後悔している件について(仮)
清が、それを聞いて見るからに怒りに顔が染まる。
しかし、それはほんの一瞬で、すぐにその顔はいつもの清の顔に戻っていた。
「あらあら? 返せだなんて、物騒なことを言うのね?」
「・・・・。」
「うちの家のごたごたに付き合ってもらったみたいで、いろいろと迷惑をかけてしまったみたいだけど、この小僧はちゃんとお灸をすえておきますから、今日はお引取り願ってもいいかしら?」
これは、清の一つの能力である。精神干渉系能力、一日に一回しか行使することができないものであるが、これはどんな状況であっても、その言葉で、相手の認識している状況を変換させるもの。
だから、今かおるは、ただ良太郎によって、宮内家のいざこざに巻き込まれて、それを糾弾しにきた人間だと自分のことを思っている。
この能力は、清が本当に危険だと思ったときにしか使わない。
「ああ、そうですか。」
「ごめんなさいね。」
「最初に攻撃を仕掛けておいて、ずいぶんな話しですね。」
かおるは、先ほどと何も変わらない。
ということは清の力も聞いていない。
「でも、まあ、なんとなく状況は認識した。あんたは悪魔なんだろう? レヴィアタン。」
清の顔がどんどん変化していく。
「あなた・・・、いったい・・・。」
良太郎は清が、動揺している姿を始めてみた。
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「はあ、はあ、はあ・・・。やっとまけたか?」
かおるは、路地裏で身を潜めている。
さきほど、一般病棟の崩壊に巻き込まれて、なんとか、そこから脱出したかと思えば、その後、あの玄関前にいた人間達に追いかけられることになってしまった。
それを巻くのにかなり時間がかかってしまった。特にあの大声で「竹市家の人間をなめるなあああ!!」ってさけんでくる人間がしつこくて、大変だった。
「ふーーーーーー。」
それにしても、特別棟での出来事はなんだったのか・・・
(これから、どうするかな。)
逃げる途中で、良太郎の隠れ家の入り口を確認しにいったが、見事にただの壁とかしていた。まあ、もともと、良太郎がいないと入れないものだったから当たり前なんだが。
心配ごとが多い。
(なあ、ベルゴ?)
《なんだ?》
(お? よかった。返事をくれて、あの雷を使う女の人相手に、お前の力は通用するのか?)
心配事の一つはこれだ。上野の力は通用しなかった。もしも、本来の漆黒の力が通用しなかったら、お手上げだ。
《それか、まあ、あの程度なら楽勝だが、相手が本気を出せば互角だな。》
(互角? マジかよ。そんなにすごいやつなのか・・・。)
《すごいというか。同じ存在だな。あいつも悪魔だ。どうやったか知らんが、姿が昔とは変わっているみたいだったが。》
「えっ!?」
かおるは、思わず声を出す。
(悪魔って、あの大罪の? それって、漆黒の力を使うものの一人だってことか?)
《ああ、なんでか知らんが、あいつは人間の体を乗っ取っている感じだったな。もしかしたら、この土地には、俺たち悪魔にとっていい環境にあるのかもしれないな。俺もお前の体を乗っ取れるかも知れん。》
(ええ、マジかよー。)
《まあ、面倒だから、やらないが。とりあえず。相手の背後には悪魔がいるってことだ。お前がこのまま戦ったとしても、よくいっても同士討ちだ。もういいだろう。俺が言うのもなんだが、ただの人間のお前がよくやったもんだ。お前はまだ死ねないんだろう? ここまでにしておけよ。》
かおるは微笑む。
(そうだな。俺はまだ死ねない。でも、相手が悪魔だってことは、かなりやばいんじゃないのか? 他の悪魔がお前みたいに面倒くさがり屋なわけじゃないだろう? その悪魔はどの悪魔なんだ?)
《嫉妬を司る悪魔レヴィアタンだな。あいつは嫉妬のためならなんでもする。》
(だったら、何をたくらんでるかわからないけど、俺が同等ってころは、そのほかはそれより下ってころだろう? だったらなおさら、俺が行かないといけないじゃないか。)
《死ぬかもしれないんだぞ?》
(死ぬ気では行くが、絶対に死なない。そのために、ベルゴも協力頼むぜ!)
《まったく、本当に面倒だ。お前の中に入ってしまったことを後悔しているよ。》
(まあ、あきらめろって、これからも仲良くしていこうな。)
ベルゴのため息が、かおるの中で響き渡る。
(でも、問題はどこにいけがいいかだよな。あの女が誰なのかもよくわからないし。)
《おそらく、宮内家の人間なのは確かだから、その本家とやらに行くのが一番いいんじゃないか。》
(それはそうなんだけど、場所がわからない。俺はそういうのに関わりがないからなあ)
「見つけたぞ!!」
そのとき、追っての一人に見つかる。一番しつこかったやつだ。
(いいこと思いついたぞベルゴ。お前の力で上手くあいつ拘束できないか?)
ベルゴもかおるの考えを理解した。
《そういうことか・・・。》
「やっと、主人公登場と思ったら、すぐに回想ですか!」
「本当にくそったれだな。作者!!」
「まあ、まあ、落ちついてください。これから活躍しますから・・・多分」




