修理完了
前回のあらすじ。
新しく魔法を教えた。
その後2日間、アンリとエミリアは魔法の練習をし、ベルムートはその指導をした。
アンリとエミリアの新しい魔法は、まだまだ改善の余地はあるがどうにか戦闘中にも使用できるくらいには仕上がった。
その翌日。
剣が直ると言われていた予定の日になったので、ベルムートたちは鍛冶屋に向かった。
「おう来たか。バッチリ直しておいたぞ」
そう言ってドリンは剣を3本机の上に並べた。
ベルムートたちは剣を手に取って状態を確かめた。
「すごい! 新品みたい!」
「腕がいいのね。細かい傷まで直ってるわ」
「いい仕事をするな」
3本の剣は驚くほど見事に直っていた。
「へへっまあ当然だな」
ベルムートたちが口々に褒めると、ドリンは照れたように笑った。
「それじゃ、ちょっくら庭で素振りして違和感がないか確認してくれ」
「ああ」
ドリンに案内されて店の中を通り、ベルムートたちは裏庭に案内された。
裏庭はそれなりに広く、地面は草もない平らな土になっており、試し切り用の丸太や大きめの石が置いてあった。
これなら模擬戦も行えそうだなとベルムートは思った。
「まずは私からね」
エミリアがベルムートたちから距離を取った。
エミリアが細剣の柄を握りこむ。
手に吸い付くような感覚で、今までよりもよく手に馴染むとエミリアは感じた。
そしてエミリアは、実際に細剣を振って重心や、攻撃の際の柄の握り具合を確認していく。
「はぁっ!」
ヒュッ!と風切り音を立てながら細剣が流れるような動作で次々に振り抜かれる。
「なかなか様になってるじゃねぇか」
エミリアの剣捌きを見て、ドリンがニヤリと笑って褒めた。
「次は魔力を流してみろ」
「ええ」
ドリンに言われた通り、エミリアが細剣に魔力付与する。
すると、前使っていた時に感じていた抵抗がまったくなくなり、嘘のようにすんなりと細剣に魔力が通ることにエミリアが驚いた。
「これ、すごいわ!」
エミリアが喜々として細剣を振り回す。
「そろそろいいか?」
ベルムートが声をかけると、エミリアはハッとしてベルムートたちのところに戻ってきた。
「つい夢中になってしまったわ」
「そうかい。それで、何か問題はなかったか?」
「そうね……ほとんど完璧といっていいわね。強いて言うなら、重心をもう少し剣先に寄せて欲しいといったところかしら」
「おう、わかった」
エミリアと会話していたドリンが頷いた。
「次はわたしだね!」
アンリが前に出て、ベルムートたちから距離を取った。
まずは鋼鉄の剣からだ。
「やああ!」
アンリが上段から鋼鉄の剣を思いっきり振りきり、風切り音が鳴る。
はた目から見ていても、明らかに今までよりも剣速が上がっている。
「嬢ちゃんもなかなか筋が良いな」
ドリンが少し驚きながら言った。
「様になってきたわね」
エミリアは満足そうに頷いた。
「どうだアンリ?」
「すごく振りやすい!」
ベルムートが聞くと、アンリは答えながらもキラキラとした瞳で剣を振っている。
「よし、次は魔力を流してみろ」
「わかった!」
ドリンに言われて、アンリが鋼鉄の剣に魔力付与した。
すると、勢いよく魔力が流れて鋼鉄の剣が魔力付与された。
「すごい!」
アンリがはしゃぐ。
「じょ、嬢ちゃん! やめだやめだ!」
すると、突然ドリンが声を荒げてアンリを制止した。
「え?」
「早く魔力を流すのを止めるんだ嬢ちゃん!」
キョトンとするアンリにドリンが慌てて指示を出す。
アンリはすぐに魔力付与を解除した。
「その剣を貸してくれ」
「うん」
アンリがドリンのもとまで近づいてきて、ドリンに言われた通りに鋼鉄の剣を渡した。
ドリンは真剣な表情で鋼鉄の剣を検分する。
