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いきなり漆黒の力手に入れちゃった件について(仮)  作者: 漆黒の鎧
第三部 てこ入れ回な件について(仮)
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予想外のさらに予想外な件について(仮)


「いったい何がなんだかわからねえよ」


 かおるは片手で顔を覆った。


「かおる」


 良太郎のやさしい声が聞こえてくる。


「本当に今までごめんね。君をだますことになって、でも、これだけは信じてほしい。僕らの行動は全部君たちのためだってことを」


「はは、なんだよ。それ? 俺は今、お前を殺せって言われてるんだぞ?」


「うん」


 良太郎の表情は穏やかだった。


「どうして、お前はこの状況でそんなに冷静なんだよ! これもお前の計画のうちってやつなのか?!」


 かおるは声を張り上げる。

 そんな二人のやり取りをハルカの体は見ていた。


「かおる、全部後でわかる」


「今、教えてくれよ」


「それはできないんだよ」


「どうしてだ?!」


 良太郎は、そこで黙った。


 かおるの頭の中は混乱し続けていたが、かおるはなんとかそれを抑えようとしていた。このままでは、良太郎に怒鳴り散らかすだけだ。


「ひとつ、聞かせてくれ」


 かおるは良太郎に落ち着いた目を向ける。


「なんだい?」


「お前は、いや、お前たちは敵じゃないんだな?」


「それは信じてもらえればいいよ。それに、いろいろなことはすぐにわかる」


「わかった」


 かおるは、ハルカの体に向き直った。


「そいつを殺す決心はついたか?」


「ああ、俺は・・・良太郎を殺さない」


「ちょっ、かおる!」


 良太郎が驚く声がした。


「俺は誰の犠牲もなく。ハルカを助けだして見せる!」


「それは無理だ。なぜなら、この体の所有権が私にあるということは、この体の命も私が握っているということだ。つまり、お前は私のいうことを聞くことでしかこの娘を助けることはできない」


 確かにそうだ。

 かおるは思った。

 現状、向こうの手にハルカが落ちているということはもう詰みに等しい。

 そして、良太郎は自分が殺されることで、その現状を打破しようとしていると、かおるは彼の様子から感じた。 そうでなければ、こんなところにのこのこと出てくるようなことはしないだろう。今までのことが良太郎の考えたことで動いていたとしたら余計そうだ。あの自称神様が、ここで良太郎を殺せとかおるに命じることを彼が予想できないはずがない。


 だが、そんなことはさせない。


 かおるは、先ほどまでの混乱を自分の中で収めたことにより、非常に頭の中がクリアとなっていた。


「神様さんよ。どうしてお前はハルカの体をのっとるようなことをしているんだ?」




  -   -   -   -



 良太郎は内心であせっていた。

 まさか、かおるがここまで強い人間だとは予想していなかったからである。


 かおるが、考えていたことは大体あたっていた。


 良太郎は、絶対的力を持つ神の力に対抗するために、仲間を集め。そして、戦争を起こすことによってその流れを変えようとしていた。

 その中で自分がかおるに殺されることも計画の中に入れていたのだ。

 

 さらに、良太郎がかおるに殺されることは、重要なファクターだった。

 漆黒の祭典により、自分の力はかおるのものとなる。そして、かおるに眷属の譲渡が行われるので、良太郎が集めた仲間たちの力が消えることはない。そして、一番重要なのは、そのときに自分の記憶をかおるに譲渡することだった。

 これは、自分がルシファーとして生きてきて、さらに自分の行動、考えについての記憶だ。

 これがかおるのもとに行くことによって、かおるはすべてを理解して行動ができる。


 ただ、それだけが、良太郎が計算した中で、神を越えることができるものだった。


 そのために、自らに魔術を行使して記憶を譲渡できるようにしていた。


「神様さんよ。どうしてお前はハルカの体をのっとるようなことをしているんだ?」


 目の前でかおるが神に、それを尋ねる。


「そんなことは簡単な話だ。ただお前をだますためにこの体を借りたまでだ」


「ふーん。そう」


 かおるはそれを興味がないという感じで流す。

 良太郎はかおるの考えがまるでわからなかった。


「お前は神様なんだろう?」


「そうだ」


「なら、どうして自分で大罪悪魔を殺さないんだ?」


「それだと、面白くないからだよ。私は神として人間に適切な試練を与えているんだ」


 井上 ハルカは不敵な笑みを浮かべる。

 

 神は傲慢だ。

 いや、正確には神の中にも傲慢なやつらがいる。

 傲慢を司る自分が言うのもなんだが、やつらは傲慢だった。自らが人間を作り出し、さらにその上の存在として手のひらの上で彼らを動かすことを楽しんでいる。

 彼らは誰一人、人の幸せなど願ってはいない。むしろ不幸を見たがっている。抗えない力の前で挫折する人間を見るのを至福としている。


「それはうそだろ?」


 かおるが言う。


「お前は、何か理由があってハルカの体がほしいんだ。そのためには大罪悪魔を殺さないといけない。そうじゃないのか?」


 その言葉は良太郎に衝撃を与えた。

 それは彼の中にある答えとは違うものだったからだ。


 一瞬の沈黙。それがかおるが発した言葉の真理を物語っていた。


「何を馬鹿なことを・・・」


 井上ハルカは笑う。だが、その表情は無理に作ったものだとすぐに理解できた。


 神が動揺している!


 良太郎はその事実に、心の中で歓喜した。



「流石、かおる」


「まあ、何も考えてないけどな」


「うそん・・・」


「本当」


 小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。

 お読みいただきありがとうございました。

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