穏やかなのが一番怖い件について(仮)
正子たちを乗せている車は、どんどん郊外へと走っていく。
「わたしたちに対して目隠しとかはしなくてもいいんですか?」
正子は、相手の真意を確かめるために問うた。
「別に構わねえよ。これからいくところがどこなのか、お前たちには絶対にわからないからな」
「え?」
そのとき、車の速度が上がった。
そして、大きな川の陸橋に差し掛かる。
「え、ちょっと!」
「おいおいおい! マジかよ!」
「そんな!」
正子、トシコ、孝子が順に驚きの声を上げていく。
それもそのはず。
今から渡ろうとしている陸橋は途中から先がなくなっており、このまま車が直進すれば確実に落下してしまう。
「何考えてんだよ!」
トシコが叫ぶ。
だが、上野とアリスは平然としており特に気にする様子はない。
(まさか、このままわたしたちを沈めるつもりじゃ!)
そんな考えが正子たちの頭を支配したとき、車は見事に橋から飛び出した。
「「「わあああああああああ」」」
車の先が重力に引っ張られて、下へと落下していく。
その下には大きな川だ。
正子たち異能力者なら、川に落下しても大事には至らないかもしれない。
しかし、今彼女たちは拘束されており、防壁により能力を使うことも封じられている。
正子が落下してからどうするか、考えていると、車の先に時空の歪みが起こるのが見えた。
車はそのまま、まるでワープホールかのようなものになったそれへと突っ込んで行き。消えた。
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「そろそろかしら」
「そうだと思いますよ」
宮内家のそばに、二人の人物が後ろに多数の兵隊を隠して隠れていた。
「今、上野君から連絡があって無事に正子さんたちを保護できたみたいです」
「そう。よかった。じゃあ、私達も動くとしましょうかね」
そういい、杉村が立ち上がった。
「それにしても、かおる君の偽者を作り出すなんて、神もろくなことはしないわね」
「まあ、そのほうが、効率がいいと思ったんでしょう。それと多分、僕たちの作戦をかく乱するためってのもあるんじゃないですか」
中田が、杉村にそういいながら後ろの兵隊を確認した。
「これだけいれば、宮内家を混乱させることくらいできるでしょう」
「そうね。じゃあ、いきましょうか」
杉村が、右手上げた。
そして、それを宮内家に向かって動かす。
その合図に従い、後ろにいた兵隊たちが動き出した。
数にしてざっと100体である。
「私達はここでおとなしくしていましょう」
「そうですね。そもそも僕らの能力は自分自身の戦闘じゃ役に立ちませんしね」
「中にはもう人間はいないのよね?」
「ええ、僕の目が見る限り、もう天使しかしません。まあ人間の皮をかぶった悪魔ですけどね。それにまだ、向こうのラグナロクは発動してないんで、そこまで強力じゃないですよ」
兵隊が、宮内家の壁をどんどん壊していく。
「それにしても、アリスちゃんはすごいわね。正直ここまでの兵隊は期待してなかったわ」
「彼女が授かった能力は、元の能力を一割増しで復活させる能力ですからね。もともと彼女は魔女とし手優秀でしたから、僕みたいな、半径一キロを見渡すことができる能力とはレベルが違いますよ」
「はは」
杉村が笑った。
「それだったら、私の無機物を操る能力だって大したことはないでしょう? 私自身が攻撃されたら終わりなんだからね。でも私の無機物を操る能力と、あなたの半径一キロを見渡す能力で、あの兵隊たちを動かすことができるわけだから、まあ、上出来でしょ」
「それもそうですね。でも僕も上野君みたいな時間を止める能力がほしかったなあ」
「でもあれ、結構制限あるんでしょ?」
「まあ、そんなに簡単に使えたら苦労しませんもね」
二人は宮内家から、戦闘の音がしているのにも関わらず。和やかに会話をしていた。
二人とも、一度命を落としている。
それを、良太郎に救ってもらっている身だ。
だからこそ、彼らはここで失敗するわけにはいかない。
「宮内家の地下にあるこの土地の霊脈について詳しくかかれた巻物は、ちゃんと奪うことがでたかしら?」
杉村が中田に問う。
「ちょっと待ってください」
中田が、目を瞑って眉間にしわをよせた。
「そうですね。奪えたみたいですよ」
「そう。よかったわ。それなら、第一ミッション成功ってとこかしら」
二人はその後も、和やかに会話しながら、宮内家から聞こえてくる悲鳴を聞いていた。
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「マジでびっくりしたぜ」
「心臓が止まるかと思いましたわ」
「まさか、あそこで時空間魔術系が施されているとは思いませんもね」
正子たちが乗ってきた車は、今、ある洞窟の中にて止まった。
そこがどこなのかは、転位してきたのでわからない。
上野が言っていたことは本当だったということだ。
「じゃあ、降りろ」
上野の指示に従い、三人は降りた。
降りると、そこはまるでどこかの物語に出てくる秘密結社の基地のようなつくりになっていた。
周りにの岩には、新たにいろいろな電子機器が設置されており、太いパイプや、たくさんのコードがそこら中蛇のようにうねっていた。
目の前には二階と思われる場所に続く階段があり、二階は住居スペースになっているようなつくりだった。
そして、その奥に上野が入っていく。
「ちょっと待っててね」
アリスが三人に微笑んだ。
「変な2人だよね」
「お前が自分の眷属にしたんだろ?」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
「そうだったっけ? 忘れちゃった」
「おいおい、大事なところじゃないのか?」