もう付き合っちゃえよな件について(仮)
「人生はなんだっていつも唐突よ」
ハルカは食事を続ける。
「それで、知ってるの?」
「知らないと思うけど・・・」
かおるは歯切れが悪くなる。
唐突にもほどがある。今までこの手の話に、ハルカとなったことはなかった。しかも、それを彼女から振ってきているわけだから、かおるは内心パニックになっていた。
「っていうか、好きな人とか、いたのか?」
「もちろんよ。私だって、乙女だもの」
「ふーん」
かおるは、意識していないという風に反応する。
「それは、俺も知っている人物なのか?」
「そうね」
即答だった。
「あんたはいないの?」
「え?」
「だから好きな人よ。あんたみたいな人間でも、誰かに想いを寄せることくらいあるのかなって?」
やはり、今日のハルカは変だ。
いつもより饒舌な上に、なんていうか、かわいい? いや、それで言うなら、ハルカのことはいつも綺麗だなくらいには、かおるは思っている。
「まあ、人生においてはいるだろうよ」
かおるは言葉を濁す。
「何よそれ? 変にかっこつけた言い方ね。気持ち悪いわ」
「恋の話なんて気持ち悪いもんだよ」
かおるは、肉じゃがのジャガイモを口に放り込む。
「まあ、残念ながら、お前の恋を俺は応援しないけどな」
「どうしてよ?」
ハルカは目を見開く。
「だって、ハルカがそいつと付き合ったりしたら、こうやってご飯を作ったりしてくれたりしなくなるんだろ?」
「まあ、そうなるかもね」
「それはいやだからな。なんか寂しいし、だから、全力で失敗することを祈らせてもらうわ」
かおるは、ハルカに歯を見せる。
これは、かおるからのハルカに対する攻撃である。
「あんたって、本当に・・・最低最悪ね・・・」
ハルカはため息を漏らしながら、かおるを睨む。
一瞬、彼女の顔が高揚して、口角が上がりかけたように見えたが、それは違ったらしい。
かおるの攻撃は、ハルカには効かなかったということだ。
まあ、仕方がないなと思い。かおるは続ける。
「はは、これからもその最低最悪なやつを頼むよ」
「はああ」
今度は、ハルカが長いため息を漏らす。
「まあいいわ」
言葉はそっけなくとも、かおるには、今のハルカがなんだかうれしそうに見えた。
夕食も終えて、かおるは自室に戻った。
そして、いつものように、ノートパソコンを開き、ネットサーフィンと、ユーチューバーを見るために電源を入れる。最近のかおるの一押しは、モンタイナーというコンビのユーチューバーである。彼らは視聴者から寄せられるチャレンジしてほしいというものを、チャレンジするというスタイルを取っているわけだが、かおるは一度、アイスバーの当たりが、百本出るまでチャレンジというものが、通って、彼らがチャンレンジしたことがあったのである。そのときのうれしさは、それを経験したことがある人にしかわからないであろう。
「うっ!」
まずは彼らの今日の動画を見ようとしたとき、また右腕に激痛が走る。そして、右腕の紋様が一瞬全身に走った。
(いってえ、おいベルゴ、最近、痛みがひどいんだけど、大丈夫なのか?)
《夜が深くなると、漆黒の力はその力を増すことになる。その副作用だろう》
(これって、もし宮内さんと契約したときに、彼女もこの痛いを伴ったりとはしないよな?)
《それは大丈夫だろう。常に漆黒の力をその身に宿すお前とは違い。その女は、一時的に扱うだけだからな。だが、扱う際にどうなるかはわかないな。まあ、あの魔女の末裔が大丈夫だったわけだから、心配はないだろう》
(そうか、ならいいんだけど・・・)
かおるは自身の右腕を見る。
今日はハードな一日だった。
かおるは、パソコンを見るのをやめて、ベッドに仰向けになって寝そべり、天井に視線を向ける。といても、どこかを見ているわけではない。なんとなくぼんやりと眺めるといった感じだ。
学校では、ハルカのことで、高校に入ってから、今までにないくらい、クラスメイトと会話をした。そして殴られた。あのとき、少しだけ、顔を力で守ったので痛みはもうない。その後、なぞの応援してます宣言をされて、家に帰るとすぐに呼びだしがあり。そこで、たくさんの思惑のこもった視線を浴びた。
そして、まるで、主従契約であるものの話をされて、また自宅に帰ると、これまた今までにない会話をハルカとした。
「はあ」
よくわからない一日だ。
かおるは、今考えるべき問題が何なのか頭で整理をする。
「やっぱ契約のことについてだよなあ」
かおるは、契約自体に関しては別にかまわなかった。自分の力が人の役にたつならそれに越したことはないという判断からだ。
なので、問題はそこではなかった。
もし、契約をすることによって、かおるが直接的に宮内家に協力しているということになると、万が一、それを良く思わない異能力者があらわれた場合、または、これからさらに宮内家からの要求が増してきて、それをかおるが断ることにより、彼らの中でかおるをよくは思わない人たちが、かおるに言うことを聞かさせるために何かよからぬことを考えた場合・・・。
かおるは自分が何かされるのはいい。だが、そいいった場合、まず一番に危険にさらされるのは、ハルカだ。
彼はそれが心配でならなかった。
彼女を危険には合わせたくなかった。
でも、ほとんどそれについては、答えが出ていた。
「なんでも、唐突におきるものだね。かおる」
「そうらしいな」
「で? どうなんだい? 気持ち的には?」
「知らん!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。