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冒険者登録

前回のあらすじ。

エミリアたちは、なんかやばげな黒い曇と戦闘跡地を見つけた。



 交易都市サルドは、高い城壁に囲まれた大都市だ。

 多くの商人が行き交い、それを護衛する冒険者の姿も見える。


 都市サルドに入ってすぐに、ベルムートたちは冒険者登録をするために冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドの建物は非常に立派で大きく、雑多な建物が立ち並ぶこの町の中でもかなり目立っていた。


「おっきいね」


「そうだな」


 冒険者ギルドに着いたベルムートたちは、外にある厩舎に馬のシェリーを預けてから中に入った。

 すると、中にいた冒険者たちの視線がベルムートたちに向いた。


「ん? 子連れか?」


「見ない顔だな。噂を聞きつけてやってきたのか?」


「あの男、剣も鎧も立派なのつけてやがるな」


「あの娘かわいいな。俺、パーティに誘ってこようかな」


「馬鹿だね。あんたみたいのが相手にされるわけないだろ」


 冒険者たちが何やらこそこそと話している。


「ここが冒険者ギルドなんだ! すごい! 人がいっぱい! あ! あの人全身鎧を着てる! あっちのローブを着た人は杖持ってる!」


 アンリは、たくさんの人がいることに驚きながらも、初めて訪れた冒険者ギルドに興奮を隠しきれない様子で、キョロキョロと辺りを見回している。


「あそこが受付か。行くぞアンリ」


「うん!」


 ベルムートたちはギルドの受付の列に並んで、順番が来るのを待った。


「こんにちは。ご用件はなんですか?」


「冒険者登録をお願いしたい」


 順番が回ってきたので、ベルムートは受付の女性に用件を伝えた。


「はい。そちらのお連れ様もご一緒ですか?」


「ああ」


「では、こちらにサインをお願いします」


「わかった」


 ベルムートは受付の女性から紙とペンを2つずつ渡された。


「ほら」


「あ、うん……」


 ベルムートはアンリに紙とペンを渡した。


「こんなところか。ん?」


 ベルムートが自分の分を書き終わってアンリの方を見ると、紙は白紙のままだった。


「どうした?」


「わたし、字が書けないの」


 眉を八の字にして、困ったようにアンリは言った。


「そうか、なら私が代わりに書いてやろう。かまわないか?」


 ベルムートは受付の女性に代筆が可能か聞いた。


「かまいません」


 受付の女性は了承した。


「ありがとう、師匠」


「これくらい、たいしたことじゃない」


 ベルムートはアンリの分のサインを書き始めた。


「アンリは字が書けるようになりたいか?」


「うん!」


「なら今度字を教えてやろう」


「やった!」


 アンリは喜んだ。


「これでいいか?」


 ベルムートは、書き終わった2枚の紙とぺンを受付の女性に渡した。


「ベルムートさんとアンリさんですね? お間違いないですか?」


「ああ」


「はい」


「では、こちらの水晶に手を乗せてください」


 そう言うと受付の女性は手の平大の水晶を取りだした。


「それはなんだ?」


「魔力の波長を調べる魔道具です。もしプレートを紛失してしまっても再発行できるように魔力の波長をギルドで記録しているんです。魔力の波長は個人によって違いますからね」


「なるほど」


 受付の女性の説明を聞いてベルムートが水晶に手を乗せると水晶が光った。


「もう大丈夫です。次はアンリさんどうぞ」


 ベルムートが水晶から手を離すと光が収まった。


 続いてアンリが水晶に手を乗せるとまた水晶が光った。


「はい、ありがとうございます。では、ここでしばらくお待ちください」


 アンリが水晶から手を離して光が収まると、受付の女性は水晶を戻してからベルムートたちが記入した紙を持って席を立ち、奥へと消えていった。


 しばらくして戻ってきた受付の女性は、2つの銀色のプレートを手に持っていた。


「こちらが冒険者であることを示す証のプレートになります。失くした場合、再発行に銀貨1枚必要なので、失くさないように注意してくださいね」


 そう言って受付の女性が2つの銀色のプレートをベルムートたちに渡して来た。


「ああ」


「ありがとう」


 ベルムートとアンリはそれぞれ銀色のプレートを受け取った。


「師匠、このプレートの文字なんて書いてあるの?」


「アンリの持っているプレートは『Eランク アンリ』と書いてあるな」


「じゃあ、師匠の方は?」


「私の方は『Eランク ベルムート』と書いてある」


「そうなんだ。あれ? ランクって何?」


 アンリの疑問の声を拾った受付の女性が口を開いた。


「ランクはその人の腕や信用を表しています。そして、ランクによって受注できる依頼にも制限があります」


「制限?」


「はい。依頼も難易度によってランク分けされています。あなた方はEランクの冒険者なので、Eランクの依頼か一つ上のDランクの依頼しか受けられません。ランクが上がればさらに上のランクの依頼も受けられるようになりますが、逆に下のランクの依頼が受けられなくなります。例外として、ランクに関係なく、倒した魔物や薬草の買い取りなどの常時依頼と、危険な魔物が付近に現れた時の緊急依頼などがあります」


