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いきなり漆黒の力手に入れちゃった件について(仮)  作者: 漆黒の鎧
第四部 大戦争を起こす件について(仮)
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裏切り者となっている件について(仮)


 稲垣かおるの行方はまだわかっていなかった。

 だが、俺は稲垣かおるよりも、ある人物の行方がわからないほうが気がかりであった。

 それは、梅本良太郎である。

 やつは、何もいわずに消えるような人間ではない。

 常にどこかに気を配り、全体が上手く回るようにして動くタイプの人間だ。

 そんな人間がみなに心配をかけるようなことをするとはどうしても俺は思えなかった。


「竹市君」


「はい!」


 竹市は、この家の党首、宮内努に呼ばれた。


「なんでしょうか?」


「最近、正子たちの様子がおかしいのだが、何か聞いていないか?」


「あ、いえ。私は何も伺っていません」


「そうか」


「おそらくですが、稲垣かおるを捜索しているのではないでしょうか?」


「最近行方がわからないと確か言っていたかな?」


 努は資料に目を通しながら、特に興味なさげに聞く。


「はい。そうです。彼だけでなく、宮内家専属情報屋の梅本良太郎も行方がわかりません」


「ああ、彼か」


 また興味のない返事。


「あの・・・」


「なんだね?」


「僭越ながら、意見を申し上げてもかまいませんか?」


「君は竹市家の党首も同然の位置だ。君たちの力なくしてはこの家の守護はないというのが、みなの認識しているところだよ。だから、何か思うところがあるなら、好きにいってくれてかまわないよ」


 そこで、ここにきて始めて資料を見る目をやめて、顔を上げた。


「聞こう。君の意見を」


「ありがとうございます!」


 竹市は頭をさげた。


「では、申し上げさせていただきます。稲垣かおる。梅本良太郎、さらに、稲垣かおるの幼馴染である井上ハルカの捜索に、人員を割くべきではないでしょうか?」


 現在、彼らを捜しているのは、正子たち三人だけだ。

 それでは見つけられるものも見つけることはできないだろう。


「うむ。その理由は?」


「まず、稲垣かおるですが、彼の力は巨大です。あの力をもしも、他の勢力の奪われでもしたら、今続いている均衡状態が崩れかねません。なので早急に保護、いや拘束しておくべきです。そして、彼の力を使えば、守護の体勢はより強固なものとなるでしょう」


 竹市は別に本当にそう思っているわけではない。

 これは努に、捜索を決断させるための方便である。


「次に、梅本良太郎ですが、彼も情報屋としての実力はかなりのものがあるでしょう。それに、彼は宮内家の情報を知りすぎるほど知っています。万が一ここで彼が敵の手に落ちるようなことがあれば、宮内家に危機が迫ります。なので迅速に捜索すべきと考えます!」


「ふむ。2人の捜索に関しての意見には筋が通っている。だが、その稲垣かおるの幼馴染を捜す理由はなんだね?」


 思ったよりも好感触であったので、竹市は内心でガッツポーズをした。


「はい! 井上ハルカは、稲垣かおるが最も大事にしている身内であります。なので、もしも彼女が敵に人質としてとられることがあれば、稲垣かおるがこちらに反旗を翻す可能性があります。なので、彼女も保護すべきかと思います!」


「ほう・・・」


 努は、ゆっくりと自身が座っている椅子に深く腰かけた。

 そして、少し目を瞑り考える。


「私は、三人とも捜索の必要はないと考える」


「え・・・? そ、その理由を伺ってもよろしいでしょうか?」


(ど、どうしてだ! 俺の話した内容は完璧だったはずだ!!)


「なぜなら、その三人、いや、正確には2人か。それは、すでに敵陣営にいると考えることができるからだ」


「え?!」


(いったいどういうことだ・・・)


「ついこの前のことだ、宮内家の情報ネットワークが何者かのハッキングされた。そして、そのIPアドレスをたどるとある人物のパソコンからだということがわかった」


「もしかして、それが・・・・」


「そうだ。良太郎だ。彼のパソコンからハッキングが行われていた。そして、宮内家のセキュリティーシステムは完全にダウンした。だから、今それを急いで新しいものに取り替えているんだよ。だが、参ったことに、土地の管理システム。つまり守護体勢までもが盗まれてね。こちらはそれであたふただよ。今、川口家に責められたら終わるだろうね」


「そ、そんな・・・」


 本当にそれをやったのが良太郎なんだろうか。

 だが、それが問題であるわけではない。

 もし、良太郎が何か脅しをうけたり、洗脳されたりしていたとしても、すでに情報は取られてしまった。

 つまり、今更、良太郎を助け出すメリットもないということである。


「そして、稲垣かおる君についてだが、彼は今、敵陣営の人間と一緒にいる」


「といいますと?」


「これを見てくれ・・・」


 努はある写真を、竹市に見せてきた。

 そこにはかおるともう一人の人物が映っていた。


「これは?」


「かおる君と映っている人物、それは上野ともやだ」


「上野!」


 上野ともや。彼は数ヶ月前宮内家を襲った人間だ。

 確かかおるとの戦闘の後、行方しれずとなっていたが、まさかこんなところで姿を現すとは・・・。


「上野は今、川口家側にいることがわかっている。つまり、その上野と一緒にいるということは、彼も向こう側という可能性があるだろう」


「しかし! もしかしたら・・・」


「その幼馴染を人質としてとられているかもというのだろう? それでも結果は同じだ。彼は今我々の敵なのだよ」


「・・・・・・」


 おそらく、努の判断は正しい。

 だが・・・。


「それを、正子様たちには?」


「いっていない。最悪の事態になるまで言わないほうがいいだろう。正子の友人が2人も自分を裏切ったと知れば、正子の精神的ダメージは大きいだろうからな。だから、君もこのことは言わないように」


「わかりました」


 竹市は、そこで部屋を出た。


(いったい何がどうなっているんだ・・・・)


 竹市は、今日の守護の仕事に向かう。



 戦争まで後二日・・・・

「上野は嫌われてるねえ」


「まあ、やったことがあれだからな」


「それにしても、僕の代わりにこのコーナー上野がやる予定があったらしいよ」


「それを見事阻止したわけだな」



 小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。

 お読みいただきありがとうございました。

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