どんな契約にも欠陥はあるものな件について(仮)
「それって、結構時間的なスパンが短いよね?」
「ええ、そうですね。それが、3日ほどでおこりました。」
3日で、宮内家が誇る精鋭がやられたわけか、おそらくそれは、能力者の世界ではすごい話であることが、何も知らないかおるでも理解ができた。
「その3日目、わたしは、近衛部隊の半数が壊滅した日、わたしは彼に会いました。」
「え!? それは、その場にいたってこと?」
「いや、そうではありません。彼が近衛部隊に傷を負わされて逃げた後、いや、その逃げた先が宮内家でした。」
かおるは、首をかしげる。宮内はそれを見て、その意味を彼女は途中で理解する。
「いや、別にわたし達、宮内家が彼をかくまったとかではないですよ。」
「そうだよね。」
かおるは微笑む。まさかの宮内家が上野をかくまっているとかいう複雑な展開なのかと、内心ビックリしていた。そうでなくてよかった。のかどうかはわからないが、まあよかった。
「我が家に宣戦布告に来ました。」
「宣戦布告? でも、もう攻撃は始まってるわけだよね。それとは違うものってこと?」
「そうですね。違うというか、取引みたいな感じですかね。」
「取引ね。これ以上被害を出したくなかったら、どうのこうのってな感じで?」
「ええ、そんな感じですね。」
「上野とかいうのが欲しているのが」
「土地の管理権利」
宮内が一層、真剣な顔をする。
「これ以上被害者を出したくなかったら、それを寄越せと言ってきました。そうでなければ、戦争を起こすと」
戦争とは物騒な言い方だな。かおるは普段聞きなれない、教科書でしか習ったことがないその単語を聞いて思う。能力者同士の戦いでは、それが集団になると、それを戦争とでも表すのだろうか? そんな疑問が頭をよぎり、気にはなるが、状況を考えて、ここも聞くのはやめにした。
「それで、なんて答えたの?」
「すぐには返事ができないといいました。事が大きいので、わたし一人では決めることはできないと」
「その場には宮内さん一人だったの?」
家に来たということだったので、かおるは、家のものもいたと思っていた。そう例えば、先ほども出てきた父親とか。
「彼は、わたしの部屋にきたので・・・。」
「直接?」
「詳しくはわかりませんが、そうだと思いますよ。特に入り組んだ家でも、罠とかがある家でもないので、まあ、来れると思います。」
その表現からすると、そんな家もあるということなのだろうか?かおるは思った。
「そっか。ってことは、宮内さんが管轄理事になっていることを知っていてきたってことだよね? それって、他の人でも簡単にわかることなの? それこそ情報屋みやいな人間が手に入れられる情報?」
宮内はかおるの言いたいことが何なのかは分からなかったが、答える。
「優秀な人なら、もしかしたら・・・。ですかね。もちろん、祖母が土地を離れていることがまず極秘事項ですから、わたしが代理をしていることもそうなります。でも、彼が祖母がいない間を狙ってきたとしたら、そもそも、わたしのことも知っていたことになりますかね。何かあるのですか?」
宮内がかおるに問う。
「ううん。特に何かあるわけじゃないよ。」
かおるは、自分の中に少し引っかかるとことがあるにはあったが、明確に人に説明ができるほど、固まったものではなかったので、ここでははぐらかした。
それに対して、宮内も特には追及はしてこなかった。
「そうですか。わたしはそれがあって、正直どうしていいのかわかりませんでした。祖母が帰って着てくれればよかったのですが、なぜか、祖母に連絡が付かなくて」
「おばあさんは、いつに帰ってくる予定だったの?」
「ちょうど、一週間ほどして帰ってきます。」
上野はそれも知っていたのかもしれないな。だからこそ、この時期に土地の取引を持ちかけてきたのかもしれない。でも、ここでひとつの疑問が起きる。
「今気がついたんだけど、土地の権利を譲ったらいいんじゃないの?」
その言葉に宮内が、なんでそんなことを?と言いたげな顔をする。まあ、無理もない。だが、彼女はすぐにその顔を元に引っ込めた。流石、お嬢様。かおるはそう思う。
かおるは、そういったことの理由を話す。
「もし、権利を譲るとするだろう? 最初こそしんどいかもしれないが、後、一週間もすれば、最強の矛であり盾であるおばあさんが帰ってくるわけだ。それで、上野をやっつけてくれれば、万事オーケーじゃないのか?」
おばあさんを、捕らえることができるかもしれない近衛部隊がやられたといっても、完敗したわけではない。傷をつけることはできた。一週間もあれば、ある程度の戦力をつくることはできるだろう。それに、宮内家最強の祖母が加われば、なんとかなりそうなものである。というかそれでなんとかならなければ、それこそどうしようもない。
かおるは自分の言ったものが結構いい線をいっているものだと思っていたので、自信があったが、宮内の顔の表情はピクリとも動かなかった。
宮内が口を開く。
「それは、わたし達の中でも出ました。」
(マジか!二番煎じだったか!)
「でも、もし土地の権利が宮内の家からなくなれば、覇竜は我々に力を貸してくれなくなります。それが、我々が覇竜と交わした契りなのです。安寧な土地を守るために力、それが覇竜の力です。」
「つまり、土地の権利を譲ってしまうと、おばあさんがまず力を使えなくなるということか。」
「ええ、そういうことになります。なので、祖母の帰りを待つというのは期待できません。」
まったく、変な契りを結んでくれたものだ。かおるは思った。いや、まあ、力をそもそも貸してくれている時点で助かっているのだろうけれども。
でも、それこそ八方ふさがりではないか。
「それなら、どういう結論に達したの?宮内さんが戦うとか?」
「わたし個人では勝てないでしょう。近衛部隊の中には、個人のレベルとしては、今のわたしより強い人もいますから。なので、結論は・・・・。」
宮内が間を置く。
「人柱を立てることになりました。それで、覇竜から、さらに力を得た。わたしが彼を倒す。」
「人柱!?」
また、今の時代には不釣合いな言葉が出てきたものだ。