とうとう目の前に現れた件について(仮)
「父上えええええええ」
おそらく最後の言葉を残した敏夫にトシコは顔をうずめる。その隣で、彼女の母親である昭美が、涙を流しながらも、心をしっかりと保った表情をしている。彼女がいれば、今後のトシコは大丈夫であろう。
3人のことを後ろから見ながら、かおるは、油断してしまった自分に対しての怒りで拳を血がにじむまで握っていた。
「なんとも、滑稽だね。そう思うだろう? 暗黒廠雲皓」
そのとき、かおるの横にフードを被ったかおるよりも背が小さな人物が、彼に話しかけて来る。
そしてその人物が最後に放った言葉から、すぐにそのフードの人物が、これまでのことに関して関わっている人物であると直感した。
「おっとっと、そんなに怖い顔しないでよ。私は別に君の敵ではないからさ。まあ、見方ってわけでもないんだけどね」
フードを被っているので顔がよく見えないが、体の線の細さと、声の高さから、かおるは相手が女性であると感じる。
「君は一体何もなんだ?」
かおるは、その人物が横に立つのをまるで気が付かなかった。自分に対しての怒りで周りが、ある意味で見えていなかったとはいえ、現在のかおるが気が付かないだけで、相手がかなりの人物であることを示している。
「うふふ、今回は私の独断行動だから、そこまでは教えられないんだよね。ああ、でもいいことは教えてあげてもいいよ」
「いいこと?」
「井上 ハルカ、知ってるでしょ?」
「・・・・・・・」
かおるは、そこで少なからず動揺する。
「彼女はね。ある秘密があるんだよ。しかも、君がビックリするような秘密がね」
「それは、俺を動揺されるためのブラフか?」
「はは! そんなんじゃないよ。ただ、君のことを思って言ってあげてるだけだよ。でも、動揺してるんだね暗黒廠雲皓。でもね・・・・」
そこで、フードの人物の雰囲気が変わる。
かおるの肌にビリビリと緊張の電気が走る。
「あなたの試練はこれからも大変なものになるよ。君はもうある流れの渦中にいるのだから・・・」
「どういうことだ?」
フードの人物はそういうと、後ろのそっと下がっていく。
「それと、これをあげるよ」
フードの人物がぽいっと、包みをかおるに放る。
「これは?」
「それを、うまく使えば彼を助けられるよ」
「え?」
「じゃあね」
最後に明るい一言を残して、かおるの目の前から一瞬にして消えた。
かおるは、包みを開ける。
そこには白い粉末があるだけだった。
(なんだ? これは?)
《それは、竜の鱗を粉末にしたものだな。傷の治りを早くすることができる》
(これを振り掛ければ助けられるのか?)
《傷の治りをよくするだけで、あれほどのものは駄目だろう。だが、それを上手く操作できれば、もしかすればあるのかもしれん》
つまり、フードの人物の言った通り。上手く使えばということか・・・
かおるは、トシコたちの下に行く。
「かおる・・・・?」
「上手くできるかはわからないけど、もしかすると、助けられるかもしれない。でも、可能性は低いと思っておいてくれ・・・・」
かおるは、渡された粉末を、敏夫の上で振りまく。
「operate(手術)」
粉末が、それぞれに動きを見せて、敏夫の傷口に向かって動きを見せる。
かおるは、それがしっかりと、傷口に作用し、治療するように、集中する。
「くっ! 駄目か・・・・?」
だが、それは簡単なものではなかった・・・・・。
- - - - -
「「「我々は、あなたの元で、生きていきたいと思います!」」」
「いや、勘弁してください」
「いえ! あなたがいたからこそ、我らは助かったようなもの! どうか、彼方様を主様として、我らを手お使いください!」
「いやいや、そんな対したことはしてませんから! 気にしないでください!」
「いいじゃないか、かおる。彼らの好きにさしてあげたら」
良太郎が、にやにやしながら言う。
「いやいや、俺にはそんな手腕ないから、人の上に立つなんてできるわけないから!」
「でも、彼女たちはそれでもいいみたいだよ?」
「ああ、俺もかおるが、俺達のトップでいいと思っている。お前がいなければ俺達はどうなっていたか・・・、母上も同じ意見だ」
トシコが言う。
そして、彼女の隣にいる昭美も頷く。
場所は、氏宮病院。
かおるは最近ここにお世話になりっぱなしな気がしていた。
そこのかおるが入院している病室にて、かおるは忍たちの懇願を受けていた。
はあ、どうしてこうなったのか・・・・。
かおるは、敏夫の治療を見事に成功させた。おそらく、それだけだったなら、彼が篠原家の忍のトップに祭り上げられるようなことはなかっただろう。
篠原家の丸薬の副作用は、その使用頻度が上がるたびに変化していく。
そして、かおると戦っていた。忍の中には、丸薬を何回も使用している人達が多かった。そして、彼らは命の危機を迎えていた。
それを、かおるは、敏夫を治療した経験と、自らの丸薬の副作用を除去したときの力の操作の経験から、彼らの中にある丸薬の成分を操作して、彼らの一命を助けたのだった。
それから、毎日、かおるは彼らから、自らの主様になってくれとの懇願を受けていたのだ。
「でも篠原家には、当主がいるじゃないか?」
「それなら、構わないよ。当主の俺も君を主として、認めたい」
そのとき、かおるの病室に敏夫が入ってくる。
「いったい誰なんだろうね?」
「フードやろうか?」
「うん」
「まあ、重要人物ではあるよな」
「かおるは本当にいろんな世界に巻き込まれるね」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。