同級生がうっとしい件について(仮)
「おはよう。」
かおるは学校のみんなにあいさつした。しかし、声が小さいのかいつも誰にも返事をしてもらえてない。席についてスマホをいじっていると後ろから話しかけられる。
「よっ! かおる。今日も辛気臭い顔してんなあ。」
「そうかな。」
同級生の岡本だ。彼は学校の中でも派手なグループにいるので、スクールカーストで中の中にいるかおるとはあまり接点がないのだが、二人は小学校からの知り合いなので、よく岡本のほうから話しかけてくる。正直、岡本の取り巻きに変な目で見られるので勘弁してほしかった。
「今日もお前の嫁は先に登校してきたぞ。なんで一緒に登校してこないんだよ。せっかく一緒に住んでるのにさ。俺ならあんなことやこんなこともするけどなあ。」
「あんなことやこんなことってなんだよ。」
岡本の冗談に苦笑いで微笑む。もしかしたら冗談ではないのかもしてない。そんなことを考えてかおるは窓から空を見上げた。かおるの席は窓際の後ろから二つ目の席である。
はやくどっかにいってくれないかなと思っていると、岡本がかおるの右腕に視線を落とした。
「お前、右腕どうしたんだよ。そんな包帯なんか巻いてさ。」
気づかれたくないやつに気づかれてしまった。といっても、まだ学校の制服は半袖の時期なので、腕に包帯なんかしてたら目立つのは仕方ない。動揺を感じとられないように答える。
「ああ、これ? 昨日ヤカンで火、沸かしてたらさ。それを見事に腕にぶっかけちゃってさ。ほんとに熱かった。」
「病院はいったのか?」
「いや、行ってない。夜遅かったからさ。」
「じゃあ、今日の朝いけよ。とりあえずでもいいからさ。別に午前中くらい学校来なくてもたいしたことないだろう。ちゃんとそういうとこしないといけないぜ。もし、皮膚が変になったらどうすんだよ。」
なぜ説教をされているのか? かおるは気持ちがもやもやするのを感じる。しかし、そんなことではへこたれないのが、かおるである。
岡本は言いたいことをいって、その場を去っていった。
授業が始まって、昼休みの時刻になった。かおるはそれまでに友達の全員といってもいい人数に、この腕の包帯のことを聞かれていた。数日はいいとしても、もしこの腕の文様がすぐに消えないものだったら、どうしたものか。かおるがそう悩んでいると、自分の机の目の前に人がいるのに気が付く。
「なにしてんのよ!」
「えっ!?」
そこにいたのは、はるかだった、腕を腰にあてて、豊満とはいえない胸を突き出している。
「えっ? じゃないわよ! 夜に言ったこと忘れたの!?」
「夜?」
夜に何か約束したっけかな?
かおるの表情からわかっていないと悟ったはるかは大きなため息をついて
「夜中にあんたが騒いだときのことよ。お昼おごっるって約束したでしょ!?」
と言う。
「ああ。」
そんなことがあったことを思い出す。といっても、あれはかおるが約束したというより、無理やり約束させられたようなものだった気がするが、いっても仕方がない。はるかに朝ちゃんと対応できてなかったつぐないだと思い。観念することにする。
「わかった。購買に行こうか。」
「最初からそう言えばいいのよ。」
はるかが少しうれしそうに見えたが、勘違いだろう。それにしても、この腕の包帯についてなんて説明したらいいか。はるかには隠し通せない気がする。なにせ、同じ屋根の下で暮らしているんだから。
そんな考えのかおるを知ってか知らずか、はるかが言う。
「ところで、その腕の包帯どうしたのよ?」