その山は知らなかった件について(仮)
手に取った新聞にはでかでかと飛行機事故のことが書かれていた。事故当時の写真と、その写真の横に大きく「燃料漏れにより、旅客機が彦山に墜落!!」
「彦山?・・・・」
彦山に墜落したとは、かおるは初めてしった。
彦山とは、かおるたちがいる土地で一番大きな山である。そして、宮内家が管轄している湖の側にあり、毎年かなりの登山客が彦山に登っている。
(ってことは、俺たちはこの土地に落下したってことか・・・)
かおるは、新聞の記事を読んでいく。
かおるたちが乗っていた旅客機、ゴーイング700は、この土地に差し掛かったあたりで、燃料タンクの異常が起こる。機長がなんとか、落下しないように操縦するも、燃料が切れて落下、危うく市街地に落下ししょうだったが、なんとか、山まで踏ん張ったということが書いてある。
現在の調査では、どうして燃料タンクに異常が起きたのか、設備不良なのかどうなのかということが調査されているところであり、幸いではあるが、燃料漏れによる事故のおかげで、墜落したときにはほとんど燃料が残っておらず、大きな山火事にはならなかったとも書いてあった。
かおるは、他の三社の新聞についてもそれぞれ手にとって見る。
どれも同じようなことが書いてあり、違うところといえば、それぞれが、事故の原因や責任が誰にあるのかという自分たちの考えを書いてあるとろこだった。
「もっと先の新聞のほうがよかったかな・・・」
最終的には、旅客機の会社が全面的に責任を認めた。それは、かなり時間が経った後だったと、記憶している。
だから、もっと先の新聞記事でないとそのことは書いていないわけだ。
まあ、後はネットでも見て調べるか、と思い。かおるは最後に、その新聞が発行された事故翌日で確認されている死者が誰なのか書いてある場所を見る。
そこにはたくさんの名前があった。
最終的に事故で確認がされたのは、乗客の約半数がなくなった。これだけでもかなり奇跡的な数字であるとテレビでやっていたのを覚えている。
「もう、この時点で確認されてたのか・・・」
かおるは、そこに自分の両親の名前を見つけた。
特に何か新しい感情があるわけではなかったが、なんとなく名前を指でなぞる。
「帰るか」
かおるは、新聞をとじて、机の上に並べなおした。
そして、控え室と札が張ってある場所に向かった。
「なんじゃなんじゃあ? そんなもんかお前は?」
かおるが、資料室を出て、図書館から出ようとする前に、江良さんにでも挨拶をしようかなと思って、児童コーナーに向かうと、江良さんの声が教室全体に聞こえてきた。
江良さんの周りには、結構な人数の子供が集まっていて、人気であることが伺える。
かおるは、今彼が読んでいる本が終えた後にあいさつして帰ろうと思い。その様子を見ていた。
新聞を読むまでは、書庫で見つけた本を見ようと思っていたが、閉館時間まで時間がないことや、なんとなく気分ではなくなったので、また後日読みに来ようと思った。
スマホを出し、かおるは、彦山 旅客機事故、と検索エンジンに入力する。すると、新聞でも見た事故当時の飛行機の様子や、救助作業が行われている写真とともに、ニュースサイトなどがいくつか出てくる。かおるは適当に一つのものにタッチした。
少しして、表示されたサイトをかおるはスクロールして見る。そこには、新聞で読んだ情報のほかに新しく得る情報は特になかった。
バックボタンを押して、検索結果表示画面に戻る。そして、別のサイトをタッチする。
次のサイトには、事故後の事故調査のことについて書いてあった。
かおるはスクロールする。
事故の責任は、なんとか生き残った機長、旅客機会社、設備関係の人間などが対象となった。だが機長の責任はすぐになくなり、どちらかといえば、市街地に落ちるのを防いだ英雄という風に変わっていく。それは、中の会話を録音しているブラックボックスによって、機長が一生懸命に機体を持ち上げようとしている音声が放送されたからである。
そして、調査の結果、燃料漏れの原因は、燃料タンク近くのどこかが爆発したことによるものだと、判断された。なんとも抽象的な表現だが、山に墜落して旅客機はかなり破損してしまった。あまり詳しい調査はできなかったのだろう。
「はい! おしまい!」
そこまで読んで、江良さんの読み聞かせの終わりの合図が聞こえた。
かおるはスマホから目を上げて、江良さんを見る。
「今度は、これ読んでよー」
「いや、これがいい」
「こっちだってえ」
江良さんの周りには、まだ子供たちが次々に本を持ってきていた。
「お前ら、そんなにいっぱいは読めへんて、次で最後やからな」
「「えー!」」
そのとき、かおると江良さの目が合った。
江良さんは、子供たちに「ちょっとまっとれ」といって、かおるに近づいてきた。
「おお、もう帰りか?」
「はい。大体用事は終わったので帰ります。でも、読みたい本を見つけたので、また別の日に来ますけどね。江良さんは毎日ここにいるんですか?」
「いや、俺は週二回くらいやな。そっか、じゃあ、またな」
「はい」
かおるは軽く頭を下げた。江良さんが子供たちの元に戻るのを見届けて、児童コーナーから出る。
「江良さんは多分、いいお父さんになるよ」
「だなあ」
「かおるはいいお母さんになるよ」
「は? どういうこと?!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
五日までご感想の返事遅れます。すみません!