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特殊能力(ユニークスキル)

前回のあらすじ。

村娘Aは『勇者の卵』だった。


 ベルムートがアンリの能力を調べていると、驚きの結果が示された。


 特殊能力ユニークスキル:『勇者の卵』

 能力:経験を積んで成長する


 ベルムートにもまるで意味が分からない能力だった。

 そもそも、アンリが『勇者の卵』なんていう特殊能力ユニークスキルを持っていること事態にベルムートは驚きを隠せない様子だった。


(アンリを魔王の所に連れていけば、もう勇者を探す必要なんてないんじゃないか?)


 一瞬そう考えたベルムートだったが、魔王に瞬殺されることが目に見えていたので、すぐさまその考えは捨てた。


(しかし、勇者の能力を持っているのであれば、鍛えれば強くなるかもしれないな)


 ベルムートは勇者や強者が見つからなかったときの保険として、アンリを本格的に育成することに決めた。


「……師匠どうだった?」


 アンリが不安そうにベルムートに尋ねてきた。


「ああ……お前の特殊能力ユニークスキルは『勇者の卵』というものだ」


「そうなんだ……『勇者の卵』……ってえええ!?」


 アンリは大きくのけぞって驚いた。


「じゃあ、私……勇者ってこと?」


「ふーむ……どうだろうな?」


 確かに特殊能力ユニークスキルは『勇者の卵』だが、勇者であるかと言われれば判断しかねる。


 そもそも勇者の伝承では悪魔を倒した活躍を認められて勇者と呼ばれていたのであって、特殊能力ユニークスキルが『勇者』だったかどうかはわからない。


(魔王と戦っている時に何らかの特殊能力ユニークスキルを勇者が使っていたのは確かだが……)


 勇者の死体は魔王城の地下に保存してあるが、死体に『能力鑑定スキルチェック』は使えないので、確かめようがない。


(いや、待てよ……記憶を読めば分かるかもしれない)


 記憶を読む魔法を使えば、勇者の死体から記憶を読むことは可能だ。

 それによって勇者の特殊能力ユニークスキルが判明するかもしれない。


(一度城に戻ってみるか……まあ、それについては後にしよう。今はアンリのことだ)


 ベルムートは考えを切り替えた。


「お前が勇者なのかそうでないのかは分からないが、今のままでは魔王に瞬殺されるだけなのは確かだな」


「もう! そんなことはわかってるよ! これから師匠に勇者だって認めてもらえるくらいすっごく強くなるんだから!」


「まあ、がんばれ」


「師匠のバカ!」


 ベルムートが気のない応援の返事をしたのが良くなかったのか、アンリは不貞腐れた。


「それで、お前の特殊能力ユニークスキル『勇者の卵』の能力は、『経験を積んで成長する』というものだ」


「え? 全然どういう能力かわからないんだけど……」


「私にもわからない」


 2人で困惑の表情をする。


 『経験を積んで成長する』というのは、当たり前過ぎて、何も能力が無いと言っているようにベルムートは感じた。


「その……そもそも特殊能力ユニークスキルって……何なの?」


「まあ、個人が持ってる特別な能力だな」


「そのまんますぎて、全然説明になってないんだけど……」


 特殊能力ユニークスキルは、この世界に生きる人全員が持っているものではない。

 ベルムートの知っている範囲だと、魔王と魔王軍幹部、その他魔王軍の一部の者や、昔の戦いの関係者しか特殊能力ユニークスキルを持っていない。

 皆それぞれ違う能力を持っており、かなり強力な力を発揮する。


「師匠も特殊能力ユニークスキルを持ってるの?」


「ああ」


「どんな特殊能力ユニークスキルなの?」


「私の特殊能力ユニークスキルは『魔法開発』だ」


「えっ!? それってすごい能力なんじゃ!?」


「んー……どうだろうな?」


 『魔法開発』は名前の通り『新しく魔法を作ることができる』という能力だ。


 一見すると確かに色んな魔法が作れてすごい能力に見えるが、欠点がある。

 絶対に開発に成功するというわけではなく、当然失敗もするのだ。


 魔法開発には、針の穴に糸を通すような作業を何度も要求される。

 そして、完成しても、大抵の場合その魔法を発動させようとしないと失敗か成功かわからない。

 いざ完成した魔法を発動させようとしても、失敗していれば魔法は発動せず、成功していたとしても魔力消費量が多すぎたり、既存の魔法を改良したはずなのに逆に威力が下がっていたりと、欠陥だらけだったりすることもある。

 たまに強力で便利な魔法の開発に成功することもあるが、ほとんどが失敗か欠陥魔法という結果に終わる。


(果たして、こんな特殊能力ユニークスキルをすごい能力と言っていいのかどうか……疑問だな)


 ベルムートが難しい顔をして考えていると、


「ね、ねえ、し、師匠。そ、そろそろ手を離してもいい?」


 アンリがおずおずと聞いてきた。


「ん? ああ」


 ベルムートは『能力鑑定スキルチェック』を使うためにずっとアンリの手を握っていたのをすっかり忘れていた。

 調べられることはすべて調べたので、これ以上ベルムートがアンリの手を握っている必要はない。


「そうだな。もう離していいだろう」


 ベルムートはアンリの手を離した。


「ふぅー……」


 アンリはじんわりと手に残る熱を感じながらもほっとした。


「さて……アンリの能力はだいたいわかった。あとは……」


 ベルムートは少し考えた後、これからアンリにやってもらうことを伝えることにした。


「試合をしたが、改めてアンリの戦闘力がどの程度なのか見せてもらうために、この近辺の魔物を狩りに行ってもらう」


「わかった」


 ベルムートは周りを探索させていた灰色の鳥の眷属を呼んで、アンリでも戦えそうな手ごろな魔物の所まで案内してもらうことにした。


「よし、行くぞ」


「うん」


 ベルムートたちは都市へと続く道を外れ、灰色の鳥の眷属の後を追って森の中へと入っていった。


「師匠。その灰色の鳥は何?」


 アンリは先導している灰色の鳥の眷属に視線を向けながらベルムートに尋ねた。


「あれは私の眷属だ」


「眷属?」


 アンリは意味が分からなかったようだ。


「私の魔法で召喚した使い魔だ」


「使い魔?」


 これでもアンリは分からなかったようだ。


「……私の飼っている鳥だ」


「なるほど」


 ……どうやらアンリは納得したようだ。

 一番本質から遠い説明だったのだが……アンリにはそれで十分なのかもしれない。


「いたな」


 しばらく森の中を進んでいると兎型の魔物の姿が見えた。

 ベルムートたちは立ち止まって木の陰から兎型の魔物の様子を窺った。

 兎型の魔物は野草を食べていて、ベルムートたちには気づいていないようだ。


「よし。それじゃあ、アンリにはあの兎型の魔物を倒して来てもらうとしよう」


 兎型の魔物はかなり弱い魔物だが、ベルムートはアンリの実力を測るために、とりあえずアンリには兎型の魔物と戦ってもらうことにした。


「うん! まかせて! あんな弱そうな兎なんか、あっというまに倒してやるんだから! 師匠、見ててね!」


「あ、ああ」


(本当に大丈夫なんだろうか?)


 ベルムートの心配をよそに、アンリは意気揚々と兎型の魔物に向かって駆け出していった。



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