幼馴染の真実な件について(仮)
階段を上がりきると、そこには広い平地が広がっていた。舗装された地面が広がり、その奥に大木が一つあるのが見える。そして、その大木の前に一人の女性が立っていることが確認できた。
かおるは、その女性に向かって歩きだす。相手はこちら側に背中を向けていて、こちらに気が付いているのか、そうでないのか、ずっと大木を見ていた。
「ハルカ!」
かおるはその相手との距離が10メートルほどの距離になるとそう相手の名前を呼んだ。
相手はゆっくりと振り返る。
「本当に、あの子・・・。でもまあ仕方ないか。あの子も私・・・」
ハルカが何かぼそっと言った。だが、かおるにはそれが聞き取れなかった。
「帰るぞ。ハルカ」
「それはできないわ」
「どうして?」
ハルカはゆっくりと微笑んだ。
「それが私の運命だから、いや宿命かしら?」
「・・・・、いったいどういうことなんだよ? お前はあのフードの人物と知り合いなのか? 今日、お前は死ぬのか?」
かおるは、ハルカをまっすぐに見た。
「・・・・ええ。そうよ。私は今日消える」
ハルカが少し悲しそうな表情になったようにかおるは感じる。
「いったいどういうことなんだ? ハルカ・・・」
「そうね・・・」
ハルカは空を見上げる。そこには、無数の星たちが瞬いていた。
「あの子の最後のお願いってことかしら・・・。最後の・・・」
ハルカは、ゆっくりとかおるを見る。
「私はね・・・。もう死んでるのよ・・・」
「は?」
「かおるが驚くのも無理はないわ。正確には死ぬ予定だった命を十年引き伸ばしてもらったってとこかしら。十年前のあの日に」
「十年前・・・」
十年前といえば、思い当たることはただ一つ。
お互いの両親が亡くなった飛行機事故のことだろう。
ハルカが右手を後ろにある大木に触れた。すると、目の前が光りだす。
「うっ!」
「十年前の真実を教えてあげる」
- - ー -
「おかあああさあああん。おとおおおさああああん」
「いやあああ、だれかあああ」
「あしっがああああああ」
「いたいよおおおお」
かおるの前に、飛行機墜落当時の映像が再生される。
(これは・・・・)
あたり一面が悲劇の惨劇だ。
かおるは息を呑んだ。
「か、かおる・・・」
そこに一人、知っている人物が見えた。
(ハルカ・・・・)
そのハルカの隣に、もう一人知っている人物が血だらけになって、荒い息を立てている。
(俺・・・・)
知らなかった。俺がここまで重傷だったなんて、記憶では病院で目が覚めたとき、かおるとハルカの2人は無傷に等しかったはずだ。
いったい何がどうなって・・・。
「かおる、しっかりしなさい! あんたはこれから私と一緒に小学校に通って中学校に通って高校に通って、それで・・・」
ハルカが必死にかおるに話しかける。
だが、かおるは荒い息をさらに激しく立てるだけで、どんどん生命のともし火が無くなっていく。
「かおる・・・。だれか・・・・誰か!! かおるを助けて!」
ハルカが叫ぶ。だが、こんな状況だ。誰も助けに来てくれるはずもない。
ハルカが、かおるにさらに近づこうとする。
(え?!)
だが、ハルカの足は飛行機の残骸に挟まれて、それ以上動くことができな状況だ。
「しっかりしなさい。かおる。あんたは・・・」
ハルカの目も命のともし火を落としていく。
そのとき、ハルカの前に一つの明かりが光った。
【娘、お前はこの男を助けたいか?】
「あなたは・・・?」
【助けたいのかと聞いている】
「た、助けたい!」
ハルカが目から涙を流して叫ぶ。
【なら、助けてやろう】
「本当に?」
【ああ、だが、私は2人の命までも助けるだけの力がまだない。だから、貴様は助けられない】
「いいわ。かおるさへ助けてくれるなら・・・」
【ふむ。気に入った。貴様の命も十年くらいなら助けてやらんこともない。それでもいいなら助けてやるが?】
「十年か・・・いいわお願い・・・」
そこでハルカの意識が遠のく。
ハルカとかおる、2人のことを光が包む。そして、光がなくなったとき、そこには無傷の2人がいた。
映像はそこで終わる。
先ほどの同じ光景にと目の前がなった。視界の先にハルカが居る。
「いったい。これは・・・」
「映像の通りよ。私は神様、この大木に助けられた。あんたもね。でもそう。私は十年だけ・・・」
「マジなのか?」
「そうよ。だから、私は消えるの。でも安心して、かおるあなたはこの先も生き続けられるから、それと私の最後のお願いを聴いてくれるかしら?」
かおるは、まだ頭の整理が追いつかなかった。
だが、あのハルカが嘘をつくはずがない。悪い冗談だと思いたいが、そうではないのだ。
かおるは自分の感情を制御して、なんとか冷静に努める。
「何だ?」
「大罪悪魔をすべて、ほろぞすこと。大罪悪魔がいるからこの世界にあんな飛行機事故みたいな悲劇が起こるの。だから、かおる。あんたがその力をすべて飲み込むなさい。それで世界を救うの」
「お前。全部知ってたのか?」
「ええ。もちろんよ。あんたの隣に何年いたと思っているのよ」
ハルカはにっこりと微笑んだ。
かおるは、ハルカの元に歩き出す。最後に彼女に自分の思いを告げるために。
「君は本当におろかだね。おろか過ぎて涙が出そうだよ。君が本当の気持ちを告げるべき相手はそいつじゃない」
「愚か (笑い)」
「おい!」
「君は本当に愚かな人間だね」
「おい!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。