しんみりな件について(仮)
「人間ごときが・・・、悪魔に対して・・・、ふざけるなよ!!」
中根の体から皮膚がはがれ落ちていく。そして中根の体が少しづつ変色して行く。
「やっと、悪魔の本性ってやつが出てきたか。まあ色欲の本性ってのがどんなのか知らないけどな」
中根がかおるに向かって突進してくる。
その頃にはもう中根は人の体ではなく。半分が茶色に変色をしていて、その部分には筋肉が隆々としたものが出てきていた。
かおるは中根に向かって黒炎を放つ。相手にはもうウリエルの炎がない。それに、流石に疲労があったので、まだ、体力は温存しておきたかった。
黒炎が中根に直撃する。
「おおおおおおお!!」
中根は、体が全身を焼かれる苦痛で叫びを上げる。
もう、彼にはかおるに適う技がなく。ただ自分を犠牲にした玉砕覚悟でかおるに向かっていくしかなかった。
中根がふらふらになりながらも立ち上がる。その姿はもう人間ではない。緑色の重厚な筋肉に包まれている体。そう、その姿は・・・
「何かのケモノの類か?、それが色欲の罪を背負いし悪魔の本当の姿か・・・」
体が獣の姿になったアウモデウスが、さらにかおるに突進をしてくる。彼はすでに体中が焼けどをしている。
かおるは黒炎の魔弾を飛ばす。
魔弾が何個も体に衝突しても、アウモデウスは突進をやめない。
「お前は必ず殺す!」
アウモデウスが、かおるの前に立つ。その体には黒炎が焼き付いている。
「やっと、人間を意識しだしたな」
「お前は必ずこの俺が!」
「さっきまではワタシだったのにな。キャラはちゃんと固めないと」
かおるが、右手をアウモデウスに向ける。
「これで終わりだ」
かおるの右腕から黒雷炎がアウモデウスに向かって放たれる。それが、アウモデウスに直撃し、彼の巨体が漆黒の祭典の結界の端まで飛ばされる。
「ふう」
かおるが一息つく。流石に、これ以上はきつい。それが彼の素直な感想だ。本来なら同等の存在であるアウモデウスをここまで圧倒できたのは、向こうがまだ、目覚めたばかりであったことや、運も味方したこともあるが、かなり無理をしたこともある。
流石に副作用が少ないこの土地での戦闘といえども、その代償は大きい。
かおるは、黒こげになっているアウモデウスに近づいていく。最後に聞きたいことがあった。
かおるは、アウモデウスの右側に立つ。
「一つ聞きたいことがある」
「・・・・・・」
しばらく、返答はなかった。
「何が聞きたい?」
だが、少しして、返事が帰ってきた。
「どうして、そこまでして力を求めた。まさか、自分のハーレム大国でも作りたかったのか?」
色欲の悪魔が力を求める理由として、かおるが考えられるのはそれだった。だが、人間には興味がなかったアウモデウスがそれを望んだとは思えなかった。
「ふん、答える義理はないが、いいだろう。初めてワタシに興味を抱かせた人間だ。教えてやる。ワタシはある悪魔に勝ちたかった・・・」
「ある悪魔?」
《サタンのことだな》
ベルゴがそのとき話しかける。流石に自らと同等の存在である大罪悪魔の最後に対して思うところがあるのだろう。
「そうだ。あいつにワタシは勝ちたかった。そして、その地位を自らのものとしたかった」
「だが、同等の存在であるお前なら、工夫さえすれば勝てるんじゃ・・・」
「サタンと、ルシファーは同等の存在でも格が違う。お前の中にはレヴィアタンの力もあるみたいだが、もしあいつらと戦うことになるなら気をつけるんだな。そういえば、ワタシの力もお前に吸収されるのか、そして、ワタシの存在そのものが消える。これで、大罪悪魔のうち2人が消えるわけか・・・」
《お前、レヴィアタンが消えたのを気が付いていたのか》
「もちろんだろう。その人間の体の中にあいつの力がある時点で気が付いたさ。ああ、消えるのか・・・」
《名残惜しいか?》
「そうだな。こんなことなら、人間にもっと興味を持っておくべきだったとは思うが、まあ、いい。聖宮に行かないで済むなら消えてもいいさ」
《そうか・・・》
「おい人間」
「なんだ?」
悪魔同士の会話には入らないでおこうと思ったかおるに、アウモデウスが話しかける。
「お前には、なぜだか、たくさんの運命が入り混じっているらしい。運命を見る力は残念ながら、ワタシの力ではなく。あの人間から奪った力によって手に入れたものだから、お前には渡らないだろうが、これから、大変だぞ。たくさんのことに巻き込まれることになるだろう」
「なんで、そんなことを?」
「最後に、激怒をワタシに感じさせてくれた礼だ。気にするな・・・」
そう言った後、アウモデウスの体が消えていく。
最後の彼は、何か憑き物が取れたような感じであった。最初の印象からガラッと変わる。もしかしたら、悪魔というものは、何か自分が思っているものとは少し違うものなのかもしれないなと、かおるは思った。
アウモデウスの体が完全に消えた直後、彼の力がかおるに流れ込んでくる。
それにより、枯渇していた力が緩和され、かおるの疲労が少し緩和された。
「将来はサタンと戦闘かな?」
「いや、俺はもう平穏な生活をしたいんだが・・・」
「それだと、小説終わってしまうから駄目だよ」
「そうなるよな・・・」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