「やっぱりか……こりゃ、嬢ちゃん魔力流しすぎだな。剣が少しへたってるぞ」
「ええ!?」
ドリンの言葉を聞いたアンリが声を上げた。
「なるほど。止めた理由はそういうことか」
ベルムートは合点がいった。
「それで、直るのか?」
ベルムートはドリンに尋ねた。
「ああ、それは大丈夫だ」
「そうか」
「しかし、あんだけ剣に魔力を流してたんなら、中身がスカスカになるのも当然だな」
ドリンが苦笑いする。
「やはり魔力付与は剣の寿命を著しく削るな」
ベルムートは魔力付与の欠点を強く認識した。
「今までと同じ感覚で魔力を流したらすぐにまた剣がダメになってしまうぞ。これからは少し流す魔力を抑えないとな」
「うん、わかった!」
ドリンが注意すると、アンリはこれから気を付けようと返事をした。
「それで、その鋼鉄の剣だが、何か違和感とか要望とかあるか?」
「ないよ! とっても満足!」
「そいつぁ良かった」
アンリが答えると、ドリンはニカっと笑みを浮かべた。
「次はミスリルの剣だな」
ベルムートはアンリにミスリルの剣を渡した。
「わかった!」
ミスリルの剣を受け取ったアンリはまた前に出て、ベルムートたちから距離を取った。
「やああ!」
アンリが剣を振る。
「特に問題はないようだな」
「みたいだな」
ベルムートの言葉にドリンは同意した。
「魔力を流してみろ」
「わかった!」
ドリンに言われて、アンリがミスリルの剣に魔力付与した。
アンリは先ほどよりも流す魔力の量を減らしているが、1秒と経たずに剣全体に魔力が行き渡った。
「さっきよりもすごい!」
「そりゃあ、その剣はミスリル純正だからな」
アンリが興奮して声を上げると、ドリンが当然といった風に言葉を漏らした。
ミスリルは魔鉄ほど柔軟な魔力操作はできないが、そこらへんの金属よりも魔力の浸透率と切れ味はかなり優れている。
一通り試し終わったアンリがベルムートたちのもとに戻ってきた。
「何か違和感とかはなかったか?」
「全然!」
ドリンの質問に、額に汗したアンリが満面の笑みを浮かべて答えた。
「そうか! ならよかった」
ドリンもつられて笑みを浮かべた。
「よし。最終調整するから、俺に3本とも剣を預けてくれ」
「全部じゃなくてもいいと思うが?」
ドリンの言葉を聞いて、ベルムートは疑問に思ったことを尋ねた。
他の2本はともかく、ミスリルの剣はもう直し終わっているといっていい状態だ。
「なぁに、今日消耗した分も直しとくだけさ」
「なるほど」
ドリンの言葉にベルムートは頷いた。
どうやらドリンは完璧主義らしい。
ベルムートたちは3本の剣をドリンに渡した。
「よし、じゃあ直しておくからまた明日来てくれ」
「ああ」
「またね」
「よろしくお願いするわね」
そして、ベルムートたちは鍛冶屋を後にして宿に戻った。
次の日。
ベルムートたちが鍛冶屋に剣を取りにくると、剣が昨日と比べてさらに洗練されていた。
再び裏庭で軽く素振りをしたエミリアとアンリも満足そうにしていた。
「いくらだ?」
「ん? ああ、そうだったな……まあ、金貨3枚でいいぞ」
ベルムートが聞くと、ドリンが適当に答えた。
「以前聞いた時は3本の剣の修理費に最低で金貨3枚、最高で金貨5枚だと言っていたはずだが……。いいのか?」
「ああ。久しぶりに腕が鳴ったからな。少しくらいならまけてやるよ」
ベルムートが尋ねると、ドリンが快活に笑って答えた。
「わかった。礼を言う」
ベルムートは金貨3枚をドリンに渡した。
「これで坑道に行けるな」
ベルムートは呟いた。
「ん? なんだあんたら? 客か?」
するとそこへ、店の奥からドワーフの少女が出てきてベルムートたちに尋ねてきた。




