に、マイケルは笑顔で頷いた。

 ベルムートの見たところマイケルは純粋にガイドを商売として捉えているようで、悪意はなさそうだった。


「どうする?」


 ベルムートは隣で話を聞いていたエミリアに尋ねた。


「お金にはまだ余裕があるわ。頼んでみましょう」


「わかった」


 闇雲に動くよりは効率はいいだろうし、ベルムートとしても問題ないと判断した。


「アンリとニムリもそれでいいか?」


「うん!」


「おっけー」


 ベルムートが聞くと、アンリとニムリも頷いた。


「ガイド、よろしくお願いするわ」


「はい、ありがとうございます」


 エミリアが代表して頼むと、マイケルは綺麗なお辞儀をした。


「じゃあまずは、すぐには移転しない宿で、馬が預けられて4人が泊まれるところに案内してもらえるかしら?」


「あと! ごはんがおいしいところ!」


「それは大事だな!」


 エミリアの注文に、追加してアンリとニムリが声を上げた。


「ふふふ。かしこまりました。では、馬を連れてきますので少々お待ちを」


 そう言って一旦離れたマイケルは、すぐに自分の馬を連れて戻ってきた。

 そして、ベルムートたちもそれぞれの馬に乗り、マイケルに先導してもらいながら宿まで案内してもらった。



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