ただの高校生だと思う件について(仮)
「能力?」
「そうです。あなたの能力が、あの、かの有名な漆黒の力だということは聞きました。でも、わたし達の能力についてはちゃんと説明をしていなかったなと思いまして、それをちゃんと告白しようと考えていまして。」
「告白ね・・・。」
言い方が紛らわしい。かおるはそう思った。それは告白ではなく解説ではないのか? そう思う。
「能力者が自らの能力について、他人に言うということは大変危険なことです。まあ、あなたほど知名度があるものなら、別ですけど、わたし達みたいな人間は、できるだけ隠しておきたいのです。」
「だから、告白っていったのか。」
「そうです。自らの能力を打ち明けることは、一世一代の告白なのです。」
「そうなんだ。でも三人はお互いの能力については、把握してるってことだよね?」
「はい。わたし達は仲間なので、お互いに知っています。あの二人とは中学からしのぎを削ってきた中なので、当然お互いに弱点なども把握済みです。」
かおるはため息をつく。三人は中学からあのキャラなのか。それとも設定なのか。それにしても、流石に設定がこっているなと思った。
「でも、なんで、それを俺に告白しようと思ったの? それなら、なおさら俺に言うのはよくないんじゃないかな?」
「確かに、あなたが、普通の能力者なら、話しませんし。昨日のような接触の仕方もしません。でも、あなたが持っているのはあの漆黒の力。それなら話は別です。わたし達があなたに敵意がないことを示すためにも、告白しようとおもいました。」
漆黒の力が宿っていると適当に言ったのだが、なんだか、この子たちの間ではものすごい能力になっているようだ。かおるは首をひねる。これは、何を求められているのだろうか? 自分達と同じような中二病を見て、うれしくて、持ち上げてきているのか。それとも、中二病界では、漆黒の力がそういう位置づけなのか。判断に困る。
しかし、どちらにしても、かおるの答えはそんなに変わらない。流石にこれ以上巻き込まれるのは勘弁願いたい。多少、スリルのある人生はいいかの知れないが、これは違う。
でも、かおるは一応、漆黒の力がどんなものなのか聞いてみることにした。
「質問をしてもいいかな?」
「どうぞ。なんなりと。」
「君たちの中で、俺の力、そう漆黒の力はどういうものだと認識しているんだい? 一応それを聞いておこうと思ってさ。これは俺がいつもやっていることだから素直に答えて欲しい。」
かおるは、自らの持てる中二病感を出しながら聞く。
「そうですね。正直、漆黒の力がどのようなものなのか、この目で直接見たことはないので、文献などから得た情報から判断しているのですが、どの文献にもかかれていることがあります。それは・・・・・。」
「それは?」
「世界を滅ぼす力・・・・、だと。」
「ほおおお。」
おっと、予想以上のものが出てきてしまった。いや、もしかしたら、これはよくあるネタなのかもしれない。
よく、世界を滅ぼす力があああ、とか中二病がやっているとかなんとか、何かで見たと思う。それだな。
かおるは、少し動揺したが、気を取り直して、冷静を装いつつ反応する。
「そうか。そう認識しているか。」
「あの・・・。」
「ん?」
そこで、宮内が聞きづらそうにしている。何かいやな予感がしなくもないが、かおるは問う。
「どうしたの?」
「私からも一つ聞いてもいいですか?」
「いいよ。何?」
自分も質問をしたのだ。一つくらい聞いてやらねばならないだろう。
「本当に世界を滅ぼせるんですか?」
「へ?」
かおるから、今日一番の間抜けな声が出る。
世界を滅ぼせるのかと聞かれれば、その答えはノーだ。だって、そもそも漆黒の力など、持ってはいないのだから。自分のことはただのしがない高校生だと思っているのだから。
しかし、そこにはかおるが昨日やられたものがあった。そう。それは、あの輝きの眼差しである。昨日よりも輝いている。
だが、その目とは裏腹に言葉は、かおるを畏怖しているように表現をしていた。
「いや、別に漆黒の力を疑っているわけではないんです。でも、その、本人の口から、聞いてみたくて。」
「いや、そんなものそもそも持ってないから。やめてよ、もお。」
と答えられたらいかほど楽なものか、そんなことは口が裂けてもいえる状況ではない。なにせ、昨日彼女達の流れに乗ってしまっている。今になって思い出し、あの行いがボディーブローのように聞いてきていた。
しかたない。そう思い。かおるは声を棲まして答える。
「宮内さんはさ・・・・。」
最大限、中二っぽくして。
「この、腕を見て・・・。」
ゆっくりとサポーターをめくる。
「どっちだと・・・・。」
脱ぎきり、手を顔にあてて最後!
「思う?」
決まった。かおるはそう思った。そうかおるはまたも暴走した。