あれ? いつのまに消えたんですかな件について(仮)
パリン!
窓ガラスを割って、催涙弾と思われるものが、部屋に入ってきた。
『相手は近衛部隊の中でも、拘束に特化した特殊部隊だな』
トシコが通信で全員に伝える。
近衛部隊の特殊部隊は、基本的に対人戦のプロの集まりであり、異能力者ではあるが、強力な力を持っているとうわけではない。
その代わりに彼らは、戦闘のプロだ。
いくら異能力者といってもかおるみたいに自身の周りにガスまで通さないバリアなどを張ることができる異能力者は少ない。
つまり、催涙弾やガス系の武器は普通に異能力者に対して有効というわけだ。
『みんな。離れないように固まってください!』
正子の指示でかおる以外の全員が固まった。
『かおるさん!?』
かおるだけが、場所を動かない。
『おい、かおるには通信が通じてないんじゃないか?』
『そんな、かおるさんも私たちのチャンネルは知ってるはずなのに』
そのとき、第二のガス弾が中に入れられる。
それにより、視界が真っ白になった。
(これだと、かおるさんが見えない)
だが、正子は電気信号で、人が感知できる力を最近手に入れていた。
つまり、誰がどこにいるかは目が見えなくてもわかるというわけだ。
正子の両隣には、孝子と、トシコ。
そして、前二メートル先にかおるがいる。はずだった。
(あれ?)
だが、正子はかおるを感知できなかった。
もしかすると、漆黒の力の影響なのかもしれない。
『かおるさんが、感知できない』
『まあ、かおるなら大丈夫だろう』
『そうですわね。それよりもわたくしたちは自分の心配ですわ。相手はかなりの使い手なのでしょう?』
三人は回りに注意を向ける。
(2、いや3人か・・・)
『階段から、三人上がってきます!』
『了解!』
トシコが、階段に向かって手裏剣を投げた。
それが、見事に階段を上ってきた三人の足に刺さり、彼らの動きを止める。
『まずいですわ。もうすぐ、この周りに結界が張られてしまいますわ!』
三人はお互いに常に自分たちの位置を確認しながら、催涙弾が投擲された窓に向かう。
三人とも目と鼻が悲鳴をあげていた。
(流石に、わたし達はこれを防ぐだけの力はないか)
「ごめんなさい。かおるさん、ハルカさん、雷竜の砲撃!」
正子は窓に近づくと、そこに向かって攻撃を放った。
それにより壁が一瞬で砕けて、空気に循環が行われ、視界がクリアになった。
「あそこのやつらだ!」
トシコが、回りで結界を作り出している2人を指差した。
「わたくしがやりますわ」
孝子が、ステッキを取り出した。
「マジカルマジカル、シュート!」
ステッキから放出された魔力が、ボール状の形となり、結界を張っている二人に交互に飛んでいった。
それが、ぶつかり爆発する。
そして、ほぼできあがりかけていた結界が、崩壊した。
「行きましょう!」
三人は開かれた場所から飛び降りて、道路に着地した。
「待て!」
すると、玄関から、完全武装をした近衛部隊が持っている銃の銃口を向けてきた。
「我々は発砲許可を得ている! そこでとまれ!」
だが、正子たちは止まらない。
「仕方ない。撃て!」
その指示で、三人の近衛部隊がそれぞれに向かって発砲した。
「みんな伏せて!」
正子が、振り向いて電撃の壁を作り出す。
発砲された銃弾はそれにぶつかりはじかれた。
「くそ、はさまれた!」
だが、その時間ロスの間に、他の近衛部隊が先回りをしており、正子たちは道路の左右から挟まれる形となる。
相手は、前が四人で、後ろが六人だ。
おそらく、今回正子たちを捕らえに来た部隊の数はこれだけ、ということはかおるは上手く逃げ切ったということだろう。
それか、元から気づかれてなかったという可能性もある。
どちらにしてもよかったと正子は思った。
「どうする? 逃げ切れそうにないぞ?」
近衛部隊は銃を構えているもの、ナイフを構えているものに分かれる。
そして、ナイフを構えている人間が左右からじりじりとつめてきた。
銃もちは後ろからの援護だろう。
近接戦闘ではトシコがおそらく一歩も二歩もリードはしている。
しかし、正子と孝子はそこまでではない。
「トシコは前に3人を、私は後ろの2人を相手にするわ!」
単純な戦闘力では劣っていても、正子は異能力者の中でも強力な力を持っている。それで圧倒すればいい。
「孝子さんは、援護をお願いします! できれば銃をなんとかしてください!」
「わかりましたわ!」
正子は後ろに走り出した。
トシコもそれと同時に前に走り出す。
「雷竜の追撃!」
正子の手から、雷撃が目の前の2人の向かっていく。
だが、それを2人は横に飛んでよける。
そのとき、彼らの後ろにいる銃もちが正子を狙ってきた。
「甘いですわ。あなたたちの考えていることなんて手にとるようにわかりますわ!」
その銃もちに向かって、孝子が魔弾を放つ。
だが、そんなことはお構いなしに、2人は正子を拘束するべく突進してくる。
一人がナイフを正子に向かって投げた。
それを正子が電撃ではじく。
その瞬間、正子の腕にロープが巻き付けれらた。
「何?」
見ると、近くの家の屋根に2人の人間が左右にいた。
正子は目の前を見る。
すると、目の前にいたはずの4人が2人に減っていた。
(幻影の類の能力者がいたわけか)
そして、先ほどナイフを放ってきた相手が正子むかってきた。
「お嬢様、少し眠っていただきます!」
相手が正子の腹に攻撃を入れようとしてくる。
「ぐあああああ!」
だが、その人物は後ろから追撃してきた雷撃が命中したことによって、気絶した。
「かおるどこに消えたの?」
「電柱の影から見守ってる」
「気持ち悪いね。流石だ」
「その言い方やめて」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。