すぐ消える件について(仮)
「ったく、なんだよ。あいつ・・・」
かおるが去った公園のベンチ前で、竹市がそう吐き捨てる。そして、ベンチに勢いよく座った。
「すみません。わたしが変な行動に出たから、おかしな流れになってしまって、かおるさんもたぶん、触れられたくなかったでしょうし・・・」
「そうだな。俺たちも、変に正子たちをつけるようなしなきゃよかったんだよな」
「これから、どういたしますか?」
かおるに対しては、竹市は憤りを、正子、トシコ、孝子は申し訳なさを感じていた。
「お嬢様が、申し訳がることないですよ。あいつが、しっかりしないから、悪いんです。自業自得ですよ。本当に情けないやつだ。どうして、自分が大切にしている女を、自分で守ろうとしないんだ!」
竹市は、地団駄を踏む。
「仕方がないよ。かおるは自分の力がどれだけ危険なものなのか、自分でよく理解しているんだ。考えてもみてよ。俺たちは生まれてから異能力の世界で生きているわけだけど、ここ最近の出来事は、俺たちでも、いや、ここ数十年の中でも、すさまじいものだったと思う。その中心に、かおるはいたわけだね。それは、俺たちが思うよりも、激しい経験だよ・・・。まあ、今回は、俺も調子にのってしまった。つい探偵気分になってしまって口が滑らかに進みすぎたよ」
良太郎はそういい。肩を落とした。
「とりあえず。明日、あやまりましょうか」
正子のその言葉に、みながうなずいた。
- - - -
かおるは、公園から、まっすぐ家にむかった。別に急いでいたわけではないが、そのときかおるは、早歩きだった。
自宅の玄関が、視界に入ったとき、誰かが、玄関の前にいるのがわかった。
「?」
その人物は、今にも、ドアに顔があたりそうな位置でいる。もしかしたら、鼻先くらいはついているのかもしれない。
「あの? どちら様ですか?」
かおるは、その人物の後ろまで来たのでいう。近づいてみると、その人物はかおると同じくらいの背があった。
かおるの言葉に相手は反応をしない。
「あの?・・・」
「やっと、みつけた・・・」
「!!」
その瞬間、かおるはその人物から、言い知れぬ圧力を感じる。
すぐに、かおるは、後ろに下がって、自分の周囲にバリアを張る。
(間違いない。異能力関係だ・・・)
相手は、ゆっくりとかおるに向かって振り返り、かおるに向かって不気味な笑顔を見せてきた。そして、相手が、誰なのか、そこでようやくわかった。
「お前は・・・・」
「久しぶりだなあ、二ヶ月ぶりくらいかあ?」
かおるは、あのとき学校で見たのは、やはりそうだったのだと理解する。
「上野・・・・」
「そう! 俺は上野だ!!」
その瞬間に、回りに地響きが響き渡る。
「くっ! 何しに来た!?」
かおるは、全身系を奮い立たせて、完全に臨戦態勢に入る。
「簡単な話だろ?」
上野は、首を左右に振りながら、かおるに近づいてくる。
「お前に復讐するために決まってるじゃねえか」
かおるは、まず、息を整える。
そして、右腕を上野に向かって伸ばした。その瞬間、上野が、かおるに向かって直進してくる。
かおるは右手から、黒炎弾を放つ。それが、上野に命中する。
「うああああああああ」
上野が、その場に倒れて、発狂しながら、その場でもだえ転がる。
そして、その場で上野が泥となっていく。
「やっぱりか・・・」
かおるは、周囲を見渡す。
「誰かいるんだろう? こんなことして、何をしたいんだ? 俺に用があるなら、自分の姿を現してから仕掛けてこい!」
かおるの声に対しての返答はなかった。
かおるは、泥となったそれを触る。
かおるは、上野が目の前に現れた瞬間、黒雷による、魔眼を発動した。それにより、相手が本物の人間でないことがわかったので、相手を焼き尽くした。
(ベルゴ? これがなんなのかわかるか?)
《わかるぞ・・・》
(なんなんだ?)
相手が、誰なのかは、大体の予想がついていた。
《大罪悪魔、傲慢を司るもの、ルシファーの仕業だな・・・》
「はあ、また、大罪かよ。わかってたけどさ」
かおるは大きくため息をつく。
やっと、平穏無事な生活が戻りつつあったというのに、なんてことだ。
かおるは、そこで伸びをした。
はっきり言って状況は最悪かもしれない。
今回は、今までとは違い。明らかにかおるに対しての攻撃だ。つまり、向こうから、かおるに接触してきた。そして、学校で上野がいたということと、家の前で待ち伏せされていたということは、かおるの素性もすべて、相手はわかっているということになるのだろう。
(まずは、俺が、あいつより早く帰ってきたのはよかったか・・・)
かおるはとりあえず、家の中に入ろうと思い。ドアに鍵を入れようとする。そのとき、2人の声が、後ろでする。
かおるは、ゆっくりと、そちらを振り返った。それは、まるで、先ほどの上野のようだった。
「・・・・。えっと・・、今帰りなの?」
「ああ、ちょっとな」
その人物の一人は、ハルカであった。そして、かおるはその横にいる人物に目を向ける。すると、向こうは、かおるに対して微笑んだ。勝ち誇ったように・・・
「え? これだけの登場なの?」
「短い生涯だったな・・・」
「・・・かわいそう」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。