初めての亀裂な件について(仮)
「戦争・・・?」
「あら、宮内さんに川瀬さんに篠原さんじゃない。あなたたちがいるってことは、もうすべてが完了ってことになるのね」
「戦争の準備ができたってどういうことだよ! かおる!」
そこで、トシコが声を張り上げた。
正子たちが、かおるが川口家の人間と繋がっていると、上野と繋がっていると聞いても、彼なりの考えがりそしてそれはおそらく戦争を止めるためのものだと思っていた。
「お前は、戦争を起こすつもりなのか?」
かおるはそこで、トシコを見据えた。
そして、その深い目をのぞかせる。
「そうだよ。俺は戦争を起こす。そして、ハルカを取り戻す」
「たくさんの人間が死ぬんだぞ? しかも、一般人も死ぬ。関係がない人間までもが!!」
「ああ、そうだな」
「そうだなって・・・お前本当に意味がわかっていってるのか?!」
そこで、かおるは微笑んだ。
「これは良太郎が考えたことで、そして俺はそれに賛同したんだ」
「は? 良太郎だって・・・・」
「彼もここにいるんですか?」
正子が聞く。
「いや、いない」
「なら、どこに? 土地の外にいるのですか?」
良太郎と思われる人間からのハッキングが宮内家にあったのは事実だ。
つまり、戦争をかおるが本当に起こすつもりで、それに良太郎の筋書きがあるというなら、あのハッキングも彼の仕業ということになる。
「良太郎は死んだよ」
「え・・・・・」
それは、正子たちの予想していた返答ではなかった。
(死んだ・・・・?)
「そ、それはいったい・・・」
「良太郎は、俺が殺した」
かおうが言う。
「かおるさんが、良太郎さんを殺した? せ、説明してください! ちゃんとわかるように!」
正子は声を張り上げた。
それほどに、かおるの言葉が理解できなかった。
(かおるさんが・・・・殺した?!)
「それを知ったら、宮内さんたちは戦争に参加しないといけないよ?」
「それは、その内容が戦争を起こす理由と繋がっているということですわね?」
かおるはそれを首肯する。
「そして、それは先ほどかおるさんが言ったハルカさんを取り戻すという言葉にも関わってくるのですわね?」
「そうだな」
「なら、わたくしはその話を聞きますわ」
孝子のその言葉に、正子とトシコは彼女を見た。
「わたくしはすでにかおるさんに命を救われた身、彼のやることに異存はありませんわ」
「お、おい! 孝子!」
「トシコもそうではありませんか? あなたも、家のことを救われた身、わたくしは実の姉も救われ、そしてその姉がかおるさんの意志に賛同しているようにみえますわ。それなら、わたくしはそちらに付きますわ。それで恩返しができるなら本望ですわ」
「そ、それは・・・・」
トシコがそこで押し黙った。
自分の中で考えを整理しているのだろう。
正子も考える。
自分はいったいどうすればいいのだろうか?
戦争になれば宮内家の人間が巻き込まれることになる。
そんなことは宮内家次期当主としては避けなければならないところだ。
しかし、かおるには彼女も家と命を救われた。
それは事実だ。
(わたしはいったい、どうすれば・・・・)
「すぐに結論は出さなくてもいいよ。そうだな。一日考えてくれればいい。でも、戦争は今日始める」
「お、俺たちがそんなことを聞かされて、はいそうですかって言うと思うのか?」
トシコがクナイを手に持って構えた。
「おいおい、アリス、ちゃんとこいつの武器取り上げとかなかったのかよ?」
上野がアリスに向けて言う。
「忍から全武器を取り上げるのなんて無理よ」
「面倒なことになったな」
上野がそこでため息をついた。
「おい、二番目にちっさいの」
上野がトシコに言う。
「つまり、お前は俺たちの側にはつけないってことか?」
「そうじゃない。俺たちが答えをちゃんと出すまで戦争は始めさせないってことだ。戦争が始まってしまえば俺たちはどっちにしてもそれに巻きこまれちまう。そうなればどの道、かおるに話を聞かないと落ち着けない。そんなのは卑怯だろ? 俺はそんな卑怯な男に救われたはずじゃねえぞ?」
「そうかい。なら、まずは俺を倒してからだな」
上野は、かおるとトシコに間に入り込んだ。
「覚えてるか?」
「何がだ?」
「俺が宮内家に攻め入ったときに、お前をその宮内家のお嬢さんに対しての交渉材料として捕らえたときのことを」
「ああ、あれは最悪の思い出だな。今でもあのときの自分の力のなさにはうんざりするぜ」
「なら、わかるよな? たかだか数ヶ月の訓練で俺に勝てるわけないだろ?」
「お前はあのときの力を失ってる。それに俺はあのときの数倍は強い!」
「上野」
そのとき、かおるが上野を後ろから呼んだ。
「ここは俺がやる。どの道、いろいろなことを話すときに、三人ともにショックなことがあるんだ。ならここで上の人間が相手しないわけにはいかないからな」
かおるがそういいながら、トシコの前に出てきた。
「やるからには、こっちも本気だ。トシコ、死ぬなよ?」
「へ、今のお前みたいな糞野郎に俺はまけねえよ」
「ま、待って! わたしも戦います!」
正子がそこでそういった。
「あーあ、かおるのせいで喧嘩だよ」
「否定できない・・・」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。