いろんな世界がある件について(仮)
「さっき、俺に見せてくれた力は、どの程度の力?」
かおるが聞く。先ほど見た雷光との比較により、現在の宮内がどの程度なのか、把握しておきたかった。これは、ただのかおるの好奇心だ。
「あれが、本来のわたしの力です。譲渡された力を使うには、少し手順があるので、そうですね。譲渡された力を使うと、物騒な言い方になりますが、この家くらいなら一瞬で消し炭にするくらはできる感じですかね。でも、これくらいなら、かおるさんほどなら軽くできるでしょうけど、その辺の能力者くらいなら充分対処できるくらいには、今強いと思います。」
宮内が微笑む。
ほんと物騒だ。かおるは思った。宮内のまさかの力の強力さに内心ではかなり驚きで、かおるはそれを表に出しそうになるのを必死に絶えていた。
流石は管轄する側の力だ。だが、これが宮内の祖母の力の一旦にしかすぎないなんて、その祖母という人のすごさがさらに伝わってくる。
「そうなんだ。」
ここまでの話では、特に問題がないように思えるが、おそらく、その辺でない人間が関わってきたのだろう。もしかしたら、祖母であれば軽くあしられるほどの人物、いや、祖母がいたならこの土地に来ていないかもしれない人物。
「それで、宮内さんがおばあさんの代理となって、問題が起きた。」
「はい、そうです。わたしが代理として管轄理事になったのが、10日前です。5日間ほどは何もなかったのです。というか。ここ数年なにか大きな問題があったわけではありません。しかし、」
そこで、宮内が言葉に詰まる。よほど、何かあったのだなと、かおるは感じた。
宮内は自分で整理ができたのか、話を続ける。
「ある男が6日目にこの土地に来ました。名前は、上野 友也。彼が来て状況はいっぺんしました。彼はいきなり、宮内の家に乗り込んできて、こういったのです。『ここの土地の管理権限を寄越せ。』と。」
「それは、随分大胆だね。」
「ええ、最初は誰もとりあいませんでした。最初に対応したのは、わたしの父です。事務関係はもともと父が執り行っていたので、来客の対応も父がいつもしていて、よほどのことがあれば祖母がでる形だったので、そこで父は彼をすぐに追い出しました。」
「まあ、そうだよね。」
「でも、いけなかった。祖母が帰ってくるまで、わたし達は曖昧な態度をとって、状況を伸ばすなどのこ対策をせめて採るべきだった。彼はその後、ある行動にでます。」
テーブルの上に置かれている手が強く握られるのが、かおるにもわかった。
「その行動とは、能力者狩りです。しかも、手当たり次第に人を傷つけていきました。能力者かそうでないかは普段はわかりません。なので、彼は適当に人に喧嘩を売っていき、俗に言う情報屋を探し出しました。その間になんの力も持たない人も犠牲になっています。」
宮内の表情はその出来事の深刻さを伝えていた。
「情報屋ですから、この土地にいる能力者のことはある程度わかります。その人物から無理やりに引き出した情報をもとに、狩りを始めました。」
狩りか、おそらくその表現方法からして、単純な喧嘩のようなやり方ではなかったのだろう。そこには相手を狩るための意図が組み込まれていて、体だけでなく、心にも傷が残るようなやり方が組み込まれる。醜悪なやり方。それが、人を人が狩るという表現の中にあるものだと、かおるは思った。憶測でしかないが、その答え合わせはしかなった。宮内の表情からして、そこは踏み込んではいけないと感じたからだ。
だが、他にも疑問はある。かおるはそれは確かめてもいいと思い。聞く。
「でも、そこまで問題を起こしたなら、それこそ、宮内さんの出番ということになるんじゃ?」
「ええ、ここまでくれば緊急事態です。なので、宮内家が持っている鎮圧部隊がまず動きました。通常、土地を管理するものは、民間から協力な能力者を集めた部隊を持っています。なので、そこが最初に動いて、それでも手に終えない場合、それこそ同時多発的な暴動などのときに管轄理事が動きます。」
「そんなものまであるのか。複雑だな。」
かおるは、心の声が漏れる。
「しかし、彼の力はすさまじく、彼の拘束に向かった最初に部隊は全滅、その後、ことの重大さに気が付いた父は、その総合力では祖母ですら、拘束することもできる可能性があるといわれる。宮内家直属近衛部隊を動かしました。この部隊は、全員が宮内家の血が少しでも入っている分家の人達です。昔から、本家を守るために、青春のすべてを訓練にあててきた精鋭といってもいいでしょう。」
「でも、その精鋭ですら拘束できなかった?」
「ええ・・・。半数が重症を負い。彼に逃げられました。部隊も彼に傷は負わせたのですが、残念ながら・・・・。」
上野というやつはよどのやつらしい。ここまで聞くと化け物だとしか思えない。
あまりの、今まで暮らしてきた世界と違う世界の構造の話を聴いて、驚きこそ、かおるはあったが、不思議と混乱はしていなかった。今は落ち着いている。
もしかしたら、自分の中にある能力者のいる世界というものに対しての憧れが、そうさせているのかもしてない。いささか不謹慎な感情だが、深層心理はわからない。
かおるは宮内をじっと見ている。
宮内の顔はどんどん辛い表情になっていく。それを、不憫にかおるは思ったが、今はとりあえず話を聞くことが先決だと思い。慰めはまだしない。