ばれてますやんな件について(仮)
「お、おい! まだ買うのか?!」
「当たり前でしょ、まだまだ欲しいものはたくさんあるんだから」
「へいへい」
かおるは、ハルカについていく。
かおるの両手にはいくつもの紙袋がぶら下がっていて、日用品から嗜好品まで様々なものをハルカは買っていた。
だが、これはすべてハルカが自分で買ったものでまだかおるが買ったものはないのでこの中に誕生日プレゼントはまだない。
「ねえ、かおる」
突然、ハルカが止まり振り向く。
「私の誕生日プレゼントはさ。また今度でもいい?」
「まあ、別にいいけど、どうして?」
「ちょっと、いろいろ考えてから決めたいのよ。そのためにあんたもしっかり貯金しときなさいよね!」
ハルカはまた先を颯爽と歩いていく。
「へいへい」
かおるは重い荷物を今にも引きずりそうになりながら付いていく。
それから、ハルカはショッピングモールをすべて回った。といってもすべての店を見たわけではなく。一階から最上階まで一階ずつ上がっていったというわけだ。時刻は午後四時半すぎ、もう家の準備は整っているだろう。
「ハルカさん。ハルカさん。もうそろそろいいんじゃないですか?」
かおるはベンチに腰かけうな垂れている。流石に荷物もちでの二時間歩き回るのは疲れた。
「そうね。じゃあ、帰ろうかしらね」
ハルカはかおるの隣にたってすがすがしい顔をしている。彼女はまったく疲れていないようだ。
「帰ったらなんか、あるんでしょう?」
「ん????」
かおるの思考が一瞬止まる。
「まさか、ばれないとでも思ってたの? 本当に低脳ね。あんたの変なリアクションと、宮内さんたちの行動から考えれば簡単に導き出される結論だわ」
「な、なにもないよ?」
声が裏返る。
「まあ、いいわ。せいぜい期待でもしてるとするわ」
ハルカがまた颯爽と歩いていく。かおるはあわてて荷物を再度持ちついていく。そして不安定な中、なんとかスマホを取り出して、良太郎たちとのグループに連絡をする。
「ばれてたあーーーー」
と。
- - -
ハルカの誕生日会は、残念ながらサプライズとはならなかった。
だけど、結構盛大なパーティーとはなった。正子たちの協力もありハルカの友達が六人ほど、さらにかおるのクラスメイトが2人、そこに正子たちの三人が集まり結構な賑わいを放っていた。良太郎と竹市は流石にこの中に自分たちが入るのは忍びないと、準備だけして帰ったらしい。
宴は午後八時ごろ、解散となった。
「今日は、なんていうか2人ともありがとうな」
かおるは今日来てくれた二人に感謝の言葉を言う。
「別にいいよ。僕らも楽しかったしね」
「上手い飯が食えれば僕は別にいいよ。ここで変に僕たちに義理を感じる必要なんてないからね。気持ち悪い」
「気持ち悪いとはなんだ。せっかく人が感謝を述べてるのに」
まったく、やっぱりこの田中とはそりが合わない。いや、向こうがあわせなさ過ぎる。
そんな2人を見て中田 春樹が、まあまあと間に入る。
かおるが呼べたのはこの2人だ。どちらも中学からの同級生ということもありハルカのことを知っている。だめもとで二人を誘ってみたら案外簡単に二人とも来た。他にもう一人同じ存在の人間がいるが、まああいつは論外だろう。
「まあ、孝も悪気があるわけじゃないからさ。僕たち友達だから、そんなこと気にするなってことだよ」
「いや、悪気90パーセント、果汁10パーセントだ」
「意外に果汁多いな!」
かおるは2人を玄関から少し出たところまで見送った。
田中は最後まで悪態をついていたが、まあ今日のことは感謝をしている。2人がいたからこそ、かおるがハルカの友達から小言をあまり言われなかった。もし、彼らがいないで男がかおるだけなら格好の的となることは明らかだ。
ハルカたちの友達もハルカの見送りでさっき帰っていった。
かおるは今回のパーティーのメイン会場であるリビングに戻る。
「あ、ごめん。俺も手伝うよ」
リビングでは正子たち三人が部屋の片付けをしていた。
「いえいえ、かおるさんはお疲れでしょうから座って待っていてください。わたし達で片付けますから」
「いや、少しくらいは手伝わないと、罪悪感できちゃうから、手伝うよ」
かおるは、近くにあった飾りつけを取り始める。
そこに見送りを終えたハルカが戻ってきた。
「かおる。それに宮内さんと、篠原さん。川瀬さん。今日はありがとう。私のためにこんなことをしてくれて」
ハルカがリビングの入り口で頭を下げる。
「おいおい、ハルカ。そんなかしこまるなよ。別に大したことしてないからさ」
「ハルカさん。頭を上げてください」
正子の言葉でハルカが頭を上げる。
そして、正子たちがハルカの側まで寄った。
「わたしは今日とても楽しかったです」
「俺もだぜ」
「わたくしもです」
「ハルカさんはどうでしたか?」
「私もとても楽しかったわ」
ハルカの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいるような気がした。
「なら、またパーティーやりましょう! そのときはハルカさんも手伝ってください。ね?」
「ええ、喜んで」
その場の四人がにっこりと微笑んだ。
かおるはそこで、ハルカに対して一歩踏み出す。ここしかないと思ったからだ。
「まったく、何してるのさ。かおる」
「いや、まあ仕方ないだろ? でもまあ成功したからいいじゃないか」
「はあーーーーー」
「ため息やめろ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。