変なやつな件について(仮)
相手が取引に応じてくれたとはいえ、大きなことを聞くことはできない。ならば、今一番知っておかなければいけないが相手にそこまでダメージがないものを聞く。それが最善だ。
かおるは、フードの人物と会話をしながら何を聞くべきなのか考えていた。
そして、それを決める。
「今、聞きたいのはひとつ、俺の周りにはどれだけの組織なのか個人なのかはわからないけど勢力がいるんだ? できれば詳しくその勢力の中身まで聞きたいところだけど、それはいえる範囲でいい」
「君の周りにいる組織ねえ」
相手の声はどうして、それを知りたいんだと言う含みをはらんだものだったので、ここはそれに答えることにする。
「ああ、これは俺の感だけど俺は結構いろんなものに巻き込まれてるんだろう? その証拠がお前だよ。いくら俺が漆黒の力を複数持っていると言っても、俺にはなんの野望も考えもないのに俺に接触してきている。だがら、俺かそれとも俺の周囲にいる誰かが、何か大きな渦の中にいるんだろうなとここ最近考えていた。だから、どれだけの勢力がかかわっているのか知りたんだよ。自分の状況を想像しやすいようにな」
かおるは自分の考えを素直に述べた。
それによりかおるは自分の中で心が少しスッキリしているのを感じる。おそらく、誰にも言えなかったことを誰かに向かって言えたことがよかったのだろう。
相手はかおるの言葉を最後までしっかり聞いていた。
「そうだね」
フードの人物は不敵な笑みを浮かべる。そして、なんとなくだが雰囲気がやさしいものに変わる。
「ざっくりだけど教えてあげるよ。今の君の状況ってやつをね」
そういうとフードの人物は片手を前に出した。その手から大きな魔方陣が出現しそれが大きな電子ボードのようなものを創造する。
「まず、そうだな。簡単に言うと中心に稲垣 かおる。君がいるとしよう。これは例えだから、君が中心だは限らないよ?」
「ああ」
「そして、君の近くには何人かの異能力者がいる」
そういうと、ボードの中心にかおるの小型人形みたいなものが映しだされた。そしてその周りに何人かの同じ小型人形が出現する。それは正子や孝子たちのことだろう。
「そして君たちを囲うようにして宮内家がある。まあ。基本的にはこんなものだよね? 今君が認識できるものとしては」
かおるは首肯する。
「そして、ここからが本題だ。この周りには私が知っている中で三つの大きな組織がこの周りを囲んでいるわけだよ」
ボードには宮内家と評されている円の周りに大きな円ができる。
「ひとつは、大罪悪魔ルシファー、もうひとつは同じ大罪悪魔サタン。この二つの勢力が今この土地の中にいる」
かおるはおそらくひとつはルシファーだろうなとは、思っていたがまさかサタンまでいるとは思ってもいなかった。
「そして、最後のひとつこれはまあ、いえないね」
「それはお前が所属している陣営ってことか?」
その問いに相手は微笑みで返してくる。おそらく正しいということだろう。
「まあ、大きく言えばこんなところだよ。後は、少しイレギュラーな存在が何人かいるけどね。その人たちはまあ・・、敵にもなり味方にもなりってことかな」
フードの人物は手を下げる。
すると、電子ボードは音もなく消えた。
「お前は敵なのか、味方なのかどっちなんだ?」
かおるは直球の質問をする。
といっても、この答えは前回の接触のときに向こうから言われている。だが、もう一度相手の口から聞きたかった。
「私はね。一応、立場がいろいろとあるけれどそのどっちでもないというのが、私が望むものだよ」
掴めない人物だ。もしかしたら、こういう人物が最終的にラスボスなんかで出てくるのかもしれないと、かおるは思った。
「それじゃ、今度は君が私の質問を受ける番だ」
「ああ、取引だからな。ちゃんと答えるよ。上野と何を会話したのかだったよな?」
「うん、出来れば一言一句言ってほしいけど、まあざっくりでいいよ」
(上野か・・・・)
先ほどの話を整理すると、上野はかおるたちを囲う大きな勢力のひとつ、ルシファー勢力に属していることになる。その上野が接触を図ってきて、しかもルシファーとやらはかおるとの接触を望んでいるわけか。
かおるはそこまで考えてから、口を開いた。
「簡単な話さ。上野は今さっき出てきたルシファー勢力の一人になっていて、伝言役として俺のところに来た」
「どんな伝言だったんだい?」
「ルシファーが俺と会いたいといっているってさ。だから、今度その日取りを決めるためにまた来るって言ってたよ」
「ふーん」
フードの人物はそこで、少し間を空ける。おそらく何か考えているのだろう。
「そこに江良が現れたわけか・・・・」
フードの人物は小さくつぶやく。
(江良さんも関わりがあるのか・・・・?)
その疑問が浮かぶが、それを今聞くことができる状態ではないと思い。かおるは抑える。
「まあ、ざっくりとそんなことろだな。そっちの役に立つようなことはあったのか?」
「それは、後々わかるんだよ。ふふ。君は本当に変なやつだな」
「へ?」
それは心外だなと、かおるは思った。
「私に今の情報が役に立つのかどうか聞くところがだよ。もしかしたら敵かもしれないのに」
「どっちでもないんだろ?」
なぜだか、かおるはフードの人物の言葉は信用できるものだと、心の中で判断をしていた。
相手は笑っている。
「まあ、いいや。それじゃあね。暗黒廠雲皓」
そういうと、相手は窓から機敏に姿を消した。
「かおるは変なやつだよね」
「え? そう?」
「うん。気持ち悪い」
「そっちの意味?!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。