なんとか収める件について(仮)
ガチャ
かおるは、そっと玄関のドアを開けて中に入った。別にこそこそする必要はないのだがなんとなくそうしてしまう自分がいた。
なるべく足音を立てないようにしてリビングへと向かう。
「あれ?」
リビングにはハルカの姿はなかった。
「上かな?」
かおるは、リビングの扉のすぐ隣にある階段に足を掛ける。そこもなぜか音をあまり立てないようにして上がっていく。
かおるに部屋を通りすぎて、その隣にある扉の前まで来た。
かおるはそっとその扉に耳を押し当てる。そして中の音を確認する。
(お、いるな)
中からは微かに生活音がする。何か自分が気持ち悪い行動をしているような気もしなくはないが、それは今は気にしないことにした。
「っふー」
かおるは胸に手を当てる。そしてノックをした。
コンコンコンという乾いた音がする。
「ハルカ!」
かおるは相手の返答を待つ。
「なにー!」
部屋の中からハルカの声がした。それで少しかおるは安心する。何せ最近少し物騒なことがあったものだから気が少し立っていた。
「ちょっといいか?」
「ちょっとまって」
かおるは扉から少し離れた位置に下がった。
中から足音がしてからドアが開かれる。
「どうしたのよ?」
ハルカがドアを半分ほど開けてたずねてくる。部屋の中をあまり見られたくないのかもしれないなとかおるは思った。
「いや、ちょっと聞きたいことがあってさ」
「聞きたいこと?」
「そう」
「何よ?」
ハルカの顔を疑いの表情になる。
「いやあ、それがさ。ハルカ、お前・・・・」
- - - -
「それで? お前はそこで明日死ぬなら何をしたい? って聞いたのか?」
場所は先ほどの公園、そこにまた、先ほどと同じ面子が集まっている。いや、正確にはかおるが戻ってきたことにより同じ面子になった。
かおるは、竹市の責めるような声質の問いに首肯する。
それを見て竹市がはあ、と大きくため息を漏らす。
「お前、それで相手から欲しいものが聞きだせると思ったのかよ?」
「いや、聞いてくれよみんな」
かおるはみんなを顔を見渡して言う。みなの顔を一様に哀れなものを見る顔をしていた。正子だけが、幼い子供を見るような顔をしている。
「誕生日の前日に相手の欲しいものを、相手に悟られないように聞くには何か突飛な表現が必要だと考えたんだよ。それを考えた結果、その言葉が出たわけ」
「いや、かおる」
良太郎が言う。
「明日死ぬなら何したい? っていう言葉も十分に悟られる表現だからね。明日って言ってるからね」
そこで、かおるははっとした表情になる。
それを見て、竹市が頭を抱える。
「まさか、相手が幼馴染のことになると、こいつがここまでポンコツになるとは・・・」
「いや、でもそれでの返答が大事ですよ!」
正子が言う。おそらくフォローしてくれているのだろう。
「ハルカさんはなんとおっしゃったのですか?」
「ああ、それなんだけど・・・」
かおるは、少し上を見ながらそれを聞いたときのことを思い出す。
「少し間があったんだよ。それど、その後になんか悲しい顔して、いつも通りの日常を心から楽しむって言ってた」
「それ、完全にばれてるやつなんじゃねえか?」
トシコが言う。
「そうですわね。ばれてますわね」
孝子が言った。
そこで、全員がこれからどうしたものかと思案する。
相手の欲しいものがわからなければ、これからの行動をどうすればいいのかわからない。
そこから少しの間、間ができる。
「こうなったら、やりようは一つしかないよ」
そこで良太郎が腰に手を当てて言う。
「何をするんだ?」
竹市が聞く。そしてみなの視線が良太郎に向けられる。
「盛大なパーティーをするんだ。それを誕生日当日のプレゼントとするんだよ」
「だけど、当日に何かプレゼントがないといやじゃないか?」
「そこは素直に謝るんだよ。誕生日プレゼントはお前が本当に欲しいものを渡したいから、今度一緒に買いにいこうって言うんだ。変に適当に何かを買っていくよりもそのほうがいいと俺は思うけどね」
「パーティーか・・・」
「女性陣もそうじゃない? 後日になるけど一緒に買い物とかいいじゃないかな?」
「確かにそうですね。当日はパーティーがあるので、それで満足できますし、後日にプレゼントを買いに行くのでそこで何か不満が残ることもないんじゃないでしょうか」
正子がうなずく。
「そうだな。これまで何もしてなかったんだ。多少は怒られるかもしれねえけど、しっかり謝ればオーケーだろ」
「そうですわね」
「よし! それじゃ、パーティーの準備をこれからしようか」
良太郎が手をポンと一回叩いた。
「でも、パーティーっていっても、どうするんだよ?」
かおるが聞く。
「それは、お前。おのおのの友達を連れてきてやるんだろうがよ」
竹市があきれ口調で言う。
「いや、でも俺学校に友達とかいないけど・・・」
まさかの言葉、いや正確にはみなそのこと自体は知っていたが、ここでその発言が来ることに対しての驚きで、一瞬黙った。
そしてあわてて、竹市が言う。
「そ、それはクラスのやつとかに適当に声かければいいだろう。なんなら俺たちが行ってもいいしさ。正子様たちなんかは、個人的に面識もあるからいいんじゃないか? それに、相手の友人にも声は掛けないとな」
変な空気が流れるが、竹市の苦笑いと、みなの彼の意見に対する同意で収まった。
「ほんと馬鹿だよね」
「はあ? 馬鹿っていうほうがー」
「ほんと馬鹿だ」
「最後まで言わせろ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。