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鉱山都市ドルディグ

ムーン集めたり風船割ったりしていたので投稿遅れましたすみません。

今回短めです。


前回のあらすじ。

フッ……我が灼熱の肉体を以てして貴様らを焼き肉にしてやろう!

フッ……決まったな……我が拳を受けてもはや立ってはいられまい……。

ん……? な! た、立ち上がっただと!? い、一体何が起こった?

うわ!? 雨!? てか俺の体から湯気が出てるんだけど!? ちょ、前見えないよ!

あれ? それになんだか体の熱が下がっているような……。

え? ちょ、ちょっと待って! こいつら強くない?

フッ……なかなかやるな貴様ら……今日のところはこれくらいにしてやろう……。

って、壁が邪魔で逃げれないんですけど!? しかもこの壁おそろしく頑丈なんだが!?

あ、やべ。これ詰んだわ。



 王都を出て5日後。

 帝国の鉱山都市ドルディグに着いたベルムートたちは、荷物の検査を受けて、税を払って都市の中へと入った。


「最初は鍛冶屋に行くのよね?」


 エミリアにベルムートに尋ねた。


「いや、まずは冒険者ギルドに行って、魔物の素材を換金しようと思う」


 この都市は、王国に近く交易も盛んだからか、都市に入る際に問題なく王国の金が使えたが、これから先のことを考えると、一応帝国の金を持っておくにこしたことはないとベルムートは考えた。

 まあベルムートとしては単純に『空間倉庫アイテムボックス』の中を整理してしまいたいというのと、鍛冶屋に行くのだから手持ちの金を増やしておきたいという意味合いの方が強いようだ。

 その辺エミリアは抜かりなく、王国を出発する前に帝国の貨幣をあらかじめ十分な額用意していた。


「わかったわ」


 ベルムートの意向にエミリアは頷いた。


「わかった」


 アンリも特に異論はないようだったので、ベルムートたちは門番に教えてもらった道を進み冒険者ギルドに向かった。


「なんか皆暗いよ?」


 キョロキョロと物珍しそうに辺りを見回していたアンリが呟いた。


「そうね」


「確かにな」


 エミリアとベルムートもアンリの言葉に同意した。

 

