おそらく嘘をついている件について(仮)
「ああ、今日も疲れたあ」
かおるは、自室のベッドに飛び込む。そして、枕に顔をうずめる。
最近は、今まで話したことがないクラスメイトや、上級生にも話しかけられる毎日で、傍目から見ればこれまでのかおるの人生で、一番のリア充時期であろう。
だが、本人の気持ちはまったく違う。
一学期の期末テストも先週に終わり、そのテストの結果も中間のそれよりも大分マシであり、補習を免れた。これは、ハルカの力が大きい。彼女は前回の中間で散々であった、かおる対して家での徹底した管理による勉強の補佐をしてくれた。それにより、かおるは平均点を取ることができたのである。今日はその報告と、そのお礼のために、かおるには珍しく彼女の好きなケーキを買ってきていた。
かおるは、ベッドの枕の近くに置いてある時計を見る。
時刻は午後四時半、ハルカが帰ってくるまでにはまだ二時間ほどある。
(ゲームでもするかあ)
かおるは、適当に制服を着くづして、リビングに下りていく。
二時間後・・・・
「おっしゃあああああああああ!」
かおる以外の誰もいない大きなリビングには、彼の敵を倒したときの歓喜の声、または倒されたときの悲鳴の声が、二時間に渡って繰り返されていた。
「はん! ざまあねえぜ、死んどけ!」
かおるは、それを吐き台詞に、今日のゲーム時間を終えるために、画面で終了ボタンを押して、ゲーム機器の電源を切り、それをしまう。
かおるは時計を見る。
(今日は少し遅いな・・・・)
もう夏だ。だから、日が昇る時間は長い。午後七時になろうとしている時刻であっても外は十分に明るかった。それに、ハルカなら多少の暴漢が現れても大丈夫だろう。
だが、かおるは知っている。一般人がどうすることもできない能力者という人達がいることを・・・。
かおるは、リビングのソファーに座り、そこから外を見た。
(大丈夫だよな?)
時計の針は、どんどん過ぎていく。
短針がもうすぐ、8の指しかかろうとするとき、かおるはソファーを立った。そして、急いで玄関に向かい。靴を履く。
(流石に何の連絡もなく。こんなに遅くなるなんて、おかしい)
「!!」
かおるが、玄関のドアに手を掛けたとき、扉が開かれる。
「ハルカ!」
「な、何よ?! 急に・・・、今からどこか出かけるの?」
「い、いや、そうじゃない。その・・・、今日は遅かったな」
ハルカが、玄関の中に入ってきたので、かおるは靴の脱ぎ、一段上に上がる。
「そうね。テスト期間中できなかった稽古を今集中的にしているところだからね。本当はもう少し早く帰れる予定だったんだけど、OBが来ちゃって長引いたのよ」
ハルカはそういいながら、右斜め上を見た。
「そっか」
「すぐに、晩御飯の準備するわね」
「いや、そんなに急がなくてもいいよ。疲れてるだろう?」
その言葉を聞いて、ハルカの顔が深刻なものに変わる。
「な、何よあんた。変なものでも食べたんじゃない?」
かおるは先に、リビングに入る。
「え? どうして?」
ハルカがリビングに入り、キッチンに入っていく。
かおるは、ソファーに腰掛ける。
「いや、って、ご飯炊いておいたの?」
「まあ、暇だったからな」
「そう・・・・」
かおるは、キッチンを見る。するとハルカと目があう。
「な、なんだよ?・・・」
「別にぃ」
ハルカがにやっとして微笑んだ。
「ふふ、まあいいわ。ありがとうね」
「暇だったからな」
かおるはほとんど暗くなっている外を見る。
そして、キッチンで作業をしているハルカをちらりと見た。
(OBが来たから遅くなったか・・・、多分、あれは嘘だな・・・)
「ハルカ!」
「何よ?」
「俺、テスト平均点取れてたよ」
「あんだけやって、平均点なわけ? ほんと、あんたの頭脳は駄目な頭ね」
ハルカは、作業をしながら言う。
そして、ある程度できたのか、いくつか机に並べていく。
「まあ、面目ない」
「ふん、でもまあ、よかったわね」
「ああ、それで、お礼にケーキ買ってきたんだ。だから、ご飯食べたわ食べねえ?」
「え?」
ハルカの動作が一瞬止まる。
「ふん。こんな時間に食べると、体に悪いんだからね。そういうことも考えて欲しいわ」
「これから気をつけるよ」
「まあいいわ。せっかくだから頂くわ。さ、できたわよ」
ハルカが、少し顔を赤くしながら、席に着く。
それを見て、かおるも席に着いた。
「「頂きます!」」
かおるはまず。しょうが焼きから手をつけた。
- - ー -
「うふ」
かおるはゲップを吐く。
もしリビングでこんなことでもしようものなら、ハルカに小言を言われるが、今は幸い自室だ。
かおるは先ほど、ハルカの料理をめずらしくたらふく食べた後、ケーキまでの食べたので、腹がパンパンに張っていた。
「やべ、食べ過ぎたわ」
かおるは、勉強机の椅子に座る。そして、置いてあるパソコンを開いた。
適当にネットサーフィンでもしようとネットを開く。
「いっ!」
そのとき、右腕に激痛が走る。
かおるは右手を見る。その甲には、三つの紋章があった。これは、一つずつがおそらく大罪の力に対応しているんだろうと、かおるは予想していた。
そして、それが、激痛が走るたびに右腕全体に広がる。といっても、それは痛みが引くと元に戻る。
これをベルゴは、普通なら、一般人の中に共存することのない力が存在しているために起こる。一種の暴走だといっていた。
かおるは右手に力を入れて握り締める。
「ふう」
かおるはパソコンに向き直る。
「いいこと、するじゃんかあ、かおる」
「う、うるせえ」
「でもまあ、ご飯くらい炊けよって話だけどね」
「いきなり辛らつ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。