最後にはど突き合いになる件について(仮)
かおるは右腕をだらんとして、腰を曲げてゆっくりと立ち上がった。
「流石にその腕やったら、もう戦闘は無理やろ。もうあきらめたらどないや?」
「はは、そうですね。正直、江良さんに勝つ想像がまるでできないですよ」
かおるは左手で左ふとともに手を着いてから、一機に伸びをした。
「はあ、でも。俺にも引けない理由があるのは知ってるでしょ?」
「ああ、せやな」
「だから、最後まで足掻きますよ。俺は」
と、いいことを言ったものの。確かにこのままではまともな戦闘ができないのは事実だ。
これはでかおるは、中遠距離からの攻撃を中心として江良さんと対峙してきた。これか江良さんの攻撃力が強すぎるので、彼がおそらく基本とする近距離戦闘は避けたほうがいいということからだ。
だが、その中距離戦闘でかおるが江良さんに与えることができたダメージは、最後のコンボによる右腕の手首から肘までの火傷だけだった。一般人でそこまでの負傷ならばすごい重症だが、かおるの全力の攻撃でそれだけでは明らかに割りに合わない。
ということはやはり、近距離からの攻撃を加えないと勝機はない。
(問題は右腕か・・・・)
かおるは左腕で、右腕を抑えた。少し触れただけでも激痛が走るほどの負傷だが、戦闘で気分が高揚しているためか、不思議と痛みは消えていた。
かおるは、残りのすべての力を使い切る覚悟を決める。
全身全霊で向かっても勝てるかわからない相手だ。なら、出さなければ絶対に勝つことはできない。
かおるは空に向かって一息長いため息を漏らした。
「江良さん、俺は今から玉砕覚悟で行きますからね。覚悟してください」
「おう」
江良さんはかおるの言葉に笑顔で返した。
別に、かおるが江良さんに対して、そんな宣言をする理由はない。だが、なぜか彼にはそうさせる雰囲気があった。そう、状況こそ江良さんはかおるにとっての敵だが、彼はそんな立場の人間ではないのだ。
「ヒール(回復)」
かおるのその言葉で右腕の腫れがおさまった。完璧ではないが、これである程度戦うことができる。後何回使えるかは気力次第ってとこか。
かおるは、江良さんに構えた。
そして、地面を勢いよく蹴る。と同時にかおるの体に黒雷炎が一瞬で全身に付加される。
「はあ!」
かおるは全身に黒雷による電気信号を体にかかるダメージを無視して強化しまくった。
(江良さんの攻撃を受けることになるとしても、できるだけ受けないほうがいいに決まっている)
かおるは高速で江良さんとの距離をつめる。
「はや!」
江良さんがその動きに一瞬驚くが、すぐに平静に戻った。
そして、片足を上げる。
「まあ、でも。予想するにもうあの瞬間移動は使えんみたいやな。それやったら!」
その足を勢いよく地面に下ろした。
すると、地面は江良さんを中心にすさまじい地割れお起こす。
かおるの直進運動はその地割れによって阻まれ、一瞬動きを止めた。
江良さんはその静止を見逃さない。今度は彼がかおるとの距離を回りにある先ほどの衝撃で浮き上がった雑多なものを気にしないで詰め寄った。
「うらああ!」
江良さんからの鉄拳がかおるに飛んでくる。
かおるはその鉄拳を体を後ろに倒して交わす。そして、体のそりをなんとか保ち。戻る反動の勢いをつける。
「うんん!」
かおるはその反動から江良さんに向かって渾身の頭突きを放つ。
その攻撃を予想していなかった江良さんはその勢いに押されて、一瞬後退した。
かおるはすぐに体勢を整えて、江良さんの顔面めがけて高速の左パンチを繰り出す。
しかし、江良さんもすぐに体勢を整える。
江良さんは、かおるに左に左を重ねる感じで鉄拳を繰り出してきた。
二人の拳が交錯して、お互いの顔面めがけて放たれる。
「ぶふっ!」
「ぐあ!」
お互いの拳が、顔面に直撃して、二人とも、後方に吹っ飛んだ。
かおるは、後ろの木にぶつかり。江良さんはある程度のところで自力で踏ん張る。
あきらかにダメージはかおるのほうが大きい。
「ふう、ヒール(回復)・・・」
だが、かおるはその言葉で少しだけ回復する。
二人は、またお互いに距離をつめていく。
ある程度のところまで近づくと、互いに走り出した。
「やっぱりど突き合いはテンションがあがるな!」
江良さんの右鉄拳がかおるを襲う。
かおるは、その攻撃を体を半分ひねってよけて、逆に江良さんの顔にパンチを放った。
威力重視ではなく。速さ重視のそのパンチは、江良さんの顔面に直撃する。
「く!」
その攻撃で一瞬、硬直したのを見計らって、今度は最大威力の右鉄拳を江良さんのお腹目掛けて放つ。
かおるの拳が江良さんの腹にめり込む。
が、江良さんはその攻撃を耐えて、かおるの腕を取った。
「おおおおおらあああああ!」
江良さんが、かおるをハンマー投げの要領で飛ばす。
「ぐあ!」
かおるは、かなりの勢いで地面に落ちた。
「はあ、はあ、はあ」
かおるは、ゆっくりと起き上がる。
体全身が、悲鳴を上げる。筋肉が無理な動きでちぎれている。
だが、まだだ。
「はあ、ヒール(回復)・・・・・・」
「江良さんとど突き合いとかしたくないわー」
「いや、俺もしたくないよ? でも作者が調子に乗って書くからさ」
「最低な作者だね」
「いや、本当にそうだ」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。