こんなときこそ微笑みが大事な件について(仮)
体育館に明かりはついていなかった。なので両側の窓から差し込む月明かりによって、今、体育館の様相をつかむことができる。
宮内は、目の前のステージにて、こちらに十分なほどの殺気を放ちながら、片足を抱えて座っている上野のほうに向けて歩いている。
体育館の入り口からステージまでの距離はおよそ、五十メートルほど、その辺の高校にしては大きいな体育館をこの学校は持っていた。
「来たな。ジャストな時間だ。」
宮内が体育館の中間の位置につくと、上野が口を開く。そして言う。
「そこで、止まれ。」
その言葉に従い。宮内は歩みをやめて、上野との距離二十メートルほどで止まった。二十メートルといっても、かなり距離があり、さらに薄暗いので、上野の姿はそこまではっきりと認識はできなかったが、そこにはっきりと存在しているということは、その威圧感で十分に認識できた。
「で? 答えは出たのか?」
「まずは、二人が無事なのかどうかを確認がしたい。」
宮内の口調は、かおるなどといるときとは違い。はっきりと威厳あるものであった。宮内としての自分を意識しているのだ。
「ふん。まあ、いいか。それで、迷いに答えが出るってんならな。」
上野はそういうと、立ち上がった。そして、ステージにある幕を片手を動かして、一瞬で燃やしつくした。
「ふたりとも!」
幕が消えて、それまで隠れていた場所に、とらわれに身となった篠原と、川瀬の二人はいた。無傷ではないようではあったが、幸い、そこまで目立った大きな傷があるわけではなく、宮内は安心した。
しかし、口にはガムテープか何かが巻かれていて、話すことはできないみたいだった。なので、二人とも宮内の姿をみて、もだえている。
「大丈夫です。すぐに助けますから。」
「さあ! どうするんだ? 宮内 まさこ!! 土地の権利を俺に譲るのか。それとも、この二人を見捨てて、俺と戦って守るのか! どっちだ!」
上野が声を張り上げる。
「わたしは、どちらも選びません!」
「何!?」
「どちらも守ってみます!」
宮内がそう叫んだ瞬間、ステージの後ろの両脇から3人の人間が姿を現した。そして、その人間はすぐに、篠原と川瀬の二人を抱える。
「お前ら!!」
上野がそれを見てすぐに、その五人全員に攻撃を仕掛けようと、右手に黒い炎を纏う。それを放とうとしたとき、上野の周りが閃光に包まれる。それに、上野が目を見開いていると、そこに落雷が落ちた。
上野の回りが落雷により爆発すし、煙に包まれる。
「あなたの相手はわたしです!」
上野に向けて宮内がそう言い放つ。彼女は片腕を前に出した体制だ。
その間に五人はその場から宮内の後ろまですばやく移動した。その人物達に宮内が言う。
「二人を連れてここから離れてください! ここはわたしが引き受けます!」
「しかし!」
篠原を抱えている人物が言う。
「いくら、あなたたち近衛部隊といえども、この状況では足手まといになるだけです! それなら、もしわたしに何かあったときのことを考えて、対策を立ててください! 上野もわたしと全力の戦闘をして無傷ではないでしょうから、そのときを狙うんです!」
「くっ! わかりました。お気をつけてお嬢様。」
「逃がすか!!」
上野の声とともに、六人のもとに黒炎が飛んでくる。それを宮内が雷で防ぐ。
「はやく!!」
その言葉に習い。五人の人物は入り口から出て行く。そのときに篠原と川瀬が宮内に対して何か言葉をかけた。その言葉が何か宮内は爆音で聞こえなかったがそれに宮内は微笑みで答える。
「大丈夫です。また三人で楽しくできるように頑張ります。」
その微笑みは二人の捕まってしまった罪悪感を少しは緩和したい思いから出たもので、二人のその思いは届いたに違いない。




