覚悟は決めた件について(仮)
「俺は・・・・」
かおるは視線を落とした。
良太郎の言葉が嘘だとは思えない。
だが、今かおるの目の前に居る人物、江良昌樹は圧倒的力を持っている。
もし、良太郎の言うとおり神殺しを成し遂げることができるとしても、あの人物をかいくぐってそれを成し遂げるにはかなりの労力がいるだろう。
果たしてそんなことができるのか・・・。
それに神殺しを成し遂げたとしてもハルカの精神が本当に救われるかどうかもわからない。
それならば、天邪鬼が本当に約束を守るかはわならないが、天邪鬼側につくほうがハルカを救う確率は高いのではないか。
いや、それも望み薄か・・・?
「かおる」
良太郎の声がかおるに届いた。
その声が届くまで、良太郎は幾度か、かおるに声をかけていたがかおるには聞こえていなかった。
かおるはゆっくりと良太郎に視線を向ける。
良太郎はかおるに微笑んだ。
「大丈夫だよ。君はまだ戦える」
かおるは、幼き日の思い出を思い出した。
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「もし、私がどうにかなったら、あんたはどうするの?」
中学の卒業式の日、ハルカがそんなことをいきなり聞いてきた。
「え? 何いきなり」
「いいから答えなさいよ」
「はあ、まあできることはやるかな」
「ふーん。そう」
「なんの話なんだよいったい?」
「そのときは信頼できる人をしっかり頼ってよね。あんたは所詮しょうもない頭しかしていなんだから」
「まあ、それは否定しないけど」
「でも別にそこまで真剣に私を救おうだなんて考えなくてもいいわよ。自分でなんとかするから」
「なんだよそれ。淡白だな」
「私は、自分は大事にしなさいってことを言いたいの。つまり、あんたは自分のことだけ考えてればいいの。ただでさえ弱い頭なんだから、他人のことなんか考えてもどうにもならないんだから」
「へいへい。まあ俺はハルカのこと他人だなんて思ってことないけどな」
「なっ!」
ハルカのほほが赤くなる。それは耳にまで広がっていた
「変なこといわないでよ!」
ハルカはかおるの肩を勢いよく叩いた。
今思えばこのときのハルカは、自分がこうなることをわかっていたからこそ、発言した言葉だったのだろう。
そして、俺に無理をさせないためにあんなことを言ったのだ。
つまり。ハルカも神をどうにかしようだなんてことは考えていなかった。
ハルカが選んだ道だ。
俺に何もいわないで、選んだ道なんだ。
なら、俺も自分で自分の選択をしてもいいじゃないか。
どれだけ愚かな選択肢だとしても、自分がやりたいようにすればいい。
そうだろ? ハルカ・・・・。
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「かおる?」
かおるがその場でゆっくりときしむ体に鞭打ちながらたつ。
「俺は・・・」
天邪鬼をゆっくりと見据えた。
「お前からハルカを助け出して見せる」
「それがお前の選んだ選択か?」
「ああ、どれだけ愚かだといわれても俺はそれを選ぶ。そして、俺たちの平穏で幸せだった未来を取り戻す!」
「ああ、本当に愚かな選択だ・・・」
天邪鬼は、顔を手で覆った。
「なら、容赦はしない」
かおるは良太郎のほうを向いた。
「教えてくれ、俺はどうすればいい?」
「いい答えが聞こえてよかったよ」
良太郎が微笑んだ。
「ベルフェゴール。僕を食え・・・」
「え?」
かおるは、そこで一瞬固まる。
「いったいどういう・・・」
「今この中は漆黒の祭典の中だ。つまり、僕かかおるのどちらかが敗れない限り、まずここから出ることはできないんだよ」
「でも、お前がそれをアレンジしたんだろ? そんな制約ももう白紙になってるんじゃ・・・」
「それはないよ。それに僕とかおるの漆黒の祭典はベルフェゴールが発動したものだ。僕の力が関与することはできない」
「それって・・・」
「はははははははははは」
そこに汚い笑い声が飛んできた。
かおるはその笑い声を放っている者をにらみつける。
「所詮は、そんなものだ。どうせ、貴様たちは何もできないのさ! ここでルシファーが消えてしまえば、誰もサタンが行ったことをしるものは居なくなる。つまり神殺しなどできないわけだ。まったく取り越し苦労だったようだな」
「お前!」
「かおる!」
かおるの怒りを良太郎が言葉で制した。
「全部、僕の計画通りなんだ。漆黒の力が発動している今、覚悟を決めたかおるがすべき行動は僕を飲み込むことだ。それが、唯一の道なんだよ。僕は最初から覚悟は決めているんだ」
「でも!」
「ちょうどよかったんだ。これで、最初から僕は僕の力をかおるに譲渡するためにここに来たんだからね。だから頼むよ。僕の気持ちを汲んでくれ」
「俺は誰の犠牲も出さないで・・・」
かおるの言葉が、揺れる。
「犠牲を出す覚悟がないものには誰もも救えない。君はもう覚悟を決めたはずだよ? それとも、ここでその覚悟を翻すのか? それとも、大事なことはベルフェゴールに任して、自分は殻に閉じこもるつもりかい?」
良太郎の語気は強い。
だが、これはすべてかおるを思ってのこと、これから起こることを考えれば、ここは乗り越えなくてはいけない壁だ。
「俺は・・・・」
かおるはあふれる涙をこらえる。
そして、良太郎を真剣に見据えた。
そして、残りの力を振り絞り。
良太郎に、手を掲げる。
「お? 本当にするのか? まさかここで仲間を殺す絵が見れるとは思っていなかったぞ」
天邪鬼のあざ笑うような声が聞こえてくる。
「後で、全部わかるよ・・・」
「・・・・・」
覚悟は決めたのだ。
そう。ハルカを助けるために・・・・
(俺は・・・・・)
「え? これって僕死んじゃう流れ?」
「さあ、どうなんだろうな。作者しだいじゃなないか?」
「でも、確か設定てきには、僕は作者に一番近い存在だって」
「だから、消したじゃね?」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。