「え? え?」


 受付の女性の説明にアンリはちんぷんかんぷんといった様子だ。

 代わりにベルムートが話の続きを聞くことにした。


「だいたいわかった。それで、ランクはいくつあるんだ?」


「下から順にE・D・C・B・A・Sの6つのランクに分けられています」


「ランクはどうすれば上がるんだ?」


「依頼をたくさんこなすか、大物を倒して実力を示していただければギルド員が面接をします。面接によって人格に問題なしと認められれば昇格します」


「なるほど」


 ベルムートの質問にも受付の女性は丁寧に対応してくれた。

 今聞いた情報は、エルクの記憶からは読み取れなかった部分だったので、ベルムートとしても非常に助かった。


「ところで、他にも聞きたいことがあるんだがいいか?」


「はい、何でしょうか?」


「勇者について何か知っていることはないか?」


「ええと……勇者、ですか? その、おとぎ話くらいしか知りませんけど……」


 今まですらすらと答えていた受付の女性が言い淀んだ。


「それでいい。教えてくれ」


「わかりました」


 一応聞いてはみたが、受付の女性の話してくれた勇者のおとぎ話はベルムートたちが村で聞いた話とほぼ同じ内容だった。


「以上です」


「そうか……勇者の居場所は知らないんだよな?」


「はい」


「なら、勇者のような強いやつを知らないか?」


「勇者のように強い、ですか? それなら、二つ名持ちの冒険者の方々ですね。有名な方ですと『五連星』、『黒炎の薔薇』、最近急上昇中の『二迅の炎嵐』、生きる伝説と言われている『剣聖』もいますね」


(二つ名持ち? よくわからんが強いというのなら会ってみるか。魔王に対抗できるやつがいるかもしれない)


「そいつらが今どこにいるか分かるか?」


「いいえ、申し訳ありません。ただ、この都市にはいらっしゃいませんね」


「ふーむ……自分で探すしかないか……」


 ベルムートは残念がりつつも、有益な情報を得たことに満足していた。


「いろいろ世話になった。これで失礼する」


 知りたい情報を得たベルムートは、おいとますることにした。


「ありがとうございました!」


 アンリはお礼を口にした。


「どういたしまして。また何かあればお越しください」


 受付の女性が一礼するのを見て、ベルムートたちは列を離れてギルドを出た。


 ギルドを出たベルムートたちは、ギルドの厩舎から馬のシェリーを引き取って、別のところにあった旅人用の厩舎に馬のシェリーを預けた。

その後、ベルムートたちは、アンリの武器と防具、それから服や靴を買うために店を回った。


 これまでの道中での、魔物と戦闘するアンリの様子から鑑みて、防具を着けずリーチの短い短剣だけでの攻撃や、スカートのような動きにくそうな服装のままだと不安が残ったからだ。


 武器屋で鋼鉄の剣を買い、防具屋で動きやすく丈夫な革の鎧を買い、服屋でショートパンツと長袖のシャツを買い、靴屋で動きやすく丈夫な革のブーツを買った。


 ベルムートは死んだ冒険者エルクの装備と『空間倉庫アイテムボックス』にあるもので事足りるので何も買っていない。


「あんなにあったのに、もうこんなに軽くなっちゃった……」


 アンリがお金の入った革袋を持ってしょんぼりしている。


 今回の買い物で、フィルスト村の老夫婦と村長から貰ったお金はほとんど使い果たしてしまった。


「これは必要な買い物だったからな、仕方がない。それに、私たちは冒険者になったのだから、お金ならこれから稼いでまた貯めればいい」


「……うん、そうだね」


 アンリが顔を上げて、革袋を握りしめた。

 少しは元気になったようだ。


 今日はもう日が暮れてしまうので、活動は明日からになる。

 強者を探しつつ、冒険者ギルドで適当な依頼をこなしてお金を稼ぐ予定だ。

 もし強者が見つからなければ、ある程度お金を稼いだ時点で王都に向かうこともベルムートは考えている。


 とりあえず一泊分の宿代はあったので、今日はもう休むことになった。

 この宿には厩舎がなかったので、馬のシェリーは旅人用の厩舎に預けたままだ。

 ベルムートは明日、都市の外に出るときに馬のシェリーを引き取りに行くつもりのようだ。

 ベルムートとアンリは別々の部屋をとった後、宿の食堂で夕食を食べることにした。

 ベルムートとアンリは鳥肉の照り焼きとパンとスープのセットを頼んだ。

 鳥肉の照り焼きはタレが甘辛く、噛めば肉の弾力と共に旨味が口に広がった。

 パンはサクサクとした硬めのパンで、スープは野菜がゴロゴロと入っており、味がしっかりとしていた。

 ベルムートとアンリは大変満足した。

 お金を稼いだら、調味料を仕入れることにベルムートは決めた。


 食事が終わり、部屋に戻ったアンリは、疲れていたのかベッドに横になると、すぐに夢の中へと旅立っていった。


 ベルムートは確認したいことがあったので、部屋に戻ったあと、魔法を使って魔王城に転移した。



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