犬猿の中な件について(仮)
ハルカはその日、昼に帰ってきた。
かおるは特にその日は何も言わなかったし聞かなかった。
日曜日も、ハルカは一日中家にいた。
かおるは何も聞かなかった。
その晩、自室にいると、ベルゴが話し掛けてきた。
《このままでいいのか?》
(何がだよ?)
《あの娘との関係だ》
(いいも何も、俺達は元々なんでもないぞ?)
《そんなことはどうでもいい。大事なのは、お前の気持ちだ》
(俺の気持ちも何でもない)
《ふん。そうか、なら、いいんだがな・・・》
「うるせえ」
日曜日の夜、かおるはまた、腕の激痛により、ほとんど眠ることはできなかった。
- - - - -
「かおるさん! 今日こそわたしと2人でお食事しましょう!」
「あら、正子、残念ながら、わたくしがいるかぎり、それはできませんわよ?」
「おいおい、俺のことも忘れてもらってはこまるぜ?」
今日もまた、かおるの周りには3人の美少女がいる。
「あの・・・、みなさん? 知ってるとは思うけど、今日から、午前授業だから、昼はないんだよ?」
「「「なっ!!」」」
ああ、これ知らなかったやつだ・・・・。
3人は、皆固まってしまった。
「な・・、なら! 一緒にどこかに食べにいきましょう!」
正子が、顔を近づけてくる。
かおるは、変な部分がぶつからないように、顔を引く。
「い、いや、その、多分、家に用意されてると思うんだよね?」
「別にいいわよ」
そのとき、かおるの後ろから、そういわれる。
「え?」
かおるが振り向くと、そこにはハルカがいた。
「今日はちょっと、用事があるから、っていうか、一週間は、お昼は好きにして頂戴」
「え?」
「夜はいつも通り作るけど・・・、わかった?」
「あ、ああ」
ハルカは、そういうと、教室から出て行った。そして、その外で、ある人物が待っているのをかおるは視界で捕らえる。
そして、それを見ていたクラスメイトがこそこそと話始めた。
「ねえ、あれって、あの青沼先輩じゃない?」
「多分そうだよ!」
「あの2人って、随分前からうわさになってたけど、やっとってことなのかな?」
「でも、よかったんじゃない、井上さんて、ほら綺麗だし、わたし達もあの2人なら納得っていうかさ。だって、井上さんのほら、あの幼馴染、って、このクラスか! そいつに彼女構っていたけど、私かわいそうだなって思ってたもん、だって、あいつ、相手の弱みを握って自分の言うことを聞かせてるんでしょう? もしかしたら、井上さんもなのかなって思っていたけど、多分、青沼先輩が助けてくれたんだよ!」
「きゃあ、それって、めちゃくちゃ、ほれる展開じゃない?」
はあ、まったく、よくわからないうわさと共に、よくわからない感じになっているな。かおるが、そんなことを思っていると、かおるだけでなく、もちろん3人にも聞こえていた。
「やっちまうか?」
トシコが言う。
その声色は低いものだ。
「そうですわね。あんな人達、かおるさんの何もしらないのに好き放題言ってますわね」
「わたしも少し腹が立ちました」
かおるは席を立つ。
「別に気にしてないから、いいよ。それよりも今日は、お昼は遠慮してもいいかな?」
「あ、はい」
正子がいい、他の2人も頷く。
かおるは、教室が出る。
(はあ、まだ、二時限目だ。まだ半分か・・・)
かおるは、スマホで時間を見る。休み時間は後3分ほどだ。
とりあえずトイレにでも行こうと、思い、そちらに歩を向ける。
「君は本当に、駄目だね」
そのとき、ある人物とすれ違うときにそういわれる。
「なんだよ?」
かおるは足を止める。
「思ったままを言ったまでだよ?」
「お前に関係ないだろ?」
「まあ、ないけど、一応、知り合いとしては言っておきたかったんだよね」
かおるに絡んできている人物、彼の名前は、田中 孝、ハルカとかおるの中学からの同級生である。
そして、現在のクラスメイトだ。
「何をだよ?」
「気にしすぎなんだよね。君は・・・、いつもそうだ。だから、今まで彼女となんの進展もなかったわけだよ」
「・・・・・・」
「僕は君が今何を悩んでいるのかは知らないけどね。どうせしょうもないことに悩んでいるんだろう?」
「お前に何がわかるっていうんだよ?」
「何もわからないよ? だって、君本人じゃないんだからさ。わかるわけないよね?」
これだから、こいつは嫌いだ。
彼とかおるは犬猿の中というやつだ。それは中学時代会った瞬間にわかった。だけど、なぜか彼はいつも何かあれば、かおるに接触してきていた。中学時代も、温厚なかおるが怒りを覚えたことのそのほとんどに彼が関係している。
「ふう、お前と言い争うつもりはない」
かおるは、自分を落ち着ける。
「なあんだ。面白くないね」
「知るか!」
「でも、今回は僕の勝ちかな?」
「は?」
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
三時間目が始まるチャイムが始まる。
「あ、トイレ・・・」
「ね? 僕の勝ちだ」
田中は、にやにやして、教室の戻っていった。
もうトイレに行くつもりにしていた、かおるは、現在ものすごい尿意である。
その日、三時間目の教師である榎本先生に、かおるは怒れられて、放課後の特別掃除を命じられたのは言うまでもない。
「随分責められてるね」
「あいつは嫌いだ」
「とかいって?」
「嫌いだ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。