あの言葉は真実であった件について(仮)
ハルカが、かおるに近づいてくる。
それは別にいつもある光景だ。
だが、かおるはハルカが近づいてくることに、なぜか緊張する。
ハルカが、かおるのベッドの脇に用意されているパイプ椅子に座る。
「どうなの?」
「え?」
「だから、体調の話よ。どれくらいの入院期間になるの?」
「あ、ああ。まあ、すぐだよ。2,3日くらいじゃないかな。すぐに退院できると思う」
「そう、一応、あんたの好きなもの買ってきたけど、食べる?」
ハルカは、手に持っている鞄から、いくつかの食べ物を取り出した。
「でも、こういうのは食べたら駄目かな。入院中は・・・・」
ハルカが取り出した食べ物は、彼女がいつも、かおるに対して食べるなと口うすさく言っているものばかりだ。
それを見て、流石のハルカも、自分に気を使っているんだなと、かおるは思った。
「いや、貰うよ。別に少しくらい食べても大丈夫だろう」
かおるは、ハルカから、プリンのカップを一つ取る。
そして、そのカップの蓋を取り、一言・・・。
「スプーンってあるのかな?」
「・・・あるわよ」
ハルカのため息混じりの声だ。
それを聞いて、かおるの緊張は解けた。
(いつもの、ハルカだ・・・)
ハルカは鞄から、一つのキッチンペーパーにくるまれたスプーンを取り出す。それは、かおるがいつも使っているものだ。
「別に、コンビニのでもよかったんだぞ?」
「別に、わざわざ持ってきたわけじゃないわよ。たまたま、出て行くときに目についたから、環境のために持ってきたの!」
「そうか。環境は大事だな」
かおるは、そのスプーンを使い。プリンを一口、口に運ぶ。
「うーん。この口に広がる甘み、まろやかな風味、そして、その中を駆け巡るキャラメル、すばらしい!」
「いつも、思うんだけど。何なの、そのエセ食レポは?」
「エセとかいうなよ! これはこのすばらしいプリンに対しての、俺なりの賛辞なんだ。おいしいの一言では表せないこの・・・」
「はいはい、そうね。すばらしい」
かおるの言葉を遮る。ハルカの冷たい言葉が飛んでくる。
「・・・何よ?」
「いや、別に、なんでもない」
「何でニヤニヤしてるのよ。気持ち悪い」
かおるは、そこで、自分の顔がほころんでいるのに気が付く。
それから、かおるがプリンを食べ終わるまで沈黙が続いた。
「ああ、おいしかった」
ハルカはかおるから、カップを貰い。それをごみ箱に捨てる。
「じゃあ、私はこれで帰るわ」
ハルカが席を立つ。
「そっか。気をつけて帰れよ。夜は何があるかわからないからな」
「大丈夫よ。私、強いもの」
ハルカは拳を前に突き出す動作をする。
「はは、そうだな。でも、気をつけてくれよ。お前に何かあるのはいやだからな」
「・・・わかったわ」
ハルカは扉に向かう。
「あ、そうだ。明日、俺のゲームとかこっちに持ってきてくれないか? 暇でさ」
「持ってくるか! アホ!」
ハルカは扉を勢いよく開けて、閉める。
うん。いつものハルカだ。
かおるは再度確認した。
かおるは窓から月を見る。
あのフードの人物の言うことは気にしないでおこう。
俺は、俺の知っているハルカを信じるだけだ。
- - - - -
かおるの入院は、彼が思った通り二日ほどで退院となった。そして、それは、かおる以外の皆もそうであり、まだ、入院をしている人物はトシコの父親である敏夫だけである。といっても、齋藤先生のご尽力もあり、後、もう少しで自宅療養という形になる。
だが、あのフードの人物が言った通り、かおるには試練が待っていた。
「かおるさん! 一緒にお昼食べましょう!」
「いえ、かおるさんはわたくしと食べるのですわよ!」
「いいや、かおるは俺と食べるんだ。だって嫁だからな!」
「嫁?! どういうことですか? かおるさん!」
「そうだとしても、わたくしはもうかおるさんの物、なので、わたくしはかおるさんと共にあります!」
「ええい、お前ら、いつから、そんな積極的になったんだ!」
「2人がおかしいんです! 最初はわたしだったじゃない! なのに、いつのまにか、2人とも、かおるさんと仲良くなっているし、トシコなんて、名前で呼ばれているなんて・・・」
かおるの周りには、3人の、まあ、格好を覗けば、美少女たちが、言い争っている。
かおるは、彼女たちの言葉をほとんど聞いていない。
(うーん。視線が痛い)
こんな状況だ。もちろん、かおるには奇異の目が向けられている。
まあ、当たり前だ。
学校の中の、変人認定のされている3人が、今まで特に目立ったわけではない人物の周りに集まっているのだから、自分でも、もし当事者でなければ意味がわからず奇異の目で見るだろう。
かおるは、その目が耐えられず。3人が自分に気を向けてない間に、教室から出る。
「はあ」
かおるは、それから、中庭に移動する。
そこは、いつも、かおるがハルカと共に昼食を取っている場所だ。
かおるはベンチに腰掛ける。
(はあ、これから大変になりそうだ。というか、この状況は絶対にハルカに伝わっているはず。なんとか弁明をしないと・・・)
「何が奇異な目で見られて大変だ! だ!」
「え? なんか怒ってる?」
「別に、そういえば、作者は体調を崩してるから、変なところがあっても大目にみてね。だってさ」
「元からあるんだけどな。変なところは」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。