 都市ドルディグは、大都市にしては、ブライゾル王国の王都や都市サルドに比べて、圧倒的に人が少なく活気がなかった。


「帝国はあまり人口が多くないのか?」


「そんなことはないと思うけれど……」


 ベルムートの言葉を聞いて、エミリアは思案下な顔をした。


「ついでにそのことについてギルドで聞いてみるか」


「そうね」


 ベルムートの考えにエミリアは頷いた。


 大通りなのに人混みのない道を行き、ベルムートたちは冒険者ギルドに着いた。


「ん?」


 馬を預けて、ギルドの中に入ったところで、思わずベルムートは首を傾げてしまった。


 冒険者ギルドはがらんとしていた。

 それなりに建物も立派なだけに、余計にそう感じる。


 ぽつぽつ冒険者の姿も見えてはいるが、やはりどことなく寂ている。

 田舎ならともかく、大きな都市にしては様子がおかしかった。


 ベルムートは少し歩いて依頼ボードを見てみたが、依頼の数が少ないというわけでもなかった。

 ただ貼りだされてから1週間以上経っている依頼がいくつかあった。


「内容を見てもそれほど難しい依頼と言うわけでもないのに放置されているのはなぜだろうか?」


 ベルムートは首を傾げた。


「なんか人が少ないね」


 アンリは人が少ないことを多少疑問に思い言葉を漏らした。

 ただ、アンリはこの都市ではこの状況が普通なのだろうと受け入れていた。


「変ね……」


 アンリとは逆にエミリアはこの状況を相当訝しんでいた。


 ベルムートはそんな2人を連れてとりあえずギルドの受付に向かった。


「素材の買い取りをお願いしたいのだが」


「あ、はい……」


 元気のない受付嬢が返事をする。

 これが帝国では標準なのかと一瞬ベルムートは思ったが、おそらく違うだろうとベルムートは思い直した。


「素材の方はどちらにありますか……?」


「少々数が多いので、ここには出せない。倉庫まで案内してくれないか?」


「そうなんですか……でしたらこちらへどうぞ……」


 ベルムートたちは、席を立った受付嬢の後についていく。


 ベルムートたちは受付嬢が開けた扉を入り、倉庫に着いた。

 だが、倉庫の中には物が少なく、伽藍堂だった。


「えー……」


 アンリはガッカリした。

 アンリは、物がたくさん積まれているのを期待していたようだ。


「少なすぎるわね……」


 エミリアは倉庫を見渡してますます怪訝な表情を深めていた。


「デリンさーん……魔物の素材を買い取って欲しいって冒険者を連れてきましたー……」


「おう、わかった今行く」


 受付嬢が声をかけると男の声がした。

 ほどなくして声の主が現れた。


「で、魔物の素材はどこだ?」


 彼はドワーフだった。

 髪も髭も毛が太く、背はアンリと同じくらいだ。


 ベルムートたちが手ぶらなところを見て、彼は質問してきたようだった。


「ああ、今から出す」


「出す?」


 ベルムートの言葉にドワーフのデリンは首を傾げた。


 ベルムートは気にせず『空間倉庫アイテムボックス』から熊型の魔物やその他の魔物を大量に出した。


「へ……?」


「な、なんだ!? ど、どうなってやがる!?」


 それを見た受付嬢はポカンと口を開けて、デリンは慌てた。


「私は魔法で物を仕舞っておけるんだ」


「ええ……?」


「そ、そいつはすげぇな……」


 ベルムートが説明すると、受付嬢とデリンは驚きを露わにした。


「今更だけど、その魔法はあまり他人に見せない方がいいと思うわよ」


「確かにエミリアの言う通りだが、素材の買い取りを頼むのだから、ギルドに対して秘密というわけにもいかないだろう」


「うーん……まあ……そうね……」


 エミリアは完全に納得したわけではないようだが、一応ベルムートの言い分に理解は示してくれたようだ。

 必要以上に他人に『空間倉庫アイテムボックス』を見せることはしないが、必要であれば積極的に活用したいとベルムートは思っている。


「それで、買い取ってもらえるのか?」


 ベルムートはデリンに聞いた。


「あ、ああ……ちょっと見させてくれ……って、こいつはヒートベアーか……なかなか厳ついもん仕留めてんじゃねぇか」


 デリンはそう言ってしげしげと熊型の魔物を眺めてから、他の魔物にもざっと目を通していく。


 アンリは受付嬢と何やら話し込んでいる。


「てっきり素材は荷馬車に積んでると思っていたのに、あんな魔法があるのね……」


「師匠はすごいでしょ!」


「そうね……。でも、帝国の魔導士もすごいわよ……?」


「魔導士って?」


「ん……? お嬢ちゃん知らないの……? 帝国の魔法使いは魔導士って呼ばれてるのよ……」


「へー!」


 アンリと若干元気を取り戻した受付嬢の会話は割と弾んでいるようだ。


(ふーむ……魔法使いをわざわざ名前を変えて魔導士と呼ぶ意味がわからんが……何か理由があるのだろうか?)


 ベルムートが考え事をしていると、一通り見終わったようでデリンがベルムートの方に戻ってきた。


「量は多いが、今日中に査定は終わるだろうから、明日また来てくれ」


「随分と速いな」


「……暇だからな」


 ベルムートが素直に感じたことを述べると、デリンは自嘲気味に答えた。

 ベルムートの言葉が皮肉に聞こえたようだ。

 もちろん、ベルムートにそんな意図はなかった。


「ところで、この都市には活気がないようなんだが、いつもこうなのか?」


 ベルムートの質問に、デリンと受付嬢は顔を見合わせた。

 どちらから話を切りだすか、相談しているようだ。

 ややあってデリンが口を開いた。


「いや、そうではない。実はな、一月ほど前から坑道にゴーレムが出現するようになったんだ。その影響で、この都市から人が離れて行ってしまってな」


 デリンの話しによると、この都市は質の良い武器や防具を作っていたそうだが、ゴーレムのせいで鉱山に立ち入れなくなってしまって武器防具の製造が容易にできなくなってしまったらしい。

 材料の輸入をして武器や防具を製造することはできるが、元々高いのにさらに値段が高騰してしまって買い手がつかないそうだ。


「ゴーレムを倒さないのか?」


「もちろん倒したさ。だが、次の日には何事もなかったかのようにまたゴーレムが坑道の中を徘徊しているんだ。何度も何度も倒しているが、キリがなくてな。その内人が離れて行って、今では地元のやつらしか残っていない」


「なるほどな」


 デリンの話を聞いて、ベルムートは頷いた。

 ちらほらとギルド内にいた冒険者たちは、この都市に愛着がある地元の冒険者だったようだ。


(しかし、妙だな……。ゴーレムは魔物とは明らかに違う……人工の魔法人形だ。つまり、作り手がいるはずで、何者かが坑道を占拠してこの事態を引き起こしているということになるんだが……)


 ベルムートは坑道に現れたゴーレムに対して作為的なものを感じていた。


「何か手立てはないの?」


「ないな。一応帝都のギルドには救援を要請してはいるが……あまり芳しくない……」


 エミリアが尋ねるも、デリンはお手上げだとでも言うように肩を竦めた。


「どうして?」


「帝国では毎年この時期、繁殖期なのかどこも魔物の数が増えるんだ。だから、多くの冒険者がそっちに駆り出されてしまうのさ」


「そう……」


 デリンの話を聞いたエミリアが難しい顔で考え込む。


(しかし、話を聞くに鍛冶屋に武器の整備と修理を頼むのは難しいかもしれないな。まあ、聞くだけ聞いてみることにしよう。断られたらその時はその時だろう)


 ベルムートはデリンにダメ元で聞いてみることにした。


「話は変わるが、おすすめの鍛冶屋と宿屋を教えてくれないか?」


「ん? それなら……こことここだな。こっちが宿屋でこっちが鍛冶屋だ。いや、鍛冶屋は一応あといくつか場所を教えておこう。今は店を閉めているところも結構あるからな……」


 ベルムートが会話の流れを切って尋ねると、デリンは地図を広げて意外にもすんなりと教えてくれた。

 ベルムートは地図を見てすぐに覚えてしまったが、一応メモも取っておいた。


「助かる」


「このくらいは仕事の内さ」


 ベルムートが告げると、デリンが笑って答えた。


「では用も済んだのでお暇しよう。2人とも行くぞ」


「わかったわ」


「あ、うん!」


 ベルムートはアンリとエミリアに声をかけた。


「私も仕事に戻りますね……」


「おう」


 受付嬢はデリンに声を掛けてからベルムートたちと一緒に倉庫を出た。


「またねクラーラさん!」


「またねアンリちゃん……」


 アンリと受付嬢のクラーラはお互いに手を振って別れを惜しんだ。

 そして、ベルムートたちはギルドの外へと出て、デリンに教えてもらった鍛冶屋に向かった。



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