脳が勝手に補正しているものだと思った件について(仮)
「その腕は・・・・・・。」
かおるの顔にかざされた腕には手首から、ひじにかけて謎の紋様が刻まれている。これは昨日、お風呂に入ったときに、こすったりお湯につけたりとしてみたが、それが取れることはなかった。
宮内はそのかざされて腕を、あのくるりとした大きな目で見つめている。見つめてはいるものの、あまり反応がないので、かおるは少し不安になった。
「どう思う?」
もう一度聞いてしまう。
二回目の問いかけで、宮内は気を取り直したのか、あわてて姿勢をただしなおした。
「すみません。あまりの驚きでビックリしてしまいました。魔法系を使う能力者の人はその魔方陣的なもとを絶対に人にはみせません。それが、どのようなものなのか分かってしまうので、例えば、攻撃範囲や、威力、効果時間などですね。あ、すみません。こんなことは言わないでも知っていましたよね。」
「え?ああ、別にいいよ。」
知らんなと思ったが、ここはかおるも合わせる。中二病には共通の設定でもあるのかなと、ここまでの宮内の言動で思った。後で、少し調べておこう。
「なので、僭越ながら、その紋様を見たとき、魔方陣系なのかと思い。まじまじと見てしまいました。ですが、わたしが知っているもののどれとも類似しているものがなかったので、驚きました。すみません。別に魔方陣でなくても、何も言わずに、能力の秘密を暴くようなことはよくないのですが。」
「ああ、いいよ気にしなくて。そもそも、これを見せたのは俺のほうだしね。」
やっぱり、この腕のことは、普通の人でも、中二病的な人にも見せないほうがいいみたいだなと、かおるは思った。
かおるは、そっと、またサポーターを腕にまいた。しかし、先ほどまですべてが隠れていたのに、付け方の問題なのか、ひじのほうがはみ出してしまった。
「でも、先ほどの紋様を見せていただき核心しました。やはり、漆黒の力は世界をほろぞすほどの力があるのだと。」
まあ、本当は持っていないが、ここまできたら仕方がない。たまに、このノリに付き合うくらいならいいか、学校では話しかけてこないように、漆黒に力を隠すために接触は控えてくれとでも言えば、いいだろう。問題は、この先、ハルカにどう説明をするかだな。
かおるがそう考えていると、宮内が聞いて来る。
「この先どうするんですか?」
「え?何が?」
「確かまだ、漆黒の力を制御しきれていないと聞きました。この家でないと不安底となるというようなことを言っていたと思います。」
確かに昨日、似たようなことを言った気がする。
「ああ、そうだね。だから。学校では、悪いけど、俺にはあまり関わらないで欲しいんだ。あまり、能力者とかかわるとこいつが」
そういいかおるは右腕を触る。
「反応してしまって、暴走してしまうからさ。」
なかなかに中二病的にできたとかおるは感じた。もう、かおるはこの中二病なやりとりを楽しんでいた。たまには、こういうのもいいなと感じていた。
「わかりました。ということは、外では、あまり力を使えないようにしているのですか?暴走を防ぐために、封印を施しているとか」
「ああ、えっと」
ここは、そうしたほうがいいか。かおるは思う。力が使えないほうが、外でなにか言われる確率はさらに低くなるはずだ。
「まあ、世界を滅ぼす力だからね。暴走したら終わりだ。」
かおるが、そういい右腕をあげると、目の前でいきなり、右手の先から黒い炎が一瞬燃え上がるのが見えた。かおるは何が起こったのかわからなかった。
すると、宮内が言う。
「わあ! それが漆黒の力のいったんですね。見せてもらうなんて、光栄です。いや」
宮内の雰囲気が変わる。
「貴殿の力、見せていただいた。そのまがまがしきものに感動を覚える。」
(え?)
お上品なのか、中二病なのかどっちかにしたらいいのにとかおるは突っ込みたい気持ちはあったが、それは今大事ではない。
彼女からの反応から、さっき自分の腕から出たものは、自分だけに見えただけではなく。本当に出ていたものみたいだ。そこで、驚きなのが、宮内がそれを受け入れいれているところである。
かおるは頭が少しパニックになっていた。
「それじゃ、わたしの能力を紹介するついでに、僭越ながら、私の能力を見せますね。」
そういうと、宮内は席を立つ。
かおるはまだ、頭がおいついていなかったが、とりあえずないが起きるのか見守る体制にあいる。
「われ、覇竜の意思にしたがい、この身をその人柱とすることを誓う。海、山、空につどいし同胞を媒介とし、その激動の怒りをわれにぶつけたまええええええええ!!!!!!!」
そういうと、宮内の体が閃光に包まれる。その輝きにかおるは目を細める。
少しすると、輝きが収まり、そこには先ほどまでと同様の宮内の姿があった。かおるはさっきの光景がなんだったのか、自分の目にだけ写ったものだったのか、雰囲気にやられて勝手に脳が作り出したものなんではないかとパニックになったいた。
すると宮内が言う。
「すみません。私なんかはこれぐらいやらないと、力を引き出せないのです。」
彼女はそういうと、右手の平を上に見ける。
その後におきる光景に、かおるは理解が追いつかなかった。
その右手には、電気が、いや電流が目に映るほどビリビリと流れていた。
「私は、雷竜の力の一旦を体に宿したものです。」