衝突する件について(仮)
「はあー」
かおるは、岡本に伝わるようにして大きなため息をつく。
「な、なんだよそれは?」
岡本は、戸惑いの声を挙げる。
「別になんでもないよ」
「なんだよ! 絶対になんかあっただろう? ほら、俺達友達だろう? なんでも話せよ」
百歩譲って、かおるのことを考えての発言で、おそらく相談をすればそれなりに乗ってはくれるのだろう。
だが、それを、こんな大衆の前でしかも、あきらかに、かおるのことをあまり良くは思っていない連中の前で言うのはどうかと思う。それに、今の口ぶりでは今すぐに相談しろと言っているように思う。
(はあ、これだから、リア充は・・・・、相手のことを考えているようで、全部自分中心だ・・・)
かおるは、岡本の後ろに控えている人物達を見る。
スクールカースト最上位の人々だ。あまり岡本に強く当たると彼らの怒りを買うこともある。慎重に行動しなければいけない。
「まあ、今度な、今日はとりあえず帰りたい」
かおるは教室を出ようとする。
「なんだ。なんだ? 傷心中ですってか?」
「かわいそうにな。自分の立場をわきまえないからそんな風になるんだよ!」
「帰ってママのお乳でもすっとくんだな!」
そのとき、岡本の取り巻きが、かおるに突っかかってくる。
一人は、茶髪の長髪で背の高い人物、もう一人は背は高くはないが、常に腕をまくって二の腕を出して主張している人物、最後に発言したのは、このクラスで一番声の大きい人物で、確か、サッカー部だった気がする。
そして、その3人に対して共通して、かおるが思ったことは、名前なんだっけ? だった。
「お前らやめろよ! かおるには両親がいないんだ!」
また、余計なことを・・・
「だからじゃねえの、どうせ井上を自分の母親か何かだと勘違いしてたんだろうよ」
声の大きいやつが言う。
「おい! お前ら悪ふざけが過ぎるぞ! そうだとしても、それは仕方がないだろ!」
岡本がその発言に対して怒るが、怒る場所が違う気がするとかおるは思った。
つまり、彼は、発言の内容自体には同意していると取れる。
「昔、井上に振られたからって、今になって、稲垣君に突っかかるなよ・・・」
そのとき、その声がボソッとかおるの耳に届く。それは、彼らとて同じであった。
「おい! 今なんか言ったか!」
その声のするほうに、声の大きいやつが言う。
かおるも、その発言をした人物を見る。
驚きだった。発言をした人物は、最下位の集団に所属している人物で、名前は草丈 重信だ。彼とはかおるも普通に会話をしたことがあったので、覚えていた。
「べ、別に・・・・」
「はあ?!」
大きい声のやつが、草丈の集団に近づいていく。
そして、草丈の胸倉を掴んだ。
「言ってみろよ! もういっぺん!!」
草丈の顔につばが飛ぶ。
「そこまで言うなら、言うよ・・・」
草丈は顔を背けたまま言う。
かおるは、そこで思った。そこで言ったら確実に殴られるに決まっていると・・・
「お前ら、三人とも、井上に告白して撃沈した連中だろ・・・、まあ、お前らみたいな女を物みたいにしtか思ってない連中に、井上が振り向くわけないよね。っていうか、まだ、稲垣君と井上がどうかなんかわからないじゃないか。それを、少し彼らの距離が離れたからって、これ見よがしに突っかかってさ。ダサいんだよ。別に、本当に稲垣君と井上の仲が悪くなったとしてもお前らなんか、そもそも相手にされてないやつには関係のないことだろうがよ・・・・」
これはまた、彼も思い切ったことをしたものだ。ある意味尊敬するとかおるは思った。
そして、案の定、それを言われた人物の表情は怒りで一杯だ。
「言いたいことは言えたか?」
草丈は、そこからスイッチが入る。そむけていた顔を正面に戻し、相手の顔を見る。
「こんなんで収まるかよ! お前ら・・・」
そのとき、相手の拳が精一杯後ろに引かれ、草丈の顔に向かって直進する。
バン!! ガシャン!
「うぐっ!」
草丈が、後ろの机にぶつかる。
だが、拳が彼の顔面に直撃したわけではなかった。彼の顔面に拳が直撃する瞬間、2人の間に別に人物が割り込んできて、その人物の顔面に拳がヒットし、草丈はそのときの衝撃で後ろに飛ばされた。
「いったあ」
「稲垣君!」
「お前!」
間に入った人物は、かおるであった。
彼は、今までの彼に比べれば驚きべきスピードで動いた。だが、皆の目は草丈たちに向いていたので、誰もそれには気が付いてはいなかった。
「じゃましてんじゃねえぞ!」
今度はかおるの胸倉がつかまれる。
そのとき、今度は2人の間に岡本が割り込んできた。
「はいはいはい! それまでだ! 俊介も落ち着けよ!」
岡本が、俊介と呼ばれた人物を必死に抑える。
「はあ?! 落ち着いてられるか! お前らもそうだろ?」
俊介なる人物は暴れながら、後ろにいる2人にそういう。
「ああ、俺達も黙ってられねえ」
「僕もだ!」
2人が、最下位集団に向かってくる。
(おいおい、マジかよ)
かおるは、草丈たちを見る。彼らも3人だ。人数でいえば五分だが、こちらは三人ともおそらく喧嘩などしたことがないだろう。
だが、彼らの目は引くという目ではなかった。
(やる気満々かよ・・・)
ここで、かおるは力を使うわけにはいかない・・・。
「かおるのせいだよねえ」
「え、まあ、そうなのか?」
「ほら、謝って・・・」
「え、あ、ごめんなさい・・・」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。